最近SNSで「トカラの法則」という言葉をよく見かけるようになりました。「トカラ列島で地震が起きると、その数日後に本州などでも大きな地震が発生する」という噂、気になりますよね。
この記事では、「トカラの法則」とは何か?本当に地震の前触れになるのか?
過去の事例や専門家の見解をもとに、わかりやすく解説します。また、デマに惑わされず、いざという時に備えるための心構えについても考えてみました。
はじめに
トカラの法則とは何か?
「トカラの法則」とは、鹿児島県のトカラ列島周辺で地震が頻発した数日後に、日本列島の他の地域でも大きな地震が起こるのではないか――という“法則”のようなものです。あくまで正式な地震予知ではなく、ネット上の一部で注目されてきた現象で、「トカラが揺れると、次はどこ?」といった声がしばしばSNSに投稿されます。
たとえば、2021年12月にはトカラ列島で100回を超える群発地震が発生し、その後に和歌山県や福島県で中規模の地震が起こったことから、「やっぱり…」と注目されました。このような流れが繰り返されるたびに、トカラの地震に敏感になる人が増えているのです。
SNSで話題になった背景
「トカラの法則」が広まった背景には、SNSの拡散力が大きく関わっています。特にTwitter(現X)では、地震速報がリアルタイムで流れるため、「またトカラが揺れてる」「そろそろ関東が危ないかも?」といった投稿が一気に注目されやすいのです。
また、過去の大地震の直前にトカラ列島で小さな地震があったという「偶然の一致」が、あたかも因果関係であるかのように共有され、「これは本当に法則なのでは?」と信じる人が出てくるようになりました。
もちろん、科学的に因果関係があると証明されたわけではありませんが、地震に対する不安感や備えたいという気持ちが、この法則への関心を後押ししているのかもしれません。
1.トカラ列島の基本情報
【4日間で地震300回以上…】“トカラの法則”は―
— 報道ステーション+サタステ (@hst_tvasahi) June 24, 2025
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鹿児島のトカラ列島では、21日から地震が頻発し始め、この4日間で300回以上発生
→24日にも、震度4の地震を2回観測
悪石島学園 小窪卓也教頭… pic.twitter.com/YpUsGCT2xQ
トカラ列島はどこにあるのか
トカラ列島は、鹿児島県の南方、奄美大島と屋久島のちょうど中間あたりに位置する細長い島々の連なりです。行政的には十島(としま)村に属しており、有人島は7島、無人島を含めると12島以上から成る自然豊かな地域です。最も北に位置する「口之島(くちのしま)」から、南の「宝島(たからじま)」まで、南北約160kmにわたって点在しています。
飛行機は飛んでおらず、アクセス手段は基本的にフェリーのみ。そのため、一般の人々にはあまりなじみがない場所かもしれませんが、海も空も澄みきった、まさに“日本最後の秘境”ともいえるエリアです。
島々の特徴と地理的条件
トカラ列島は、火山活動の影響を強く受けた地形が特徴で、いくつかの島では現在も火山活動が観測されています。たとえば、「諏訪之瀬島(すわのせじま)」では噴火が繰り返されており、気象庁の監視対象にもなっています。
また、島ごとに個性的な自然環境があり、マングローブ林が広がる島、断崖絶壁が連なる島、温泉が湧き出る島など、その表情は多彩です。人口は非常に少なく、1つの島に数十人〜100人前後が住むのみで、学校や病院などのインフラも限られています。
地震の多発地域としての位置づけ
トカラ列島は、フィリピン海プレートとユーラシアプレートが交差する場所に位置しており、日本列島の中でも特に地震活動が活発なエリアです。特に「トカラ列島近海」として地震速報に表示されることが多く、過去にも短期間に数十回、数百回と地震が集中して発生する「群発地震」が報告されています。
たとえば、2021年と2022年には、1週間に100回以上の地震が起こる異常な揺れが観測されました。このように、地震の多さから、地震ファンや防災意識の高い人々の間では「トカラが揺れたら要注意」と語られるようになっていきました。
この地震の頻発性こそが、「トカラの法則」という言葉を生んだ下地になっているのです。
2.「トカラの法則」の由来と信憑性
法則と呼ばれるようになった経緯
「トカラの法則」という言葉が生まれたのは、特定の専門家による研究ではなく、SNSや掲示板などインターネット上での一般ユーザーによる“気づき”からでした。とくに2021年12月のトカラ列島群発地震のあとに、数日以内に和歌山県や福島県で地震が続けて起きたことが話題になり、「もしかしてトカラで地震があると、他の地域でも地震が続くのでは?」といった投稿が注目されるようになりました。
その後も、トカラでの揺れの数日後に本州で中規模以上の地震が起きる事例が何度かあったため、こうした「関連性」を指摘する投稿が増え、次第に“トカラの法則”と呼ばれるようになったのです。あくまで正式な名称ではなく、ネットスラングに近いものですが、今では地震に関心のある層のあいだで広く使われる表現になっています。
