「才能を殺さないために。」この言葉をミッションに掲げる音楽マネジメント/レーベル「BMSG」が、ついにSNS上の誹謗中傷に対して法的措置に踏み切りました。
BE:FIRSTやMAZZELなど注目アーティストが所属する同社が公開した声明には、アーティストを守るための強い覚悟と、これまで積み重ねてきた取り組みが凝縮されています。
今回は、その詳細と背景を筆者の視点から読み解きます。
1. BMSGが発表した法的措置の概要
2025年7月15日、BMSGは公式サイトにて「SNS上の権利侵害投稿に対する法的措置の実施について」と題する文書を掲載しました。
内容は、SNS上で確認された複数の悪質な投稿に対し、裁判所へ発信者情報開示の手続きを行い、すべての投稿に対して開示命令が下されたというもの。
この開示命令とは、匿名のアカウントであっても、投稿者の情報(氏名、住所、メールアドレスなど)をプラットフォーム運営元に開示させる法的な措置であり、言葉の暴力に「責任を持て」と突きつけるものです。
「BMSG(ビーエムエスジー)」とは、アーティスト・プロデューサーである SKY-HI(スカイハイ) 氏が立ち上げた、音楽マネジメント/レーベル/プロデュース事業を手がける日本の総合エンターテインメント企業です。
■ BMSGの基本情報(2025年時点)
項目 | 内容 |
---|---|
会社名 | BMSG Inc. |
設立者・CEO | SKY-HI(本名:日高光啓) |
設立年 | 2020年 |
本社所在地 | 東京都 |
主な事業 | アーティストマネジメント、音楽制作・プロデュース、育成、イベント企画など |
所属アーティスト | BE:FIRST、MAZZEL、Aile The Shota、Novel Core、edhiii boi など |
キャッチコピー | 「才能を殺さないために。」 |
■ 設立の経緯と理念
SKY-HIが自身の経験をもとに、「才能が潰されてしまうこの業界の構造を変えたい」という思いからBMSGを立ち上げました。特に若手アーティストやダンサー、トレーニー(練習生)を”搾取せず、育て、守る“ことを理念に掲げています。
■ 主な特徴
- BE:FIRST誕生の「THE FIRST」オーディションを主催し、大きな注目を集めた(2021年放送)。
- アーティストの「セルフプロデュース力」や「多様な才能」を重視。
- 権利や報酬の透明性を重視し、従来の芸能事務所の慣習を見直す姿勢が評価されている。
- 「BMSGフェス」などのライブイベントも主催し、ファンとの距離感も大切にしている。
■ 所属アーティスト例(2025年現在)
- BE:FIRST(ビーファースト):男性7人組ダンス&ボーカルグループ
- MAZZEL(マーゼル):BMSG×ユニバーサルの共同プロジェクトで生まれた8人組グループ
- Novel Core:HIPHOP出身のラッパー&シンガー
- Aile The Shota:ソロシンガーとして独自の世界観を展開
- REIKO/edhiii boi/RAN/SHUNTO(トレーニー出身) など
■ 社名「BMSG」の意味
SKY-HIによれば、「Be My Self Group」の略。
「自分自身として生きることを支える集団」という願いが込められています。
2. 開示命令の件数と司法判断の意味
BMSGの発表によれば、対象となった投稿は「複数」──つまり2件以上。それぞれの投稿に対し、裁判所が正式に開示命令を出したということは、事務所側の訴えがすべて認められたことを意味します。
名誉毀損やプライバシー侵害といった人権侵害に対して、司法が明確に「NO」を突きつけたという点で、今回のケースは一つの判例的意味合いも持つかもしれません。
3. 問題となった投稿内容とは
法的措置の対象となったのは、以下のような投稿でした。
- 誹謗中傷:根拠のない悪口や中傷
- 侮辱:人格を否定するような言葉
- 名誉毀損:虚偽・真実問わず、社会的評価を損なう発信
- 虚偽情報の流布:デマや憶測を事実のように拡散
- プライバシーの侵害:本人の許可なく私生活を暴露
これらは一見、個人の“つぶやき”に見えるかもしれませんが、アーティストの精神的負担は計り知れず、キャリアすら脅かす凶器にもなり得ます。
4. BMSGによる過去の取り組みとファンへの呼びかけ
BMSGは今回が初の対応ではありません。過去にも以下のようなアクションを取ってきました。
- 2024年:誹謗中傷や虚偽投稿の通報用ホットラインを設置し、法的措置も視野に入れる旨を発表
- 2025年3月:「ファンの皆さまへのお願い」として、付きまといや盗撮、過度な詮索行為を禁止する声明を出し、悪質な場合は強制退会や法的手段を取ると明記
「ファンとの関係性を大切にしたい」という思いを前提にしながらも、安心して活動できる環境を守るためには断固とした姿勢も必要。まさに両立を目指した対応でした。
5. 「才能を守る」覚悟に拍手を
私は以前からBE:FIRSTやBMSGのアーティストたちを応援していますが、華やかな表舞台の裏で、日々心無い言葉にさらされていることもまた事実。だからこそ今回の法的措置には「ようやくここまで来たか」という気持ちです。
BMSGの「才能を殺さないために。」というスローガンは、単なる理念ではなく、行動として示された強い意志です。SNSの自由が叫ばれる一方で、無責任な誹謗や嘘が許される社会では、才能も希望も潰されてしまう。
この毅然とした姿勢が、他の事務所やクリエイターにとっても前例となることを願っています。
結びに
もしあなたがSNS上で心ない言葉を見かけたら、見て見ぬふりをするのではなく「それはおかしい」と言える勇気を持ってほしい。表現の自由と、誰かの尊厳は両立すべきもの。
BMSGの今回の法的措置は、そのバランスを保とうとする社会への問いかけでもあるのかもしれません。
コメント