日本保守党の百田尚樹代表が街頭演説で放った「大阪は10人中9人がブス」との発言です。SNS上でも大きく拡散され、今もなお議論が続いています。
これは単なる“おふざけ”や“ジョーク”として受け流してよいのでしょうか?本記事では、百田氏の発言内容やその場の反応、政党や市民の評価、そしてこうした「容姿評価」が持つ社会的リスクについて、有権者としての視点から深掘りしていきます。
はじめに

百田尚樹氏の発言が選挙戦に与える波紋
2024年7月11日、参議院選挙は折り返し地点を迎え、各地で候補者たちの訴えが熱を帯びています。
そんな中、注目を集めたのが、日本保守党の百田尚樹代表による街頭演説での発言です。
北海道・北広島駅前で行われた演説中、百田氏は「大阪は10人中9人がブス」と女性の容姿に言及。選挙戦のさなかに放たれたこの発言が、SNSを中心に一気に拡散し、波紋を広げています。
百田氏は「札幌は美人が多い」と繰り返し述べた上で、地域によって女性の“美人率”が違うと断言。
街宣車上からのこうした発言が、演説の聴衆に笑いを誘った一方で、「政党代表としての品位を疑う」「政策論争をすべき場で何を言っているのか」といった批判も相次いでいます。
参院選という重要な場での発言として、単なる“冗談”では済まされない問題をはらんでいるのです。
SNSで広がる怒りと困惑の声
発言の様子を収めた動画がSNSにアップされると、X(旧Twitter)では「ルッキズム(見た目差別)ではないか」「女性をなんだと思っているのか」といった怒りの声が噴出。
特に百田氏が名指しした大阪の女性たちからは、「自分の住む地域がバカにされた気がする」「票を入れようと思っていたけどやめた」という書き込みも見られました。
一方で、「ユーモアとして受け取った」「表現の自由だ」と擁護する意見も一部にはあり、ネット上でも賛否が分かれる展開に。
政治家の一言が、たとえ軽い冗談であっても、選挙戦の行方に少なからず影響を与える時代。今回の百田氏の発言は、まさにその象徴的な事例と言えるでしょう。
1.街頭演説で飛び出した“ルッキズム”発言
北広島駅前での発言内容とその場の反応
問題となった発言が飛び出したのは、7月12日、北海道・北広島駅前で行われた街頭演説の場でした。
日本保守党の候補者とともに街宣車に立った百田尚樹代表は、持ち前の語り口で経済や政治の話を展開していましたが、突如として話題を“女性の容姿”に転じました。
「札幌は美人が多い」「大阪は10人中9人がブス」と、街頭から声を張り上げて発言した百田氏。
さらに「街宣してても嫌になってくる」とまで語り、聴衆の間からは一部で笑いが起きる場面も。しかし、現場にいた女性の中には、急に笑えない空気を感じたという人もおり、「それって褒めているようで誰かを貶しているよね?」という反応もあったようです。
この街宣の背景には、エスコンフィールドでのプロ野球の試合があり、現場には多くの市民が集まっていました。
日常の場に突然政治の声が響くというのはよくある光景ですが、今回ばかりは「政策ではなく見た目の話?」と、違和感を覚えた通行人の声も報告されています。
「10人中9人はブス」発言の背景
百田氏がなぜこのような発言をしたのか、その真意は明らかではありません。
ただ、彼はこれまでもメディアやSNSで物議を醸すような発言を繰り返しており、「話題性を狙っただけ」と見る人もいます。一方で、こうした表現に対し、「選挙の場で軽口を叩くのは不適切」「有権者を見下しているのではないか」と批判する声も少なくありません。
また、演説では“美人率”の話を笑いに包んで語っていたものの、それがかえって「容姿で人を判断する価値観を政治に持ち込むことへの違和感」を際立たせる結果となりました。
特に大阪出身の女性たちからは、「大阪に住んでる私たちを下げる発言」「地域差別にも聞こえる」と、心情を害したとの声が広がっています。
百田氏が繰り返した“美人率”への言及
問題はこの発言が一度きりではなかったことです。
百田氏は北広島市での演説の前後、札幌市内を選挙カーでまわっていた際にも「札幌には美人が多くて驚いた」「大阪ではほとんどがブス」など、同様の発言を繰り返していました。
この「美人率」という表現が、あたかも地域ごとに容姿レベルを格付けするかのような印象を与え、多くの人々の反発を招いたのです。
「なぜ街宣のマイクでそんな話を?」という声も多く、政策論争が求められる選挙期間中の発言として、軽率さが目立ちました。
一部の聴衆は笑って受け流したものの、SNSでは「これは笑い話では済まない」「自分の母や娘がこの話を聞いたらどう思うかを想像してほしい」といった現実的な声が投稿されています。
こうした空気の変化が、選挙戦全体にどんな影響を与えるのか、次のセクションで詳しく見ていきます。
2.選挙戦への影響と党内外の評価
保守層支持者の反応と擁護意見
百田尚樹氏の発言に対し、日本保守党の支持層の中には「歯に衣着せぬ物言いがいい」「本音を語っているだけ」と擁護する声も一定数見られました。
SNS上では、「あれぐらいで目くじら立てる必要はない」「言葉狩りの風潮にうんざりしている」といったコメントが並び、百田氏の発言を「冗談として受け入れるべき」という論調もありました。
中には「政策に関係のない発言ではあるが、候補者の熱量や誠意は伝わってきた」と、演説全体の印象で支持を継続する人もいます。
こうした反応から見えてくるのは、発言の是非よりも「既存政治への不信感」に共鳴している層が、ある種の“痛快さ”として受け止めている構図です。
