ぷにぷに、もちもちとした独特の感触を楽しむ「スクイーズ」が、子どもたちを中心に再び大きなブームとなっています。
食べ物や動物をモチーフにしたかわいらしいデザインも多く、手で握ったり伸ばしたりして楽しめる手軽さも人気の理由です。
2026年8月には日本でも、スクイーズが世界各地でブームになっている一方、発がん性が指摘される物質が検出された製品や、加熱したスクイーズが破裂して子どもがやけどを負う事故などが報じられました。
「ただ握って遊ぶだけのおもちゃなのに、そんなに危険なの?」
と驚く人もいるでしょう。
しかし問題を詳しく見ていくと、スクイーズ自体の危険性だけではなく、TikTokなどSNSによる流行の過熱、安全基準を満たさない商品や模倣品の流通という、現代ならではの事情が見えてきます。
今回は、スクイーズとはどのようなおもちゃなのか、なぜこれほど人気になったのか、そして現在指摘されている事故や有害物質の問題について整理してみます。
スクイーズとは?

スクイーズは、英語の「squeeze(握る・押しつぶす)」という言葉の通り、手で握ったり押したりして感触を楽しむおもちゃです。
一口にスクイーズといっても、スポンジのようにゆっくり元の形に戻る低反発タイプから、内部にジェルや液体などが入ったタイプまでさまざまです。
最近では、
- パンやケーキなどの食べ物
- 動物
- キャラクター
- カラフルな立方体
- 餃子や小籠包のような食べ物
など、見た目にも面白い商品が増えています。
特に海外では「Squeezy Dumplings」のような食べ物型の商品や、ジェル入りの感覚玩具が子どもたちの間で人気となっています。
単に遊ぶだけでなく、机の上に置いたり、コレクションしたり、手持ち無沙汰な時に握ったりできるところも魅力でしょう。
なぜスクイーズがここまで人気になったのか?
1.「触って気持ちいい」という単純な魅力
スクイーズ最大の特徴は、何といっても感触です。
ギュッと握る、伸ばす、押す。そして元の形に戻っていく。
複雑なルールも操作も必要ありません。
スマートフォンやゲームのようなデジタルな娯楽が増えている一方で、手の感触だけで楽しめる非常にシンプルなおもちゃであることが、逆に新鮮に感じられている面もありそうです。
現在流行している商品も「sensory toy(感覚玩具)」として扱われることがあり、子どもだけでなく大人が手で触って楽しむ商品としても販売されています。
2.TikTokやYouTubeとの相性が非常にいい
スクイーズの流行を考える上で、SNSの存在は無視できません。
スクイーズは動画にすると、
「どこまで伸びるのか」
「握ったらどんな形になるのか」
「中には何が入っているのか」
といった変化が短時間で分かります。
つまり、TikTokやYouTube Shortsなどの短い動画と非常に相性がいい商品なのです。
さらに海外では、中身の色が分からない状態で販売され、開封して珍しい色やラメ入りの商品を探すタイプも人気になっています。
「開封動画」と「スクイーズ動画」が組み合わさることで、一つの商品から何本もの動画を作れることも、SNSで急速に広がった理由の一つと考えられます。
3.「見るだけでも気持ちいい」動画になる
自分でスクイーズを持っていなくても、
「押しつぶされる様子」
「ゆっくり形が戻る様子」
「ジェルが動く様子」
を見るだけでも楽しめます。
いわゆるASMR動画に近い感覚です。
商品を購入した人だけではなく、動画を見る人まで巻き込めるところが、従来のおもちゃとの大きな違いでしょう。
一方で問題になった「電子レンジで温める」SNS動画
ところが、SNSとの相性の良さが思わぬ事故にもつながっています。
米国消費者製品安全委員会(CPSC)は2026年8月、スクイーズについて異例ともいえる注意喚起を行いました。
問題となっているのが、スクイーズを電子レンジで加熱するSNS上の流行です。
動画ではスクイーズを温め、
「柔らかくする」
「膨らませる」
「質感を変える」
