俳優・片岡鶴太郎さんが出演していた愛媛のローカル番組『鶴ツル』が、BPO(放送倫理・番組向上機構)の審理対象になっただけでなく、出演者の女性アナウンサーから約4,111万円の損害賠償請求を受けたことで話題になっています。この記事では、この出来事の背景と、BPOとは何か、過去の事例との比較、今後の放送業界への影響についてわかりやすく解説します。
鶴ツル騒動、ただごとじゃない?
共演していた女性アナウンサーが「繰り返しセクハラ的な発言を受けた」として、番組を制作・放送していたあいテレビを相手取り、損害賠償請求を行いました。
驚くべきは、実際に発言をしたタレント個人ではなく「それを放送したテレビ局」が訴えられている点です。
俳優でタレントの片岡鶴太郎さんが出ていた、愛媛のローカル番組『鶴ツル』。お酒を飲みながらトークする、ちょっと“大人の夜会話”って雰囲気の深夜番組でしたが…なんと今、BPO(放送倫理・番組向上機構)の審理にかけられています。
きっかけは、共演していた女性アナウンサーが「番組内でセクハラ的な発言を何度も受けた」として、精神的な苦痛を訴えたこと。そして2024年には、なんと 約4,111万円の損害賠償を番組を作ったテレビ局に対して請求したというから驚きです。
問題は“言った人”じゃなくて“流した人”?
ここで「じゃあ鶴太郎さんが訴えられたの?」と思った方、それが違うんです。今回訴えられたのは 番組を作ったテレビ局「あいテレビ」。女性は「放送しないでほしいと訴えたのに、局側は止めなかった。むしろ面白がって流した」と主張しているんです。
番組では、共演者の一部から性的な発言が繰り返され、収録後にスタッフへ改善を求めても無視されたとのこと。これって、ただの“ハラスメント”だけじゃなくて、“黙って見ていた側”にも責任があるって話なんですね。
実は一度、却下されていた申立て
この件、実は最初にBPOへ申し立てた時は却下されていたんです。でもその後、女性側があらためて申立て直し、BPOは正式に審理入りを決定しました。つまり、それだけ 問題の深刻さが再認識されたってこと。
一度目の申し立てでは却下されたものの、再申立てによってBPOが正式に審理を開始。その後、東京地裁で損害賠償請求が提起されました。
ポイントは、番組内での不快な発言が放送され、出演者が「やめてほしい」と訴えたにもかかわらず、それが改善されなかったという点です。
最近よく聞く「放送局も責任あるよね」って話
ここ数年、テレビやラジオ、YouTubeなんかでも「これは言い過ぎじゃない?」って話題になることが増えてますよね。昔なら笑い飛ばしてたようなことが、今は“ハラスメント”としてしっかり問題視されます。
特に今回は、「言った人」よりも「それを見て見ぬふりした放送局」が訴えられたことで、より注目されてるんです。
影響を与えた?中居正広さんの騒動と世論の風向き
実はこの問題、タイミング的に「中居正広さんをめぐる報道トラブル」などの影響も無関係ではないかもしれません。芸能界でも、女性が声を上げることが増えてきた今、「黙っていると加担になる」という考え方が浸透してきました。
芸能界でも近年、女性や出演者の人権に対する意識が急速に高まっています。「黙っている=同意ではない」という認識が広がり、声を上げる人も増えています。
中居正広さんに関連した報道騒動などもあり、メディアの倫理に対する世間の目が一層厳しくなっているのも一因かもしれません。
SNSでも、「被害を声に出すってすごいこと」「番組の責任もちゃんと追及されるべき」といった意見が多数。そういう流れが、今回の再申立てや訴訟を後押ししたのかもしれませんね。
BPOって何?
BPO(放送倫理・番組向上機構)とは、テレビやラジオなどの放送内容について、視聴者からの意見や苦情を受け、放送局の対応や倫理性を審査する第三者機関です。
- 設立:2003年に日本民間放送連盟などによって設立
- 加盟局:NHK・民放キー局・ローカル局など
- 構成:弁護士、大学教授、ジャーナリストなど、放送業界の外部有識者で構成
- 本部:東京都千代田区
- 役割:番組の表現内容や放送の影響に関するチェック・勧告
- 目的:視聴者からの苦情や意見を受け、放送内容に問題がないか審査・勧告を行う
BPOが扱う主な分野
BPOには、以下のような審議機関があります:
審議部門名 | 主な役割 |
---|---|
放送倫理検証委員会 | 番組の内容が放送倫理に反していないか審査。重大な問題がある場合は意見表明を行う。 |
放送人権委員会 | 放送によって個人や団体の名誉・プライバシーが侵害されていないかを調査・審理。 |
青少年委員会 | 青少年にふさわしくない表現(暴力・性的表現など)が放送に含まれていないかを検討。 |
なぜBPOが重要なの?
