2025年10月4日に放送されたTBSの特番『オールスター後夜祭’25秋』で、女優・広末涼子さんに関するクイズが放送され、大きな波紋を呼びました。
番組では「時速165キロを出したことがないのは?」という設問が出題され、広末さんの名前が実名で登場。笑いを誘う演出として放送されましたが、この内容に対し、所属事務所は「極めて不適切」として正式に抗議。
10月6日付でTBSに内容証明郵便を送付したことを明らかにしました。
SNS上では「当然の抗議」「笑いにしていい話じゃない」という声が相次ぐ一方、「過剰反応では?」とする意見もあり、世論は二分。
今回の一件は、テレビの“笑い”と人権の境界線を改めて問う出来事となっています。
はじめに
広末涼子さんをめぐる騒動の経緯
2025年10月4日に放送されたTBSの特番「オールスター後夜祭’25秋」で、女優・広末涼子さんの名前がクイズの選択肢として登場しました。
その設問は「時速165キロを出したことがないのは?」というもの。
番組内では出演者の一人が「広末さんは事故のとき時速165キロ出していたと報じられています」と発言し、会場の笑いを誘う形で放送されました。
しかしこの発言は、正式な警察発表に基づくものではなく、事故自体も現在捜査中の段階。
視聴者の中には「捜査中の事件を笑いにするのはおかしい」「本人の名誉を傷つける」と感じた人も多く、SNSで批判が広がりました。
放送直後から事務所への問い合わせが相次ぎ、数日後には事務所が正式に声明を発表する事態となりました。
番組放送後に広がった波紋と注目点
放送後、X(旧Twitter)では「#広末涼子」「#オールスター後夜祭」などの関連ワードがトレンド入り。
「笑ってはいけない内容をネタにしている」「番組の企画として度が過ぎている」といった意見が目立ちました。
中には、バラエティ番組としての自由を擁護する声もありましたが、全体としては「笑いと報道の境界を越えた」という認識が強まっています。
広末さんの所属事務所は10月6日付でTBSに内容証明を送付し、「名誉回復措置と再発防止を求める」と正式抗議を表明しました。
TBS側も9日に謝罪文を掲載し、「不適切だった」と認める形で対応。
今回の一件は、芸能報道とバラエティの扱い方に一石を投じる出来事となり、今後のメディア倫理の在り方に注目が集まっています。
1.問題となった放送内容と事務所の声明
爆笑したw
— 増井 (@miraclemasui) October 9, 2025
広末涼子の所属事務所 TBS「オールスター後夜祭」に抗議「極めて不適切」「名誉を著しく毀損する」(スポニチアネックス)#Yahooニュースhttps://t.co/2iG7uaiu31 pic.twitter.com/9CsSIeehEx
クイズで取り上げられた不適切な設問
問題の発端となったのは、番組中に出題されたクイズ「時速165キロを出したことがないのは?」という設問でした。
選択肢には大谷翔平選手や佐々木朗希投手など実在の野球選手と並び、なぜか広末涼子さんの名前が含まれていました。
さらに、出演者の一人が「広末さんは事故の際に時速165キロ出していたと報じられています」と発言。
これが笑いを誘う形で編集・放送されたことで、多くの視聴者から「いじりの範囲を超えている」との声が相次ぎました。
本来、この番組はバラエティ色の強いクイズ番組として人気を博してきましたが、今回は“進行中の事件”を冗談交じりに扱った点で大きく批判を受けています。
SNS上でも「番組スタッフが確認しなかったのか」「笑いのネタにしていい話ではない」といったコメントが急増し、放送直後から炎上状態となりました。
事務所が指摘した名誉毀損の懸念
広末さんの所属事務所は、公式サイトで「この発言の根拠は公的機関の発表によるものではなく、現在も警察の捜査が継続中」と説明。
つまり、番組での発言は事実確認が不十分であり、本人や関係者の名誉を著しく傷つけるものだとしています。
特に問題視されたのは、「本人が時速165キロを出していた」という言い回しが、あたかも確定的な事実のように伝わった点です。
事務所は「本人が関わる事件を笑いの題材として扱うことは、報道・放送に携わる者として極めて不適切」と強調し、タレントの人格権を侵害する行為だと厳しく非難しました。
内容証明送付に至った背景
事務所は10月6日付で、TBSテレビに正式な抗議と名誉回復措置を求める内容証明郵便を送付しました。
内容証明とは、相手に送った文書の内容と送付日時を郵便局が証明するもので、法的な抗議・請求の意思表示として使われます。
これにより、単なる意見表明ではなく「公式な法的対応の段階に入った」ことが明確になりました。
今回の抗議は、タレントを守るだけでなく、今後のメディア全体に対する警鐘の意味合いも含まれています。
事務所側は「表現の自由は尊重されるべきだが、他者の尊厳や人権を侵害する表現が許されるものではない」とコメント。
この文面からも、単なる誤解や軽率な演出では済まされない、報道倫理の根本を問う意識がうかがえます。
2.TBS側の謝罪と対応
公式サイトでの謝罪文と経緯説明
抗議を受けたTBSは、10月9日に公式サイト上で謝罪文を掲載しました。
声明では「現在捜査中の事件をクイズの題材として扱ったことは不適切でした」と認め、「広末涼子さんおよび関係者の皆さまに深くお詫び申し上げます」との一文を添えています。
この対応は放送からわずか数日後であり、迅速な反応として評価する声もある一方、「最初から確認体制が整っていれば起きなかった」と制作過程の問題を指摘する声も上がりました。
