“原点”をリスペクトしつつ生まれた、新たなオリジナル作品『シン・仮面ライダー』。ですが、その評価は、分かれるところです。
脚本・監督を庵野秀明が務め、本郷猛の仮面ライダーを池松壮亮、緑川ルリ子を浜辺美波、⼀⽂字隼⼈の仮面ライダー第2号を柄本佑が演じています。あらすじ・キャスト・評価などの紹介と考察をしています。
仮面ライダー生誕50周年企画作品 2023年3月劇場公開
あらすじ
“人類を幸福に導く”と謳う組織〈SHOCKER〉によってバッタオーグに改造された本郷猛(池松壮亮)は、緑川弘博士(塚本晋也)とその娘、緑川ルリ子(浜辺美波)とともに組織を裏切り、逃亡する。本郷は追手と戦い無残に殺してしまう。仮面を被ると”プラーナ”の力で殺戮に無感覚になってしまうのだ。恐ろしい力を得たことに苦悩する本郷。
しかし、緑川博士が殺され、死に際に娘ルリ子を託されたことで、本郷は「仮面ライダー」を名乗り、ルリ子と共にSHOKERと戦うことを決意する。
のちに仮面ライダー2号の一文字隼人(柄本佑)と共に戦うことになる。
監督・キャスト
監督・脚本
庵野秀明・・・アニメ「エヴァンゲリヲン」で一世を風靡したアニメ監督。ヱヴァンゲリヲン新劇場版で日本アカデミー賞最優秀アニーメーション作品賞。大ヒットした「シン・ゴジラ」は映画監督として、日本アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞している。
キャスト
本郷猛/仮面ライダー・第1バッタオーグ:池松壮亮
緑川ルリ子:浜辺美波
一文字隼人/仮面ライダー第2号・第2バッタオーグ:柄本佑
ヒロミ/ハチオーグ:西野七瀬
カマキリ・カメレオン(K.K)オーグ:本郷奏多
緑川 弘博士:塚本晋也
コウモリオーグ:手塚とおる
SHOCKERの創設者:松尾スズキ
本郷猛の父:仲村トオル
犯人:安田顕
緑川イチローの母:市川実日子
ケイ:松坂桃李(声)
クモオーグ:大森南朋(声)
政府の男:竹野内豊
情報機関の男:斎藤工
緑川イチロー/仮面ライダー第0号・チョウオーグ:森山未來
サソリオーグ:長澤まさみ
背広の男:上杉柊平
原作・テレビシリーズ
原作は、言わずと知れた石ノ森章太郎のマンガ「仮面ライダー」です。テレビシリーズは1971年から始まり、途中中断を挟みながら令和の現在まで続いています。主な仮面ライダーを挙げてみました。
初期の仮面ライダー
- 仮面ライダー1号(1971年):本郷猛がショッカーに改造され、仮面ライダーとして戦う物語。
- 仮面ライダー2号(1972年):一文字隼人が本郷猛の後を継いでショッカーと戦う。
- 仮面ライダーV3(1973年):風見志郎がV3としてショッカーと戦う。
昭和ライダー
- 仮面ライダーBLACK(1987年):南光太郎がゴルゴムと戦う。
- 仮面ライダーBLACK RX(1988年):BLACKの続編で、光太郎が新たな力を得て戦う。
平成ライダー
- 仮面ライダークウガ(2000年):五代雄介が古代の力を使って未確認生命体と戦う。
- 仮面ライダーアギト(2001年):複数のライダーが登場し、アギトの力を巡る物語。
- 仮面ライダーディケイド(2009年):過去のライダー世界を巡る冒険。
令和ライダー
- 仮面ライダーゼロワン(2019年):AIと人間の共存をテーマにした物語。
- 仮面ライダーセイバー(2020年):剣と本をテーマにしたファンタジー要素の強い作品。
- 仮面ライダーガウ(2024年):お菓子を食べて変身し、人々の幸せを守るために戦う物語。
仮面ライダー主題歌
本郷猛・仮面ライダー1号を演じた池松壮亮、本人が歌っています。池松さんはオーディションで本郷猛役を射止めたそう。歌声は力強く、本作に対する意気込みを感じます。
「レッツゴー!! ライダーキック」 池松壮亮
テレビシリーズでは、主演の本郷猛役藤岡弘さんが主題歌を歌っています。今作も主演の池松壮亮さんの歌唱ですから、オマージュということですね。
「ロンリー仮面ライダー」子門真人
仮面ライダーは独りぼっちで戦う孤高のヒーローです。さすが力強い声です!!
