スロースリップが早まると地震が起きる?日向灘地震と南海トラフの関連性

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「スロースリップ」という言葉、最近ニュースなどでよく耳にしませんか?

これは、地震のような大きな揺れではないものの、プレートの境界がゆっくりずれ動く現象のこと。

特に2024年8月に発生した日向灘地震の前には、このスロースリップの間隔が大きく変化していたことが観測され、今では「大地震の前兆かもしれない」と注目が集まっています。

この記事では、スロースリップとは何か、地震との関係性、そして将来の南海トラフ地震への影響についてお伝えします。

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目次

はじめに

スロースリップ現象とは何か?

地震といえば「突然ドンと揺れるもの」と思っている方が多いかもしれません。

しかし、実はプレートの境界では、目に見えないほどゆっくりとした「地滑り」のような動きが起きていることがあります。これが「スロースリップ」と呼ばれる現象です。

スロースリップは、ふつうの地震のように一気にエネルギーを解放するのではなく、数日から数ヶ月かけてじわじわと地面が動いていきます。

人間にはほとんど感じられませんが、衛星測位システムや地殻変動の観測機器を使って、その動きをしっかりと捉えることができます。

たとえば、日向灘ではプレートが年間4〜6センチの速さで沈み込んでおり、その影響で20〜30年おきに大きな地震が起きています。

この地域の深さ40キロほどの場所にあるプレートの境界では、スロースリップが周期的に観測されているのです。

なぜ今「地震の前兆」として注目されているのか?

2024年8月に発生した日向灘地震(M7.1)は、これまでのスロースリップにまつわる研究に大きな意味をもたらしました。

国土地理院の観測によって、この地震の前にスロースリップの発生間隔がそれまでの約2年から約1年に短縮していたことが確認されたのです。

実は、地震直前にはスロースリップが早まることがシミュレーションで予測されていましたが、これが実際の観測で確かめられたのは世界で初めてのこと。

つまり、「スロースリップが早まる=地震の前兆かもしれない」という仮説が、現実のデータで裏づけられたのです。

この発見は、今後の地震予測や警戒体制において大きな一歩になるかもしれません。

プレートの動きに潜む“静かなシグナル”に注目することが、巨大地震への備えにつながるかもしれない…そんな期待が高まっているのです。

1.スロースリップの基礎知識

通常の地震との違いとは?

私たちがよく知っている「地震」は、プレートの動きによって地下にたまったエネルギーが一気に放出されることで、地面が急激に揺れる現象です。

これに対してスロースリップは、プレートの境界がゆっくりとすべるように動いていく現象で、エネルギーの解放が非常に時間をかけて行われるという特徴があります。

たとえば、通常の地震は数秒から十数秒で大きなエネルギーを放出しますが、スロースリップは数週間から数ヶ月という長い時間をかけて進行します。

そのため人間の感覚では揺れとしては感じにくく、「静かな地震」とも呼ばれることがあります。

この違いはとても重要で、スロースリップは一見すると「何も起きていない」ように思えても、実際には地下でプレートがすべってエネルギーを調整しているサインかもしれないのです。

どこで発生しているのか?