といった遊び方が紹介されることがあります。
しかしCPSCは、このような行為を「決してまねしてはいけない」と警告しています。
ジェルなどが入ったスクイーズを電子レンジで加熱すると、内部が非常に高温になる可能性があります。
さらに外側が破裂すれば、高温になった粘着性のある中身が皮膚に付着します。
普通のお湯とは違い、ジェルが皮膚に貼り付けば熱を伝え続けるため、重いやけどにつながる危険があります。
CPSCは電子レンジだけでなく、
直射日光の当たる場所、夏の車内、暖房器具の近くなどに放置することも避けるよう注意しています。
実際に子どもが大やけどする事故も
これは単なる「可能性」の話ではありません。
2026年1月、米国では9歳の男児がジェル入りのスクイーズを電子レンジで加熱したところ、取り出す際に破裂。
熱いジェルが顔や手にかかり、顔や手に第2度熱傷を負う事故が報じられました。
治療した医療機関では、同様のスクイーズによる事故で治療を受けた子どもが複数いたとされています。
メーカー側も本来の使用方法ではないとして加熱を禁止しており、SNS企業と協力して危険な使用方法を紹介する動画への対応を進めていると報じられています。
ここで考えさせられるのは、
「商品が危険だった」という問題と、「SNSで本来想定されていない使い方が広がった」という問題は別に考える必要がある
ということです。
普通に握って遊ぶ商品を電子レンジに入れるという発想は、メーカーが想定する通常の遊び方ではありません。
ところがSNSでは、危険な行為ほど映像として目立ちやすくなります。
「やってみたらどうなる?」
という好奇心が再生数につながり、それを見た別の子どもがまねする。
スクイーズをめぐる事故は、現代のSNS社会が抱える問題も象徴しているように感じます。
「発がん性物質が検出された」という報道は本当?
こちらも事実です。
ただし、非常に大切な点があります。
すべてのスクイーズから発がん性物質が検出されたわけではありません。
2026年6月、英国の製品安全当局は「Squeezy Dumplings」として販売されていた特定の商品についてリコールを発表しました。
商品の外側から、ベンゼンが20mg/kg検出されたためです。
英国当局はこの商品を「重大な化学的リスク」があると判断し、玩具安全規則を満たしていないとして使用を中止するよう求めています。
ベンゼンは、人への発がん性が認められている物質です。
英国政府の化学物質情報でも、国際がん研究機関(IARC)がベンゼンを「ヒトに対して発がん性がある」グループ1に分類していることや、過去の長期的な職業曝露と白血病などとの関連が説明されています。
ただし、
「スクイーズを一度触ったらがんになる」
という意味ではありません。
化学物質による健康影響は、量、接触方法、接触時間などによって大きく異なります。
今回問題となったのは、安全基準を超えるベンゼンが確認された特定の商品です。
したがって、
「スクイーズ=発がん性がある」
とひとまとめにしてしまうのも正確ではありません。
むしろ注意したいのは「模倣品・粗悪品」
現在、各国当局が特に警戒しているのが、人気商品に便乗した模倣品や、安全基準を満たしていない商品です。
米CPSCによると、2026年8月までに米国の港で安全基準に違反するスクイーズ玩具の55件の輸入貨物、計35万5683個が確認され、米税関・国境警備局と協力して国内への流入を阻止したとしています。
英国でも、グロスターシャーの取引基準当局が2026年に行った調査で、人気商品のコピー品などを含む1968個の安全性に問題のあるスクイーズ玩具を押収しています。
問題となった商品には、
- 強い化学薬品のような臭いがする
- メーカー情報がない
- 安全表示が不足している
- 簡単に破れる
- 中身が漏れる
- 安全基準を示す表示がない
といった特徴が確認されています。
人気商品がSNSで爆発的に広がると、正規メーカーだけでは供給が追いつかなくなります。
