2025年7月の参議院選挙で、参政党が前回の1議席から一気に15議席へと大躍進を遂げました。
「日本人ファースト」という直球のスローガンが多くの有権者の心に刺さった一方で、外国人政策やスパイ防止法案をめぐっては賛否が分かれ、選挙後には一部支持者から戸惑いの声も……。
この記事では、政治の専門家ではない“ごく普通の市民”である私が、参政党躍進の背景や課題について、生活者目線でわかりやすくまとめました。
今の政治にモヤモヤしている方にこそ、読んでいただきたい内容です。
はじめに
参政党が参院選で躍進、注目される背景
2025年7月20日の参議院選挙で、参政党は驚くべき成果を収めました。
前回1議席だった同党は、今回14議席を獲得し、非改選の1議席を含めると合計15議席に。これは、単独で法案を提出できる「11議席以上」のハードルを大きく超える結果です。
神谷宗幣代表を中心に街頭演説やSNSを駆使して訴えたのは、既存政党に対する不満や不信への代弁。特に、若者や子育て世代など「声が届きにくい」と感じていた層の共感を呼びました。
象徴的な場面のひとつが、選挙戦最終日に東京・芝公園で行われたマイク納め集会です。
東京選挙区で当選した新人の「さや氏」は、「私を皆さんのお母さんにしてください!」と涙ながらに訴え、熱狂的な拍手を浴びました。
このような“感情に訴えるスタイル”も、従来の政治演説との差別化を図る戦略だったといえるでしょう。
外国人政策や物価対策が争点となった2025年参院選
今回の選挙では、多くの有権者が「物価高」と「外国人政策」を重要なテーマとして捉えていました。
野党各党が「減税」や「所得補償」などを訴えるなか、参政党は「日本人ファースト」を掲げ、過度な外国人受け入れに反対する姿勢を明確にしました。
具体的には、神奈川選挙区で当選した初鹿野裕樹氏が「外国人留学生は一人1000万円もらえる」と発言し、SNSで拡散され大きな話題に。
これは、実際には文科省の「SPRING」制度による支援で、対象に国籍は問われていないものの、「外国人が優遇されている」と感じる人々の不満と直結しました。
こうした「生活の実感に寄り添った主張」が、結果として参政党の得票を押し上げる要因になったといえます。
特に、朝日新聞の調査では、「外国人政策を最重要視する有権者」のうち44%が参政党を支持していたという結果も出ています。
1.参政党が急成長した理由とは

「日本人ファースト」のスローガンが刺さった理由
参政党の急成長を語る上で欠かせないのが、「日本人ファースト」というキャッチコピーの存在です。
この言葉は、複雑な政策よりも直感的にわかりやすく、「今の日本に足りないものは何か?」という疑問にシンプルに答えるものでした。
特に、地方に住む高齢者や、子育て・教育費に悩む中間層からは、「自分たちの生活を後回しにされている」という不満が強く、このスローガンがその思いにぴったり重なったのです。
たとえば、SNS上では「外国人ばかりが手厚く支援されて、日本人は自己責任で片づけられている」といった声が目立ちました。
そうした日常の“ちょっとした疑問”や“モヤモヤ”に、参政党は言葉を与えたと言えるでしょう。
SNSと街頭演説で訴えた“リアルな不満”
選挙戦での戦術も、参政党の成長を支えました。
候補者たちはSNSを積極的に活用し、自身の街頭演説や現場の反応を日々発信。X(旧Twitter)やTikTokでは、感情的なスピーチや涙ながらの訴えが何度も拡散され、「心に響いた」「うちの母も泣いていた」といった共感のコメントが相次ぎました。
特に印象的だったのが、前述のさや氏の「お母さん発言」。
これは政策ではなく情緒に訴えるものでしたが、「自分の生活を代弁してくれる存在」として、強い親近感を生み出しました。
大きな組織や資金に頼らず、素朴で泥臭いメッセージを発信し続けた点が、多くの支持を集める要因となったのです。
終盤情勢調査に見る有権者の変化
実際に、選挙終盤での世論調査は参政党への関心の高まりを裏づけていました。
朝日新聞が15日に発表した情勢調査では、「外国人政策を最重視する」と回答した有権者のうち、実に44%が比例区で参政党を選ぶと答えていました。
この数字は、他の野党や与党を上回る勢いであり、特定の争点における圧倒的な支持を物語っています。
また、都市部に限らず地方でも「話を聞きに来てくれる政党」として支持が広がりました。
大規模なメディア露出がなくとも、草の根的な活動とSNSの連携が、結果的に「自分ごと」として政治をとらえる層を広げたと考えられます。
2.外国人政策をめぐる賛否と混乱
初鹿野氏・さや氏の発言が与えたインパクト
参政党の候補者たちは、外国人政策をめぐる問題提起を積極的に行いました。
なかでも注目を集めたのが、神奈川選挙区で当選した元警察官の初鹿野裕樹氏の街頭演説です。彼は「外国人留学生は1人1000万円もらえる」と発言し、その動画をXに投稿。瞬く間に拡散され、共感と疑問の声が入り混じりました。
また、東京選挙区から立候補し当選したさや氏も、「奨学金を背負って社会に放り出される日本人学生に対し、外国人留学生には年間290万円、月額18万円が支給されている」と演説で訴えました。