ウルトラマンや戦隊ヒーローに比べ哀愁が漂いますね。
映画『シン・仮面ライダー』の評価
評価の分かれ目は、やはり「仮面ライダー」に親しんだかどうかですね。今作は、仮面ライダー1と2が主役で、本編には当時のオマージュが満載です。R12指定で大人向けということは、当時夢中になっていた世代がターゲットなのでしょう。懐かしい特撮ヒーロー物として楽しめる方にはツボだと思います。
高い評価
- 1人の人間が変身した等身大のヒーローの哀愁や孤独が表現されており、本郷猛役の池松壮亮が口下手な主人公の雰囲気をよく演じていた。
- 一文字隼人役の柄本佑の明るいキャラがよかった。浜辺美波、西野七瀬、長澤まさみも美しくはまり役だった。
- 庵野監督の仮面ライダー愛が満載!!マニアにはたまらない映画。
- とにかくライダーがかっこいい!!ライダーキックが多くファンもうれしい。実写とCGがマッチしていた。
- 出演者が豪華。エンドロールで見るまで、出ていたことに気づかないほど人気俳優が多く出演していた。
低い評価
- テレビシリーズ当時の雰囲気を狙ってなのか、戦闘シーンがチープすぎる。
- 庵野監督が作りたいものを作っただけという印象。
- 仮面ライダーファンだけしか楽しめない。
考察
『シン・仮面ライダー』は、一言でいうと「仮面ライダーファンが、仮面ライダーファンのために作った映画」です。なので、仮面ライダーにハマらなかった私は「面白くない」という感想になりました。
このブログ記事を書くにあたって感想を調べてみました。仮面ライダーファンの熱弁が見られたので、コアなファンにはたまらない映画のようです。テレビシリーズの「仮面ライダー」は50年の長きにわたり、中断を挟みながらも続いてきたシリーズですから、その時代その時代でファンを獲得しているでしょう。その中でも、今作は仮面ライダー創世記の1号、2号の物語です。
「ウルトラマン」のテレビ放映が1966年から、「仮面ライダー」は1971年、等身大のヒーローとして誕生しました。当時の特撮映像でも子供たちは大変盛り上がったものです。バイクに乗るという設定も若者に向けたものだそうです。けれど、今「仮面ライダー」を作るならば、当時の特撮のオマージュよりも現在の技術でできるアクションを観たいと私は思いました。
冒頭での生々しい殺戮シーンで、大人向けにR12指定にしたのは、子供向けのテレビシリーズよりリアルな表現を求めたためだろうと感じたのに、格闘シーンの随所で挟まれる「ライダーキック」に拍子抜け。
工場での1号と2号のバトルシーンは、まるでミニチュアが戦っているように見えるし、空高くジャンプしての空中戦は、「ドラゴンボール」のよう。孫悟空とベジータの空中戦では、アクションは寄りの映像を挟んでいたけど、今作では空中でぶつかって落ちるのを遠目で映すだけだから、迫力に欠ける。テレビシリーズでワチャワチャ出てきたショッカーもいないので、怪人(オーグ)のラスボス感がない。
”プラーナ”が物語の核なのだろうが、『シン・ゴジラ』では、折り紙のように畳んで出てくるグラフを見ながら「なるほど」と各々がつぶやくシーンに、「なにが?」と思いながらも力技で納得させられたけど、今作では早口で”プラーナ”について延々語られても理解できないし納得もできなかった。
仮面ライダー役が池松壮亮と聞いて違和感があったが、やはり違和感はぬぐえなかった。池松壮亮は好きな俳優だし、実力もあると思う。例えば菅田将暉はカメレオン俳優といわれるように映画によって雰囲気が変わるけれど、池松壮亮は、いつも池松壮亮でありながら、いつの間にかドラマに溶け込んでいる。今作では、仮面ライダーの悲哀をよく表現していたが、いかんせんスーツが似合うとは言えない。
仮面ライダーはスーツを着てヘルメットを被っているだけで、他のオーグのように改造人間には見えなかった。なので、「変身!!」して圧倒的な力で敵を倒す方が分かりやすくてよかったと思う。
まあ、いろいろ愚痴ったが昭和仮面ライダーが好きな方はどうぞ、楽しめますよ。という感想です。
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