すると、似た商品が大量に作られ、オンライン通販やSNSなどを通じて世界中で販売されます。
「SNSで流行→需要急増→類似品が大量流通→安全管理が追いつかない」
という構図も、今回の問題の背景にありそうです。
日本でスクイーズを購入するときに注意したいこと
日本でも玩具の安全性について制度が強化されています。
2025年12月25日から、3歳未満向けの「乳幼児用玩具」について、新しい安全規制が開始されました。
対象となる玩具は技術基準への適合が求められ、2025年12月25日以降に製造・輸入された対象製品には「子供PSCマーク」など必要な表示が求められています。
もちろん、すべてのスクイーズがこの制度の対象になるわけではありません。
それでも購入する際には、
- メーカー・輸入元が明記されているか
- 対象年齢が書かれているか
- 使用上の注意があるか
- 極端に安すぎないか
- 強烈な薬品臭がしないか
- 表面が破れたり中身が漏れたりしていないか
などを確認した方が安心でしょう。
特に小さな子どもの場合、スクイーズが破れた際に中身を口に入れる危険もあります。
米CPSCは、一部のスクイーズに含まれるウォータービーズなどを飲み込んだ場合、体内で膨張して腸閉塞などにつながる可能性があるとして注意を呼びかけています。
そして何より、
電子レンジで温めない。
熱い車内や直射日光の下に放置しない。
ここは子どもにも伝えておきたいポイントです。
スクイーズ人気が示した「SNS時代のおもちゃ」の難しさ
スクイーズは、本来とてもシンプルなおもちゃです。
握る。
伸ばす。
感触を楽しむ。
それだけでも十分楽しめます。
ところがSNS時代になると、おもちゃには「動画の材料」という新しい役割が加わりました。
普通に遊ぶだけでは動画として面白くない。
そこで、
「温めてみた」
「凍らせてみた」
「限界まで伸ばしてみた」
「切ったら中身はどうなっている?」
と、どんどん刺激の強い動画が作られていきます。
再生数を競うSNSの仕組みと、好奇心旺盛な子どもたちとの組み合わせには、やはり注意が必要でしょう。
スクイーズ問題で考えるべきなのは、
「危険なおもちゃを禁止すれば終わり」という単純な話ではない
のかもしれません。
正しい商品を選ぶこと。
メーカーが想定した方法で遊ぶこと。
そして、SNSで流れてきた動画を「みんながやっているから安全」と考えないこと。
この三つがこれまで以上に重要になっています。
まとめ|スクイーズは危険?大切なのは「商品」と「遊び方」を分けて考えること
スクイーズは、もちもち・ぷにぷにした独特の感触とかわいらしいデザイン、そしてSNS映えする特徴から、世界各地で注目されるおもちゃになっています。
一方で人気の急拡大に伴い、新たな問題も表面化しました。
SNSで流行した電子レンジでの加熱によってスクイーズが破裂し、子どもが重いやけどを負う事故が実際に発生しています。米CPSCも2026年8月、決して加熱しないよう正式に警告しました。
また英国では、一部の商品から基準を超えるベンゼンが検出され、リコールされています。
ただし、ここは冷静に考える必要があります。
「すべてのスクイーズに発がん性物質が入っている」「スクイーズは危険なおもちゃだ」ということではありません。
問題となっているのは、安全基準を満たさない一部商品や模倣品、そして電子レンジで温めるなど本来とは異なる危険な遊び方です。
個人的には今回のニュースで最も気になったのは、おもちゃそのものよりもSNSによって「普通では考えない使い方」があっという間に子どもたちの間へ広がってしまうことです。
昔であれば友達数人の間で終わっていた危険な遊びが、現在では一本の動画から世界中へ広がります。
スクイーズのブームは楽しいものですが、その人気が大きくなればなるほど、大人側も「何が流行しているのか」「どんな遊び方が広がっているのか」を少し気にしておく必要がありそうです。
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