地震予測との関係
「トカラの法則」は、あくまで“後づけ的な経験則”にすぎません。つまり、トカラ列島で揺れた後に他の地域でも地震が起きた、という過去の事例がいくつかあることから、「また次も起こるかも」と考えられているだけで、科学的な地震予知とは異なります。
たとえば、2022年3月にもトカラ列島で群発地震が起こり、その後に岩手県沖でM6を超える地震が発生しましたが、これは偶然の重なりなのか、それとも何らかの地殻的な連動があるのか――現時点では判断がつきません。
防災の観点からすれば「前兆現象かもしれない」と思って警戒すること自体は悪くありませんが、確実な予測手段として受け取ってしまうのは誤解を生む可能性もあります。
科学的根拠の有無と専門家の見解
地震の専門家や気象庁の見解としては、「トカラの法則」に明確な科学的根拠はないとされています。プレートの動きや震源の位置を踏まえれば、たしかにトカラ列島と本州の一部は同じプレートの影響を受けることもありますが、直接的な因果関係を示すデータはありません。
また、地震は世界中のどこかで毎日のように発生している自然現象であるため、トカラの地震のあとに他地域で揺れたとしても、それが単なる偶然だったという可能性も十分にあるのです。
実際、2023年にはトカラで地震が続いたにも関わらず、本州では特に大きな地震が起きなかった時期もありました。こうした事例も踏まえると、「トカラの法則」はあくまで噂レベルの話にとどまっているというのが、今の科学界の共通認識と言えるでしょう。
3.トカラ列島と日本列島の地震発生の関連性
トカラで地震→本州でも地震?という説
「トカラの法則」の核心にあるのが、「トカラ列島で揺れると、数日以内に本州でも地震が起きるのではないか?」という説です。これまでSNSや一部の地震愛好家たちの間で語られてきた事例では、たとえば2021年12月のトカラ列島群発地震の数日後に、和歌山県でM5クラスの地震が起きたことや、2022年3月にトカラが揺れた直後に福島県沖で大きな地震が発生したことがありました。
こうした「時間差の連鎖」が何度か確認されているため、「トカラが揺れる=日本列島全体が要注意」という見方が広まったのです。ただし、毎回そうなるわけではなく、トカラで激しく揺れても何事も起きない場合もあるため、“たまたま”の範囲を出ていないとも言えます。
過去の地震データとの比較分析
実際に過去の地震発生データを振り返ってみると、トカラ列島で群発地震が起きたあとの1週間〜10日以内に、東北地方・関東・中部・近畿などでM4〜M6クラスの地震が起こるケースは少なくありません。
たとえば、以下は実際の例です:
- 2021年12月3日〜9日:トカラ列島で100回以上の地震 → 12月9日、和歌山県北部でM5.4の地震
- 2022年3月27日:トカラでM5.4 → 3月31日、福島県沖でM6.6の地震
- 2023年5月上旬:トカラ近海で中規模の群発 → 5月中旬、千葉県東方沖でM5クラスの地震
こうした事例を見ると、「関係あるのでは…?」と思ってしまうのも無理はありません。ただし、同じ期間に日本の他の地域で地震がまったく起きなかったケースもあるため、すべてが連動しているわけではない点には注意が必要です。
デマと真実の境界線
「トカラの法則」は、多くの人にとって“防災のアンテナ”として役立っている一方で、過剰な不安をあおるデマの温床にもなりかねません。たとえば、SNSでは「トカラが揺れたから南海トラフが来る!」といった極端な投稿が拡散されることがありますが、現時点でそのような明確な因果関係は確認されていません。
また、「トカラの法則」を悪用した“予言ビジネス”や、不安をあおるYouTube動画が問題視されることもあります。情報の受け手としては、冷静に事実と推測を見極める力が求められます。
トカラ列島の地震が何かのサインである可能性は否定できませんが、それを「法則」と断定して恐怖をあおるのではなく、正しい知識のもとで防災意識を高める一つのきっかけとすることが大切です。
まとめ
「トカラの法則」は、正式な地震予知ではなく、トカラ列島の地震と日本各地の地震との“なんとなくのつながり”を示す経験則にすぎません。しかし、こうした法則が多くの人々に注目されるのは、地震という目に見えない災害に対する不安の裏返しとも言えるでしょう。
実際に、トカラ列島で群発地震が起きたあとに本州でも揺れが観測された事例があるのは事実です。ただし、その因果関係については科学的な裏付けはなく、偶然と重なりが生んだ“法則っぽさ”というのが現実に近いかもしれません。
とはいえ、トカラ列島が地震の多発地帯であることは間違いなく、その動きに注目することが無意味だとは言い切れません。大切なのは、「トカラが揺れたから絶対に地震が来る!」と決めつけて恐れるのではなく、もしものときに備えて日ごろから防災意識を高めておくことです。
“法則”に頼るのではなく、正しい知識と冷静な判断で、自然災害と向き合っていきたいですね。
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