TBSによると、このクイズコーナーは外部の制作会社が構成を担当しており、放送前のチェック段階で「本人名を出すことのリスク」が十分に検討されなかった可能性があると説明。
いわゆる“バラエティの勢い”が優先され、放送倫理の観点が後回しにされたことが、今回の事態を招いた要因の一つと見られています。
放送局としての再発防止策
TBSは声明の中で、「今後は制作過程における倫理確認の徹底と、事実関係に関するチェック体制の強化を行う」と発表しました。
特に、芸能人や公的事件を扱う際には、放送前に複数の部署で内容確認を行う仕組みを導入する方針を示しています。
過去にもTBSでは、バラエティ番組の演出やテロップに関して批判を受けたことがあり、社内では放送倫理の研修を強化してきました。
それでも今回のようなケースが起きた背景には、視聴率重視の風潮や、SNS時代の「話題性を狙う番組作り」が影響しているとみられています。
社内関係者からは「1つの発言や設問が瞬時に拡散される時代。笑いのためにリスクを取る時代ではない」との声も聞かれています。
番組制作現場への影響
今回の抗議と謝罪は、TBSだけでなくテレビ業界全体に波紋を広げています。
複数の制作会社では「今後、実在の人物や進行中の事件を題材にする企画は見直す必要がある」との判断が広がり、特に深夜帯バラエティの自由な演出に制限がかかる可能性も指摘されています。
一方で、出演者側からは「現場の空気で生まれた一瞬のやり取りが問題になるのは怖い」という戸惑いの声もあります。
笑いと倫理のバランスをどこで取るか──。TBSの対応は、今後のバラエティ制作の“境界線”を見直す試金石となりそうです。
3.SNSの反応と世論の分岐
擁護派:「当然の抗議」「笑いにするな」
擁護する声では、まず“人としての配慮”を求める意見が多く見られました。
「捜査中の出来事をクイズのネタにするのは本人も家族も傷つく」「笑いにしていい話ではない」といった投稿が拡散。
保護者層からは「子どもが番組を見て『これは面白いことなの?』と聞いてきて困った」という具体的なエピソードも共有されました。
また、番組作りの姿勢に疑問を投げかける声も目立ちます。
「事実関係が確定していないのに名前と写真を使うのは危険」「“勢い”で通した企画を通すチェック体制に問題がある」と、制作フローの見直しを求める意見が続きました。
スポンサーへの影響を懸念する投稿(「企業は“笑いのために人権を軽視する番組”に広告を出したくないはず」)も少なくありません。
批判派:「過剰反応」「冗談として受け流せ」
一方で、「深夜バラエティの空気をわかっていない」「冗談に目くじらを立てすぎ」という反応も一定数あります。
具体的には「実名を出すのは確かに良くないが、社会全体が過敏になりすぎている」「これでは番組から鋭さが消える」と、表現の幅が狭まることを心配する声です。
中には「名前を伏せたり、比喩にすれば良かったのでは」という“演出を調整して笑いを残す”代替案を示す意見もありました。
ただし、リプライでは「捜査中で確定していない情報を“笑い”にするのは質が違う」と反論されるケースが多く、議論は平行線をたどっています。
中立派:「報道倫理としての議論を」
中立的な立場からは、感情論ではなく「線引き」を丁寧に決めるべきだという提案が目立ちます。
たとえば、メディア関係者や法に詳しいユーザーからは、次のような具体案が挙がりました。
- ガイドライン化:実名・顔写真・進行中案件の扱いに関する“NG基準”を番組横断で作る。
- 段階的チェック:台本の段階で事実確認シートを回し、実名・事件要素を含む箇所は法務・編集・広報が再確認する。
- 代替表現テンプレ:実名を避ける、フィクション化する、テロップで「事実未確定」を明示する等、現場で使える言い換え集を用意する。
また、視聴者側にも「笑いの視点を持ちながら、他者の尊厳を守る」という見方が育つとよい、という“受け手の教養”に関する指摘もありました。
全体としては、「表現の自由」を守りつつ「名誉や人権を傷つけない」ために、番組と視聴者が共有できるルール作りを求める声が強まっています。
まとめ
今回の出来事は「笑い」と「人の尊厳」の線引きを社会全体で考え直すきっかけになりました。
発端はクイズの一問でしたが、本人の名誉や家族の気持ち、そして進行中の捜査という現実を軽んじたことが大きな反発を呼びました。
事務所は内容証明で正式抗議、TBSは謝罪と再発防止の方針を示し、制作現場では“勢い優先”の進行にブレーキをかける必要性が共有されつつあります。
SNSでは「当然の抗議」「笑いにするな」という声が多数派でしたが、「過剰反応」とみる意見も一定数存在しました。
中立的な立場からは、実名や進行中案件を扱う際のガイドライン化、放送前の多段階チェック、実名回避やテロップ明示など代替表現テンプレの整備といった、実務的な解決策が提案されています。
たとえば「実名+写真+捜査中」の三点セットは使わない、事件・事故は比喩やフィクションに置き換える、事実未確定はテロップで明示する――といった具体策です。
今後の注目点は3つです。①事務所側がBPOへ申し立てを行うか、②TBSがどこまで再発防止策を具体化・公開するか、③スポンサーや視聴者の反応が番組作りの基準をどう押し上げるか。
表現の自由は守りつつも、当事者の尊厳を傷つけない“安全柵”をどう設けるかが問われています。私たち視聴者も、笑いを楽しみながら他者の立場を想像する姿勢を持つことで、より健全なメディア環境に近づけるはずです。
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