放送局が自分たちで内容をチェックするだけでは、どうしても甘さや見落としが出ることがあります。
そこでBPOのような**「業界から独立した第三者機関」**が外からチェックすることで、より公平で透明な審査が可能になるんです。
視聴者も関われる?
はい、BPOには一般の視聴者から意見や苦情を受け付ける窓口があり、誰でも放送内容について申し立てることができます。
過去の注目されたBPO勧告・意見事例
① フジテレビ『めちゃ×2イケてるッ!』いじめ演出(2015年)
- 問題点:「抜き打ちテスト」企画で、お笑い芸人の三中元克さんに対し、教師役のメンバーが暴言や侮辱を繰り返す演出があった。
- BPOの判断:「深刻ないじめを想起させる」「放送倫理上問題がある」として厳重な注意を表明。
- 結果:フジテレビ側は演出について反省を表明。
② 日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』祭り企画“やらせ”問題(2018年)
- 問題点:番組内で紹介された「タイの祭り」が実在せず、番組が独自に作ったものであったことが判明。
- BPOの判断:「放送倫理違反に該当」として重大な放送倫理上の問題があると意見表明。
- 結果:当該企画は一時休止。演出体制の見直しが行われた。
③ NHK『クローズアップ現代』やらせ報道問題(2015年)
- 問題点:番組内で紹介された出会い系業者の映像が、実際にはNHK側が仕込んだ“やらせ”であった。
- BPOの判断:「重大な放送倫理違反」としてNHKに対し意見表明。
- 結果:番組責任者らが処分を受け、NHK会長も謝罪。
④ フジテレビ『バイキング』誤情報報道(2020年)
- 問題点:新型コロナの関連報道で、実際とは異なる店舗の映像を紹介し、誤解を招く構成となっていた。
- BPOの判断:「不正確な情報提供は重大な問題」とし再発防止を求める意見を表明。
⑤ TOKYO MX『ニュース女子』沖縄基地反対派報道(2017年)
- 問題点:基地反対派を「テロリスト」扱いし、偏った編集・取材を行っていた。
- BPOの判断:著しく放送倫理に反し、「重大な放送倫理違反」として最も厳しい意見表明。
- 結果:TOKYO MXは番組の放送打ち切りを決定。
BPO勧告の効果は?
内容 | 効果例 |
---|---|
「意見」 | 倫理的問題があり、改善が必要と判断された場合。公式文書で公表。 |
「勧告」 | 特に深刻な場合に行われ、放送局に強い自省と改善を促す。 |
放送局側の対応 | 番組打ち切り、謝罪放送、関係者処分などが行われることが多い。 |
実は珍しい?BPOでのセクハラ審理
過去のBPO審査では、「やらせ」や「誤報」への勧告が目立ちますが、セクハラ的表現についても以下のような事例がありました:
- フジ『めちゃイケ』:嫌がる女性にキスなどの“公開セクハラ”演出
- 日テレ『エンタの神様』:女性芸人への露骨な下ネタ
- TOKYO MX『欲望の塊』:性的演出+制作トラブル
しかし、本格的に審理→裁判へと発展したセクハラ事案は今回が極めて珍しいケースです。
テレビ局が訴えられる時代に
「誰が言ったか」だけでなく「誰が放送したか」が問われる時代です。演者も制作側も、「これは笑いで済むのか?」という感覚がこれからますます大事になります。
今後はどうなる?類似事例が増える可能性も
今回の件を前例に、「放送局に責任がある」として訴えるケースが増える可能性もあります。
いじりのつもりでも相手が傷つけば問題。放送局にはその境界線をしっかり見極める力が求められます。
こうした「テレビ局を訴えるタイプの訴訟」は今後もっと増えてくる可能性が高いです。
- 視聴者や出演者の“声”が可視化されやすい時代
- ハラスメントや差別に対する社会の目が厳しくなっている
- 裁判で前例ができれば、他の人も訴えやすくなる
バラエティ番組で「いじり」のつもりでも、相手にとっては傷つくことだった…というケース、他人事じゃありません。
まとめ:メディアの“面白さ”と“倫理”は両立できるのか?
バラエティも報道も、「面白ければ何を言ってもいい」という時代はもう終わりつつあります。
視聴者も、出演者も、放送局も、それぞれが「伝え方」「笑い方」を見直すタイミングなのかもしれませんね。
番組を見ている側としても、「これは面白い」で済ませていいのか、ちょっと考えさせられる事件ですよね。
テレビ番組やメディアって、影響力があるからこそ、誰かを傷つけない配慮や責任が求められます。今回の件を通じて、出演者も、スタッフも、そして私たち視聴者も、「メディアとハラスメント」について少しだけでも考えるきっかけになればと思います。
コメント