スロースリップは、世界中のプレート境界の深い場所で確認されています。

特に日本のように複数のプレートがぶつかり合う地域では、観測される頻度も高くなっています。

日向灘をはじめ、四国沖や紀伊半島沖、さらには北海道の太平洋側など、日本各地でスロースリップが記録されています。

これらの地域では、プレートが年間数センチのペースで沈み込みながら、地下深くでゆっくりとした滑りが繰り返されているのです。

また、世界的にもニュージーランドやカナダのバンクーバー島周辺など、プレートの沈み込み帯に位置する場所で観測例があります。

つまり、スロースリップは決して珍しい現象ではなく、プレートが動いている場所でごく自然に起きている現象だと言えます。

観測技術の進化と発見の歴史

スロースリップという現象が本格的に注目されるようになったのは、1990年代以降です。

これは、高精度のGPS観測網が整備されたことによって、地面のわずかな動きをミリ単位で捉えることができるようになったためです。

たとえば、地表のある地点がほんの数ミリ動くような現象は、人間にはまったく気づけません。

しかし、地殻変動を高精度で測定するシステムが整ってきたことで、スロースリップのような微細な動きも明確に記録できるようになったのです。

2011年の東日本大震災の際には、本震の2日前に発生した前震の後、スロースリップが起きていたことが確認され、本震の引き金になったのではないかと指摘されました。

このように、観測技術の進歩は、スロースリップと大地震の関係を探る重要なカギとなっています。

2.日向灘でのスロースリップと地震の関係

日向灘地域の地震活動の特徴

日向灘は、九州と四国の間に位置する海域で、フィリピン海プレートが日本列島側のプレートの下に年間4〜6センチの速さで沈み込んでいる場所です。

このようなプレートの動きは、日本の中でも特に活発な地震活動を引き起こす原因となっています。

実際にこの地域では、マグニチュード7クラスの地震が約20〜30年ごとに発生しており、過去にも大きな揺れに見舞われてきました。

たとえば、2024年8月にはM7.1の地震が発生し、多くの人々がその揺れを体感しました。

このような地震の背景には、地下で長い時間をかけてエネルギーがたまり、あるとき一気に解放されるという仕組みがあります。

そして、その“たまり具合”を示すヒントとなるのが、スロースリップのようなゆっくりとした動きなのです。

国土地理院の観測データと変化の兆候

国土地理院は、日本全国に高精度の観測網を設置しており、日向灘の地下でもスロースリップの動きを長年記録してきました。

これまでのデータによれば、この地域ではスロースリップが約2年おきに発生し、それぞれの期間が約1年間続いていました。

しかし注目すべきは、2023年11月に観測されたスロースリップの動きです。

前回からわずか1年しか空いていなかったにもかかわらず、再びスロースリップが始まりました。そして、その約9か月後に、実際にM7.1の地震が発生したのです。

この「間隔の短縮」は、これまでのスロースリップのパターンとは大きく異なるもので、研究者の間でも注目されています。

なぜなら、シミュレーションでは「地震の直前にスロースリップの間隔が短くなる」という予測がなされていたからです。

発生間隔が半減した意味とは?

スロースリップの間隔が短くなるというのは、言い換えれば「プレートの境界がゆるみ始めている」可能性を示しています。

つまり、これまでがっちりとくっついていたプレートの境目が少しずつずれやすくなり、いつ大きく動いてもおかしくない状態になっている、ということです。

実際に、日向灘で観測されたスロースリップは、前回と比べてほぼ半分のスパンで再発しました。

これは、プレート境界の「固着力(くっつく力)」が弱まっている兆候と考えられ、次に起きる大きな地震の“予告サイン”である可能性があるのです。

このような兆候が観測データとしてはっきり表れたのは世界でも初めてのことで、2024年の発表は地震予測の分野において大きな前進となりました。

これからは、他の地域でも同じような傾向が見られないか、継続的な観測が求められています。

3.大地震のシグナルとしての可能性

シミュレーションと観測の一致

これまでの地震研究では、スロースリップと大きな地震との関係性について、主にシミュレーションでしか説明されていませんでした。

例えば、地震発生前にプレート境界の固着が緩むと、隣接するエリアでスロースリップの間隔が短くなるというモデルは以前から提案されていたものの、それが実際のデータと合致した例はありませんでした。

ところが、2024年の日向灘地震では、こうしたシミュレーション通りの現象が実際に起こり、観測によって裏づけられました。

国土地理院が記録したデータによれば、2023年11月から始まったスロースリップは、前回と比べて約半分の間隔で発生しており、それから約9か月後にM7.1の地震が発生。

この流れは、理論的に予測されていた「地震の前兆」とぴったり重なります。

この“理論と現実の一致”は、地震予測の信頼性を高めるだけでなく、今後の防災においても大きな意味を持つ可能性があるのです。

固着の弱まりと地震リスクの関連性

地震が起きる場所では、プレート同士が強くくっついている「固着域」があります。

この部分がなかなか動かずにエネルギーをため込み、ある時限界を迎えてズレることで、強い揺れが発生します。

ところが、その固着が少しずつ弱まってくると、周囲ではプレートがずれやすくなり、ゆっくりとしたスロースリップが発生するようになります。

これは、まるでゴムを引っ張っていた手が少しゆるんだような状態です。一見エネルギーが解放されているようでいて、実は「本番」のための準備が着々と進んでいるのかもしれません。

このように、スロースリップの発生間隔が短くなるという現象は、「もうすぐ大きな揺れが来るかもしれない」というサインである可能性があります。

現時点ではまだ確定的ではありませんが、日向灘での事例は、そうした仮説を強く支持する結果となりました。

南海トラフ巨大地震への影響

多くの専門家が注目しているのが、スロースリップと「南海トラフ巨大地震」との関係です。

南海トラフでは、100〜150年に一度、M8〜9クラスの大地震が発生すると言われており、次に起きれば日本全体に深刻な被害をもたらすことが予測されています。

日向灘はその南海トラフの一部であり、今回スロースリップが早まった地域と、南海トラフ地震の震源域はほぼ地続きです。

つまり、日向灘で見られた変化は、将来的な南海トラフ地震の「前触れ」である可能性もあるのです。

もちろん、スロースリップが発生したからといって、すぐに大地震が起きるとは限りません。

ただし、「スロースリップが急に早くなった」という事実は、少なくとも地下で何か異変が起きている兆候として、慎重に受け止めるべきサインだといえるでしょう。

こうした観測を積み重ねることで、将来の大地震の予測精度を高め、社会全体の備えに役立てていくことが求められています。

まとめ

スロースリップという一見地味な現象が、実は大地震の“前触れ”である可能性がある――。この事実が観測データとシミュレーションの両面から示されたことは、地震予測の世界にとって大きな進歩です。

特に2024年8月に発生した日向灘地震では、その9か月前からスロースリップの間隔が明らかに短くなっていたことが記録されており、これは「いつか来る」とされている南海トラフ巨大地震に備える上で、見逃せないサインとなっています。

私たちができるのは、こうした静かな地殻変動にも注意を払い、備えを怠らないこと。

ハザードマップの確認、防災グッズの準備、家族との連絡手段の確認など、小さなことから始めることが大切です。

「揺れていない今こそ、防災を考えるとき」――静かに進むスロースリップが、そう私たちに教えてくれているのかもしれません。

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