2025年のNHK大河ドラマは「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」ですね。
大型娯楽時代劇として親しまれてきた大河ドラマは、合戦シーンがふんだんに描かれる戦国時代や幕末が多く取り上げられてきました。
2024年の「光る君へ」は平安時代の女流作家、紫式部を取り上げ、菅原道真と恋仲であったという大胆脚色で今までにないラブストーリーが話題になりました。
2025年は、江戸の出版王・蔦屋重三郎を取り上げ、時代は変われど文学つながりです。
「べらぼう」の時代背景や「光る君へ」との共通点などを探ってみました。
「べらぼう」と「光る君へ」
源氏物語を著した紫式部を主人公とした「光る君へ」と、江戸の出版王として活躍した蔦屋重三郎の物語は、一見、全く関係ないように思えますが、意外なことに共通点が多くあります。
合戦シーンがほとんど無い
「光る君へ」の舞台は平安時代です。紫式部の生没年ははっきりとは分かっていませんが、970年代に生まれ、1000年代に活躍したと思われます。
ドラマでは藤原道長の生涯(966年~1028年)と絡めて描かれていますから、平安中期です。
道長の死後、平忠常の乱など朝廷・公家・武家との勢力争いが起こりますが、保元の乱(1156年)・平治の乱(1159年)で平清盛が実権を握り、貴族政治が終焉するまでは、まだ100年以上の時が必要です。
「べらぼう」の蔦屋重三郎は1750年(寛延3年)生まれで、1797年(寛政9年)に47歳の若さで亡くなっています。時代は江戸中期、徳川吉宗の享保の改革が1742年、蔦重の生まれる8年前です。
1745年(延享2年)徳川家重が第9代将軍となり、1760年(宝暦10年)徳川家治が第10代将軍になっています。
徳川家治の時代、1772年(明和9年・安永元年)に田沼意次が老中となり政治の実権を握りました。ドラマでも田村意次が重要な役回りになりそうです。
天明の大飢饉(1782年~1788年)は、蔦重30代ですね。
1786年(天明6年)田村意次が失脚し、1787年(天明7年)徳川家斉が十一代将軍の時代、松平定信が老中になり寛政の改革が始まります。江戸幕府の財政難は続いていますが、政治的な地位は安定していました。
飢饉や天災など、どの時代も庶民の生活は苦しかったようですが、大きな合戦がないという意味では平和な時代だったようですね。
文学と出版
「光る君へ」で描かれた「源氏物語」や「枕草子」は、女性には漢文体で書かなければならないという規範がなかったため、かな文字で書かれ、格下の「草(そう)」となります。
巻物ではなく「冊子(そうじ=草子・草紙)」として糸で綴じて本にしました。ドラマでも一条天皇に献上するため美しい紙を綴じて冊子にする場面がありました。
最初から人に読ませるために書かれていて、読みたい人が書き写して次に譲ったり貸したりして広がりました。
平安時代の読み物は貴族社会の中だけで、庶民はまだ読み書きができない人も多かったようです。
そんな「源氏物語」や「枕草子」が現代まで読みつがれてきたのは、印刷技術の進歩と読書文化の広がりです。
17世紀に入ると僧侶や公家中心だった学問が、江戸時代では武家も勉強するようになり、商人にも広がります。学術書だけでなく「源氏物語」や「枕草子」などの物語やエッセイも木版本で流行したようです。
「べらぼう」では為重が貸本屋を商い、吉原の遊女たちはお得意さんとして描かれています。
「江戸時代には『草』が発達して、ダジャレ、パロディを駆使したさまざまな面白い本が作られました。その中心にいたのが蔦屋重三郎です。喜多川歌麿や東洲斎写楽などの絵師、戯作者の山東京伝などを発掘しました。蔦重が活躍した18世紀後半が、江戸の出版文化のピークでした」
nippon.com 和本の歴史より
為重によってべらぼうな本が作られたんですね!
- 程度がはなはだしいようす、常識はずれ
- 人をののしるときに言うことば
- ばか、愚かしい
- ひじょうに度が過ぎるようす・めちゃめちゃ、甚だしい
江戸の方言から現在では東京の下町の方言として残っている
王朝貴族と吉原
貴族と吉原って、全く関係ないように思えますね。
しかし、大河ドラマでは、公家というと白塗りの顔におじゃる言葉の印象が強いです。
「光る君へ」では、貴族社会のヒエラルキー、上級貴族の道長と下級貴族のまひろ(紫式部)の暮らしぶりや、貴族の勢力争いはもちろん、恋愛事情など日常生活も描かれました。
「べらぼう」では、為重の生まれ育った吉原が舞台となります。
吉原といえば、今まで華やかな夜の街と売られてきた遊女の悲しみは描かれました。ドラマでは「吉原」という一つの街でくらす遊女たちの日常が細やかに描かれるようでうす。
衣装饗宴
「光る君へ」の楽しみの一つが女性たちの美しい衣装でした。十二単の色重ねにうっとりしましたね。
月を愛でながらお互いを想う。雅な時間が流れていました。
「べらぼう」では、吉原の花魁や遊女たちの衣装が楽しみです。
猥雑なほどの色の氾濫が男たちの目を眩ませていたのでしょう。
田沼意次
ドラマで重要なキャラクターは、田沼意次ですね。渡辺謙が演じます。
教科書では賄賂政治家の印象が強いですが、重農主義から重商主義に転換した革新的政治家との評価もあります。
ドラマでは、田沼意次が実権を握り失脚するまでが描かれるようなので、どのような描かれ方をするのか楽しみですね。
まとめ
2024年の「光る君へ」は、ラブドラマとしても画期的な大河ドラマでした。雅な平安貴族の世界を堪能しました。
2025年の「べらぼう」は江戸の出版王として名を上げた蔦屋重三郎の生涯です。江戸っ子で街を走り回る軽快なドラマになるのではないかと思います。
全く毛色の違う2つのドラマにも共通点があると思い考察しました。
ドラマ鑑賞のヒントになると幸いです。
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