日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」が最終回を迎え、鉄平の失踪の謎が解き明かされました。
あまりに切ない物語にSNSでも涙腺崩壊!!との書き込みが多数ですね。
ドラマの終焉において、考察をしてみました。よければ御覧ください。
キラキラ輝くギヤマンは海の色
鉄平が朝子にプロポースするために作ったギヤマンは海の色ですね。
作者は江戸切子の中宮涼子さん。江戸切子では初めての女性の伝統工芸士だそうです。
ドラマでは端島の鉄平の部屋でしょうか?朝子と一緒に住むはずだった部屋に置かれたワンカットだけの映像でしたが、廃墟の中のギヤマンは、その美しさにより切なさを増してきらめいていました。
鉄平失踪の理由
鉄平から「話がある」と呼び出されたけれど、鉄平は現れず、店の前で待ち続けていた朝子を残して鉄平はどこへ行ってしまったのか?
その夜に、リナを追って返り討ちにされた小鉄の兄が、小鉄の復讐に現れるなんて、人生ってうまく行かないものですね。
リナと噂されながらも、小鉄が長崎に向かう理由は朝子へのギヤマンのプレゼントを作っていたからとは。
「金じゃないんだよ。プロポーズだってそうだろ」言われ、二人で暮らす部屋に朝子が花を活けるギヤマンの花瓶を夢に描きながら世界で一つだけのダイヤモンドを作る。なんともロマンチックな話です。
でも、そんな時間をかけずにさっさと朝子にプロポースしていたら・・・。
試練は突然やってきます。
戦争、病気、事故・・・、自分ではどうにもならない出来事で人生が変わってしまう。
でも、ヤクザに追われて逃げ続けるなんて!!
昭和かよ!!
と、ツッコミを入れたくなりましたが、ドラマの舞台は昭和でした。
はじめは、いずれ戻って朝子にプロポーズしようとギヤマンを持ち歩きながら逃げていた鉄平も、十年という時日が流れ端島が閉山することを知って賢将に連絡をします。
予想はしていたが、朝子は結婚して子供ももうけていました。
幸せそうな朝子の写真を見て、もう二度と会えないことを確信したのでしょう。
日記の朝子への想いを破り捨て、鉄平は闇の中へ消えていきます。ギヤマンの花瓶を抱えて。
2018年の意味
小鉄の兄が鉄平を追うのを諦めたのか、死んでしまったのか、やっと自由になった鉄平は端島の見える小さな家を買ったようです。
2009年「九州・山口の近代化産業遺産群」の一部として、端島は世界遺産暫定リストに追加記載されます。
世界遺産になると自由に立ち入れなくなる端島のコンクリートアパートに、鉄平はギヤマンの花瓶を置きに行きました。
もう誰も見ることがないだろう二人の部屋へ。
朝子が鉄平の11冊目のノートを手に入れて、鉄平の失踪の理由を知ってから、再び玲央と訪れた端島でその事を知らされます。
鉄平が再び端島を訪れたのは、世界遺産登録前の2009年前後。朝子が訪れるのは、それから約10年後のことです。
現在パートが2018年だった理由はここにあったのですね。
鉄平の終の棲家を尋ねると、庭には一面のコスモス畑、その向こうには海に浮かぶ端島が見えます。
キラキラと輝いていた頃の端島を想いながら、鉄平はここで最後を迎えたようです。
鉄平は幸せだったのか?
先に書きましたが、ヤクザに追われて逃げ回るなんて「そんなオチ、鉄平が不憫すぎる」と思ってしまいます。
朝子は裏切られた想いを抱きながらも、しっかりと前を向いて起業して成功します。
百合子も賢将も子供をもうけて幸せな家庭を築きました。
鉄平も、伴侶を見つけて幸せな晩年を過ごしてほしかった。
虎次郎が朝子を丸ごと受け入れたように、鉄平の想いも一緒に受け止められる人と出会って。
朝子が訪れたときに鉄平は8年前に亡くなっていたので、端島を離れてから約45年。
だから、鉄平が朝子を想い続けた愛の物語は、おとぎ話だと思うことにしました。
すべての罪を背負って愛する人を自分の人生から遠ざけても、尚、心に愛を持ち続けた男の夢の話です。
最後の朝子の夢の中には、キラキラ輝いていた頃の端島で鉄平はプロポーズをします。
それ程までに愛することができる人に巡り会えた鉄平は幸せだったのかもしれない。
そして朝子も。
朝子 どんな人生でしたか?
いづみ 朝子は気張って生きたよ
みんな逝ってしまったけれど、朝子の心にはみんな生きてキラキラ輝いている。
リナと誠の謝罪
鉄平にすべてを背負わせてしまったリナは誠に真相を語っていたようです。
鉄平と朝子の人生を狂わせてしまった後悔は深くリナを苦しめたでしょう。
朝子が起業して成功していくことを一番喜んでいたのはリナに違いありません。
誠は立派に成人して、家庭を持ち子供を育て上げていました。母の想いを受け継いで、朝子の助けになるために素性を隠して澤田と名乗り秘書になっていた。
誠は朝子が自分たちを恨んでいたのではないかと恐れていたのですね。
鉄平の11冊目の日記を隠していたことがバレて、
玲央 いづみさんが傷つくことが書いてあったから?
澤田 そんな立派なことじゃないです。保身のためです
としょげる澤田がちょっとかわいかった。
鉄平だけに重荷を背をわせたこと、朝子を傷つけたこと、リナは苦しんだことを誠という息子が変わって謝罪していたことは、脚本家の優しさじゃないでしょうか?
玲央が繋いだ鉄平の思い
鉄平の日記を読んで追体験するうちに、「友情も恋愛も信じられない」と言っていた玲央が変わって行きました。
長崎のホテルで端島の映像を見ながら「そうか、鉄平が声をかけたのか」と、生涯、外勤さんとして人の世話を焼いてきた鉄平の人柄に惹かれたようです。
「人生変えてみないか」玲央の人生の歯車が回り始めました。
賢将と百合子の子供や孫の健康を心配する姿はまさに鉄平でした。
一人二役を演じた神木隆之介は、鉄平は真面目で真っ直ぐな性格だから芯のある立ち位置。玲央はフラフラと軸のない立ち方をしたと言っていました。
2024年、玲央は鉄平のようにしっかりした軸を持った姿勢で飛び立ちます。
そこにはまるで鉄平がいるようでしたね。
「海に眠るダイヤモンド」生きている端島
再び長崎に行った朝子は廃墟となった端島を見て、「そうだ、死骸・・・。石炭。石炭だと思えばいい」と船で端島に向かう。
植物が死んで長い時間をかけて黒いダイヤモンドになる。
ドラマで蘇った端島を観て、世界遺産の廃墟「軍艦島」ではない、人々が行き交う端島を追体験しました。
歴史を追いながら、ドラマの登場人物たちのように端島炭坑を生きたような感覚を味わいました。
あの頃、人々は何もなくてもキラキラと輝いていたようにみえても、
どんな時代にも苦しみや悲しみがあって、人は懸命に生きてきた。
「気張って生きた」と思えるように明日を生きよう。
そんな気持ちにさせてくれたドラマでした。
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