映画『愛と哀しみの果て』あらすじと考察 美しきアフリカの大地を堪能できる映画

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愛と哀しみの果て
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1985年にアカデミー賞作品賞を受賞した『愛と哀しみの果て』美しいアフリカの大地が堪能できる名作です。当時見て、感動し原作本も読んだ思い出があります。ここでは、あらすじやキャスト、原作の紹介、考察をしています。

第58回アカデミー賞作品賞ならびに第43回ゴールデングローブ賞ドラマ部門作品賞受賞作品。

目次

スタッフ・キャスト

1985年製作・公開 アメリカ映画 上映時間161分

監督シドニー・ポラック
脚色カート・リュデューク
原作イサク・ディネーセン
撮影デイヴィッド・ワトキン 
美術スティーブン・グライムス 
音楽ジョン・バリー 
出演メリル・ストリープ カレン
ロバート・レッドフォード デニス
クラウス・マリア・ブランダウアー ブロア

あらすじ(ネタバレあり)

「私はアフリカに農園を持っていた」物語は、カレン・ディネーセンのアフリカの思い出語りで始まる。

デンマークの資産家の娘カレンは、陰鬱なこの街から逃れたいと思っていた。そんな時、友人の貴族のブロル・ブリクセン男爵が経済的に窮していることを知り、便宜上の結婚を提案する。結婚に同意したブロルと共に、カレンは夢と希望を膨らませてアフリカの地を踏んだ。東アフリカのケニアにあるカレンの所有するンゴングの農園に新居を構えるためだ。

ナイロビに向かう途中の列車で、カレンは冒険家のデニス・ハットンと出会う。ナイロビに着き、ブロアの待つ英国人クラブ・ムサイガに向かう。新天地と思っていたアフリカの地でも、英国人クラブは女人禁制であった。それを無視して足を踏み入れるカレンに周囲の人々は茫然とした視線を向けた。

カレンが農園に着くと、カレンの所有する農園にもかかわらず、ブロアが勝手に酪農からコーヒー栽培に計画変更していたことを知りブロアと口論になる。翌日ブロアは「狩りに出る」と言い残して行ってしまった。一人残されたカレンはコーヒーの収穫は4年後と聞かされて驚くが、精力的にコーヒー栽培に取り組んだ。

そんなある日、草原に出かけたカレンはライオンに襲われそうになったが、たまたま通りかかったデニスに助けられる。再会した二人は親交を深める。

やっと戻ってきたブロアとカレンの新婚生活が始まる。便宜上だったとしても次第にカレンはブロアに惹かれるようになっていた。しかし一方、ブロアの浮気癖と浪費に悩ませされてもいた。最悪なことにカレンはブロアから梅毒を移されてしまう。当時は死に至る深刻な病で、カレンはデンマークに戻って治療することを余儀なくされる。

つらく苦しいデンマークでの治療を終え農園に帰ってきたカレンを待っていたのは、農園の経営に興味がなく相変わらずの浮気癖が治らないブロアだった。ついにはカレンはブロアと別れる決心をして、彼を農園から追い出してしまう。失意のカレンの心のよりどころは、デニスに乞われて作り話をする時間。次第に二人は心を寄せ合い恋人同士になっていく。カレンはデニスとの結婚を望むが、「ただ一枚の紙切れに過ぎない結婚が、君への愛を増やすことにはならない。」と拒否されてしまう。マサイ族のように広大な大地で自由に暮らすことを望むデニスは自分のものにはならないことをカレンは悟る。

病気のために子供が埋めない体になってしまったカレンは、学校を創って、読み書きや算数、多少のヨーロッパ式の習慣を、農園のある部族の子供たちに教えることに。しかし、農園の経営はブロアの散財などもあり窮地に立たされていた。やっと収穫できて好転するかと思えた矢先、壊滅的な火災ですべてを失ってしまう。

すべてを失ったカレンはアフリカを去ることを決意する。豪華な家財一切を処分して空っぽになった家でデニスと最後のダンスを踊った。何もないこの家が一番好きだとデニスは言う。

デンマークに戻るカレンを自家用飛行機で送る約束をしデニスは去る。「次の金曜日には必ず戻る」と言い残して。

デニスを待つカレンのもとにブロアがやってきて、デニスが墜落事故で死亡したことを告げる。愛するものすべてを失ったカレン。アフリカの地を去り、二度と戻ることはなかった。

カレンはのちに作家となり、アフリカのデニスの墓にライオンの姿を見るという噂を聞いて、懐かしいあのアフリカの日々を綴った。

原作 アフリカの日々(イサク・ディネイセン)

『愛と哀しみの果て』の原作はイサク・ディネイセン(本名 カレン・ディネイセン)の自伝的小説「アフリカの日々」です。作者が実際に1914年ケニアでコーヒー農園を経営していた経験を記したものです。