他党・有識者の批判と見解
一方、野党を中心に他の政党関係者からは強い批判が相次ぎました。立憲民主党の候補者は「選挙は政策で争うべきもの。
容姿や地域性をネタにするような発言は、候補者としての品位に欠ける」と厳しく非難。共産党も公式Xアカウントで「女性蔑視・地域蔑視の言動は看過できない」と投稿しました。
また、ジェンダーやメディア論に詳しい専門家からも、「“美人かどうか”を公の場で論じること自体がナンセンス」「女性を票田の道具として見ている発想が透けて見える」と指摘されており、百田氏の発言は単なる失言ではなく、政治家としての視点や姿勢が問われる事案として捉えられています。
有権者の信頼を損なう可能性
この発言が選挙結果に与える影響は、決して軽視できません。特に大阪在住の有権者の中には「侮辱された気分だ」「これで投票はしないと決めた」という声が目立ちます。
さらに若い世代の女性を中心に、「政策ではなく差別的な発言ばかり目立つ政党に未来は託せない」と感じる人も増えているようです。
SNS上では、無党派層とみられる投稿者から「本来、無関心だったが、あの発言を見てこの党には入れたくないと強く思った」との声もありました。
こうした“消極的不支持”は、投票率の低下や白票の増加を通じて、選挙結果に影を落とす可能性があります。
政治家の発言は、一瞬のものであっても有権者の記憶には残ります。軽口であったとしても、「票」を失うリスクをともなう――それが、現代の選挙戦のリアルです。
3.「容姿評価」が持つ社会的リスク

ルッキズムとは何か──定義と問題点
「ルッキズム」とは、外見の美しさや容姿の良し悪しで人を評価・判断する考え方のことを指します。
言葉の由来は英語の「look(見た目)」からきており、日本語では「外見至上主義」や「見た目差別」とも訳されます。
今回の百田尚樹氏の発言のように、女性の見た目をあけすけに話題にし、しかもそれを地域ごとに比べる行為は、このルッキズムにあたると指摘されています。
見た目の評価は、しばしば無意識のうちに行われがちですが、それを公人が公の場で発信することには大きな影響力があります。
特に選挙という政治的な場では、有権者に向けて「誰が評価に値するか」を語るわけですから、その基準が“容姿”であることは、政治そのものの信頼性を損なうリスクを伴います。
また、「美人かどうか」で接し方が変わるといった発言は、女性が社会の中で公平に扱われる機会を奪う一因にもなり得ます。
たとえば、採用面接や政治活動の場面で「どう見えるか」が過剰に重視されるようになれば、それは真に実力や信念を問うべき本質から逸脱してしまうのです。
政治家による女性蔑視発言の過去事例
残念ながら、政治家による女性蔑視ともとれる発言は過去にもたびたび問題になってきました。
たとえば、2014年に都議会で女性議員が「早く結婚しろ」とヤジを浴びた件は、国内外から批判を集め、日本の政治におけるジェンダー意識の遅れが浮き彫りになりました。
また、ある国会議員が育児休暇の取得を希望した男性議員に対して「男が育休なんてみっともない」と発言し、ジェンダー平等の観点から厳しい非難を浴びた例もあります。
こうした発言が政治の現場で繰り返される背景には、「ジェンダー意識の低さ」と「場をなごませるための軽口」として片付けようとする風潮があります。
百田氏の今回の発言も、同様に「冗談だった」と受け流される可能性がありますが、それを繰り返すことが社会全体の価値観を歪め、女性や若者の政治不信を加速させる危険性があります。
若年層・女性層の政治離れを招く危険性
政治家の発言は、若年層や女性たちにとって「政治への信頼」を左右する重要な材料となります。
今回のような発言が「政治は結局、古い価値観の男性たちの世界なのだ」と感じさせてしまえば、特に10代・20代の有権者が投票所から足を遠ざける要因になりかねません。
ある大学生の女性は、「百田氏の発言で『政治に期待しても無駄なんじゃないか』と感じた」と語っています。また、選挙に関心を持ち始めていた高校生からも「こういう発言を聞くと、政治家って人を傷つけてもいいと思ってるのかな」と不信の声が上がっています。
若い世代はSNSを通じて瞬時に情報を共有し、そこから生まれる共感や怒りが選挙行動に直結する傾向があります。
だからこそ、公の場で発される政治家の一言には、社会全体の空気を変えてしまうほどの力がある――それを今、私たちは目の当たりにしているのです。
まとめ
今回の百田尚樹氏による「10人中9人はブス」といった街頭演説での発言は、ただの“冗談”や“本音トーク”として見過ごすことのできない社会的・政治的問題をはらんでいます。
選挙期間中という極めて重要なタイミングで、国政政党の代表が女性の容姿を笑いのネタにする――その影響は一部の有権者にとっては侮辱となり、また別の層には政治への信頼を大きく損なう出来事として映ったでしょう。
ルッキズムという価値観が社会に深く根を下ろすなかで、公人の一言がどれだけの人々を排除し、傷つけるか。その現実に、私たちはもっと敏感であるべきです。
容姿や性別、年齢といった「変えられない特徴」に価値をつけるのではなく、語るべきは政策であり、未来をどうつくるかというビジョンであるはずです。
参院選の本質が問われる今、この発言をどう受け止め、どう判断するか。それこそが、有権者一人ひとりに求められている政治参加のかたちなのかもしれません。
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