愛媛県で、80代女性が警察官や検察官を名乗る人物らに約12億円をだまし取られる特殊詐欺事件が明らかになりました。今回の事件で特に衝撃的なのは、被害の途中で金融機関が異変に気づき、県警へ通報していたにもかかわらず、最終的に被害を防げなかったことです。
事件は、2025年10月末ごろの「保険証が不正利用されている」という電話から始まり、SNSでのやり取りや資産調査の名目を通じて、2026年2月まで長期間続いていました。この記事では、やり取りが途絶えたことで女性が警察に相談し、事件が発覚するまでの流れを時系列で整理しながら、“ニセ警察詐欺”の巧妙な手口をわかりやすく見ていきます。
はじめに
愛媛県で起きた今回の特殊詐欺事件は、被害額の大きさだけでなく、その進み方にも大きな衝撃があります。警察官や検察官を名乗る人物らが、長い時間をかけて被害者を信用させ、結果として約12億円もの送金につながったとされています。
しかも今回は、途中で金融機関が不審な動きに気づき、県警へ通報していました。それでも最終的な被害を止められなかったという事実は、今の特殊詐欺がどれほど巧妙になっているかを物語っています。単なる「振り込め詐欺」ではなく、“捜査への協力”だと思わせながら被害者自身に資金を動かさせる、非常に悪質な手口だったといえそうです。
1.最初の接触は「保険証が不正利用されている」という電話だった
事件の始まりは、2025年10月末ごろでした。女性の自宅固定電話に、薬局店員を名乗る女から「あなたの保険証が不正に使われている」「警察につなぎます」などと電話が入ったとされています。
続いて、石川県警の警察官を名乗る男が電話に出て、「身の潔白を証明するために協力する」などと説明したと報じられています。突然、自分の個人情報が犯罪に使われているかもしれないと言われれば、不安になるのは当然です。そのうえで警察につながれれば、「本当の事件なのかもしれない」と思ってしまいやすくなります。
今回の事件の怖さは、最初からお金の話を持ち出したわけではないところにあります。まずは保険証の不正利用という身近な不安をぶつけ、そのあとで警察を名乗って信用させる。入口の段階で、すでに心理的な囲い込みが始まっていたとみられます。
2.電話からSNSへ移り、少しずつ「捜査」のように見せていった
その後、女性は検察官を名乗る男らとSNSでやり取りするようになったとされています。そこで相手は「あなたの口座で資金洗浄が行われている」「財産を調査する必要があるので、おカネを全て送金してください」「絶対誰にも話さないでください」などと伝えていたといいます。
ここで重要なのは、相手が単に「送金してほしい」と頼んでいるのではなく、「捜査の一環」「あなたの潔白を証明するため」といった名目を与えている点です。被害者からすると、自分がだまされているのではなく、むしろ自分を守るために必要な手続きをしているように感じられてしまいます。
電話からSNSへ移ることで、やり取りはより日常的で継続的なものになります。複数の人物が登場すれば、「これは本当に組織だった捜査なのではないか」と思い込まされやすくなります。今回の事件は、“本物らしさ”を丁寧に作り込んでいく詐欺だったといえます。
3.2025年12月、金融機関が異変に気づいて県警へ通報していた
今回の事件で特に重く受け止めたいのが、女性が振り込みを行う過程で、金融機関が詐欺被害の可能性を疑い、県警へ通報していたという点です。報道では、その後、警察が女性に聞き取り調査を行ったものの、その時点では詐欺とは判断できなかったとされています。
それでも結果として、被害は防げませんでした。この事実はとても重く、今の特殊詐欺が単純な「怪しい話」ではなく、外から止めに入ってもなお被害者の認識を変えにくいレベルまで巧妙化していることを示しています。
しかも犯人グループは、女性が金融機関の窓口で怪しまれないよう、あらかじめウソの「土地建物売買契約書」を渡していたとされています。表向きの理由まで用意されていたことからも、かなり計画的な犯行だったことがうかがえます。
4.2025年12月から2026年2月にかけて、8回で約12億円を送金
女性は2025年12月から2026年2月にかけて、計8回、県内の金融機関の窓口から指定された口座に約12億円を振り込み、だまし取られたとされています。被害額は愛媛県内では過去最悪で、特殊詐欺としても全国で過去最高規模と報じられました。