映画に感動して本書を手にしました。素晴らしいアフリカの風景が蘇ります。映画が気に入ったなら、ぜひ手に取ってみてほしい一冊です。

内容紹介(「BOOK」データベースより)

北欧の高貴な魂が始原の大地に出会うとき、奇跡のようなエッセイが生まれる。天性のひらめきをもつ料理人カマンテ、美しきガゼルのルル、時代から追放されたイギリス人デニス、見事な踊り手でもある土地の古老たち。風と合体し、土地の匂いに同化したものだけが、ここでは生きていられる。世界文学の金字塔。

著者情報(「BOOK」データベースより)

ディネセン,イサク(Dinesen,Isak)
1885年デンマーク生まれ。本名はカレン・ブリクセン。20代から短篇を発表しはじめる。1914年ケニアに渡り、広大なコーヒー農園を経営。31年に帰国後、『アフリカの日々』などを発表し、世界的に高い評価を得る。1962年逝去

楽天ブックス商品説明より

感想・考察

『愛と哀しみの果て』製作は1985年、古い映画です。161分もある長い映画です。昔は2時間半から3時間は当たり前でしたが・・・。少しも飽きることなく観ることができるのは、あまりに美しいアフリカの広大な風景があるからですね。

時代は1913年のデンマークからはじまります。世界情勢では、第一次世界大戦に戦争前夜から終戦までの間になります。当時のケニアはイギリスの保護領でしたが、保護とは名ばかりで実質はイギリス貴族が支配していたようです。1920年には正式な植民地となり、農地は奪われ、大勢のケニア人が強制労働を課されています。

カレンの広大な農場も奪ったものには違いないですね。しかし、カレンが破産して農地は切り売りされることになりますが、カレンは帰国する前にキクユ族の住む土地を確保するために奔走したりもします。

映画の時代背景を考えると、欧米人には当然のことのように受け止められたのかもしれません。アフリカの農場に豪華な家財道具を母国から運び入れ、大勢の使用人を雇って貴族然とした生活を送ることにカレンは何の疑問も抱きません。しかし、コーヒー栽培に没頭する中、料理を教えるとカマンテは比類まれにみる才能を発揮したり、キクユ族と交流を深めたり、マサイ族が美しいと感じたり・・・病気から戻ったら、子供たちために学校を開いたりします。

財産家であっても女性はまだまだ社会的な地位は低い時代でした。夫は農場経営に関心が無い中、女手ひとつで切り盛りするカレンにアフリカの自然や人々はおおらかに迎えてくれたのかもしれません。もちろんコーヒー栽培に自然は厳しいこともあったでしょうが。

デニスとの関係について、私が一番印象的だったのは、夜二人で過ごすとき、デニスに頼まれてカレンは作り話を聞かせます。二人は想像の世界で楽しい時を過ごすのです。作家イサク・ディネーセンの誕生ですね。

資産家であったカレンは、結局、農園経営に失敗して破産してしまいます。夫とは離婚して、愛する人は事故で亡くなってします。多くのものを所有していたけれど、一番欲しかった恋人を手に入れることはできず、すべてのものを失ってしまいます。

「私はアフリカに農園を持っていた」

この言葉がとても魅力的に響くのはなぜ?

アフリカの広大で美しい景色が目に浮かぶからではないでしょうか。カレンはアフリカの農園で懸命に働き、人々と交わり、形のない多くのものを受け取りました。その反面、火災で一瞬にして無になってしまう「所有する物」の虚しさを知ったのではないでしょうか。

アフリカの地を離れ、二度と戻ることはなかったカレンですが、生涯、離婚した夫の姓を名乗ったそうです。原作者はデンマークで作家になり成功します。デンマークの紙幣の顔になったこともあるそうです。

原作本の解説に、実はカレンとデニスは恋人の関係ではなかったようだと書かれていました。(デニスが事故で亡くなったのは本当らしいです。)ロマンチックな妄想はアフリカの大地への想いのようです。

地球温暖化で環境は激変していますが、アフリカの草原がいつまでも続くことを願うばかりです。

ちなみに、若きメリル・ストリープロバート・レッドフォードに出会えるのも楽しみの一つですね。ロバート・レッドフォードのデニスは、上流階級の出身で教養もあるが、自由な生活を求めて象牙など大型動物のハンターをしている。自家用飛行機も操縦する自由人。誰のものにもならずに飛行機事故で亡くなるなんて、「星の王子様」のサン=テグジュペリみたい。とても魅力的に描かれています。

令和の時代だと象牙狩りなんてアウトですけどね。

ロバート・レッドフォードを初めて『追憶』で観たときに
「なんて美しい男性がいるものだ!!」と思ったなあ。

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