さらに、これとは別に、女性は2025年末にかけて約5000万円分の暗号資産も同様の手口で失っているとみられています。つまり犯人側は、銀行振込だけでなく、暗号資産の利用にも被害者を巻き込んでいた可能性があります。
特殊詐欺では、相手に不安を与えて現金を振り込ませるだけでも大きな被害になりますが、暗号資産が絡むと、さらに資金の流れが見えにくくなります。一般の人にとって仕組みがわかりにくいこと自体が、犯人側にとっては都合のよい道具になっていたのかもしれません。
5.大阪の70代女性も別の被害者で、12億円の資金洗浄に利用された疑い
今回の事件では、送金先の構図にも大きな特徴があります。報道によると、愛媛の80代女性が振り込んだ口座は、別の特殊詐欺で被害に遭っていた大阪府の70代女性のものだったとされています。
この70代女性自身も、石川県警の警察官を名乗る人物らにだまされ、約3億円を失った被害者でした。そのうえで、愛媛の80代女性から入金された約12億円を、指示に従って暗号資産に変換し、コインアドレスへ何度も送金していたと報じられています。
つまり今回の事件は、1人の被害者からだまし取ったお金を、別の被害者を通じて暗号資産に換えさせるという、非常に悪質で複雑な構図を持っていました。被害者がさらに別の事件の資金洗浄に利用されていた可能性があるという点でも、異例のケースといえます。
6.やり取りが途絶え、2026年2月に女性が相談して事件が発覚
事件が発覚したきっかけは、男たちとのやり取りが途絶えたことでした。女性はそれを不審に思い、警察に相談したことで事件が明らかになったとされています。
この点からも、女性が被害の途中では「だまされた」とは思っていなかった可能性がうかがえます。最後まで相手を信じていたからこそ、連絡が途絶えたことではじめて違和感が強くなり、相談につながったのかもしれません。
時系列で見ると、今回の事件は一度の電話で終わるタイプではなく、2025年10月末ごろから2026年2月まで、数か月にわたって信じ込ませ続けた詐欺だったことがわかります。長期間にわたる接触が、被害をここまで大きくした大きな要因だったのでしょう。
7.今回の事件が示した“ニセ警察詐欺”の怖さ
今回の事件の本質は、犯人が「警察」「検察」「資産調査」といった言葉を使って、被害者に送金を“協力行為”だと思わせていた点にあります。お金を取られるというより、自分の潔白を証明するための行動だと受け止めさせることで、被害者の警戒心を外していったのです。
しかも、金融機関が異変に気づき、警察も途中で接触していたのに、それでも止められなかった。これは被害者を責める話ではなく、誰でも状況によっては判断を狂わされるおそれがあることを示しています。詐欺の手口は、こちらが思っている以上に現実の制度や心理を研究して作られています。
警察は、本物の警察官がSNSで連絡したり、捜査を理由に送金を求めたりすることはないとして注意を呼びかけています。相手が警察や検察を名乗っていても、「口座が犯罪に使われている」「資産確認のためにお金を動かして」などと言われた時点で、まず詐欺を疑うことが大切です。
まとめ
今回の12億円詐欺事件を時系列で整理すると、2025年10月末ごろに「保険証の不正利用」を口実に電話で接触され、警察を名乗る男らを信用。SNSでやり取りを続ける中で「財産を調査する必要がある」などと伝えられ、2025年12月から2026年2月にかけて8回、約12億円を送金させられたという流れになります。
しかも途中では金融機関から県警へ通報があり、警察も聞き取りを行っていました。それでも防げなかったことは、今の特殊詐欺がいかに巧妙で、被害者の判断を長期間支配してしまうかを示しています。
さらに今回は、別の70代女性もまた被害者でありながら、愛媛の女性から入金された約12億円を暗号資産に換えて送金させられていた疑いがあるという、極めて複雑で悪質な構図も明らかになりました。
警察や検察を名乗る相手から、お金の移動を求められた場合、それは本物の捜査ではありません。不安をあおる電話やSNSが来たときこそ、その場で応じず、家族や最寄りの警察署、金融機関に自分から別ルートで確認することが大切です。
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