これらの発言は、特に若年層の日本人や子育て中の保護者の感情を揺さぶるものであり、「自分たちがないがしろにされている」と感じていた層の支持を引き寄せる大きなきっかけとなりました。
SPRING制度をめぐる誤解と事実
しかし、こうした訴えの背景には、制度に対する誤解も存在していました。
初鹿野氏やさや氏が批判の対象としたのは、文部科学省の「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」です。この制度は博士課程後期の学生を対象に、研究費や生活費の支援として年間最大290万円を給付するもので、支給対象には国籍の制限はありません。
実際、2024年度の受給者は日本人が6,439人、外国人留学生が4,125人。金額も1人あたり年間290万円が上限で、「1000万円」という数字には誤解があります。
発言内容が制度の実態とずれていたことで、一部メディアや専門家から「事実に基づかない印象操作ではないか」という指摘も出ました。
ただし、有権者の立場からすると、制度の細かな条件よりも、「なぜ日本人学生が奨学金で苦しむ一方、留学生には手厚い支援があるのか?」という感覚の方が強く、政治的な訴求力はそこにありました。
神谷代表の発言と“梯子を外された”支持者たち
選挙後の会見で、神谷宗幣代表は「制度上の外国人特権はない」と明言しました。
この発言は、一部の支持者にとっては戸惑いを呼ぶものでした。
SNSでは《じゃあ選挙中の外国人優遇許すな!の掛け声は何だったの?》《梯子を外された気分》といったコメントが相次ぎ、「選挙中の訴えと温度差がある」との不満が噴出しました。
実際、候補者たちが街頭演説で掲げていた主張は、「制度の改善」というよりも、「外国人ばかりが優遇されている」と感じる人々の怒りや不満に寄り添うものでした。
それが選挙後に“冷静な説明”に切り替わったことで、感情の熱量にギャップが生じたともいえます。
このように、外国人政策は参政党にとって支持を集める武器であると同時に、選挙後の“説明責任”や“整合性”が問われる課題ともなっています。
3.「スパイ防止法案」をめぐる議論
神谷代表が掲げる法案の中身とは
選挙後、神谷宗幣代表が最初に掲げた政策のひとつが「スパイ防止法案」でした。
7月20日の読売テレビの特番に出演した神谷氏は、「世界中にある当たり前の法律が日本にはない。外国のスパイ活動を防ぐ法律を作りたい」と発言。
さらに、感染症対策の見直しと並んで「最優先で提出したい法案」だと強調しました。
このスパイ防止法案は、主に外国勢力による情報収集活動や国家機密の漏えいを防止することを目的としたものですが、具体的な法案の骨子はまだ提示されていません。
それでも、これまで国会でたびたび見送られてきた経緯がある中で、参政党がこの議題を再び前面に押し出したことに、多くの関心が寄せられています。
なお、参政党の女性議員が過去にロシア国営メディア「スプートニク」に出演していた経歴も話題になり、ネット上では「対外的な姿勢をどこまで厳格に保てるのか」という声も聞かれました。
支持層の反応とネット上の熱量
神谷氏の発言直後から、ネット上では「スパイ防止法」がトレンド入りするほど大きな反響がありました。
X(旧Twitter)では、「日本はスパイ天国だ」「早く成立させるべき」といった賛同の声が相次ぎました。
特に、近年中国やロシアといった近隣諸国の動向に警戒感を抱く層からは、「安全保障上、もはや待ったなし」との声も。
一方で、「この法案は本当に必要なのか?」と疑問を呈する声も存在します。
過去に似た趣旨の法案が検討された際、「適用対象が曖昧で、内部告発者まで処罰の対象になるのでは」といった懸念が示されたこともあり、法案内容次第では国民の間に分断を生む可能性もあります。
言論の自由・人権とのバランス問題
スパイ防止法案をめぐって、最もセンシティブなのが「表現の自由や報道の自由」との兼ね合いです。
もし法の範囲が広すぎれば、ジャーナリストの取材活動や市民による政府批判すら「スパイ行為」と見なされる恐れが出てきます。
ネット上でも、「どこまでを情報漏えいとするのかが不明確」「政権批判が弾圧される口実にされかねない」といった懸念が広がっています。
さらに、「反対するやつはスパイだ」などの過激な投稿も散見され、賛成・反対どちらの立場にも過熱する感情が入り混じっている状況です。
スパイ防止法が必要だとする意見が一定の説得力を持つ一方で、法律がもたらす副作用についても冷静な議論が求められており、参政党の今後の説明と対応が大きな注目を集めています。
まとめ
今回の参議院選挙で躍進を遂げた参政党は、「日本人ファースト」を掲げ、物価高や外国人政策といった現実的な課題に“生活者目線”で切り込んだことで、多くの有権者の共感を得ました。
SNSでの訴えや感情に寄り添った街頭演説は、既存政党に不信を抱いていた層の心をつかんだと言えるでしょう。
一方で、外国人政策をめぐる発言の一部には誤解を招く表現があり、選挙後の説明と支持者の期待との間にギャップも生まれました。
スパイ防止法案に関しても、安全保障と人権のバランスという難題が浮き彫りになり、単なる賛否を超えた冷静な議論が求められています。
参政党の今後の課題は、「感情に訴える力強さ」と「現実的で一貫した政策説明」の両立です。
支持を一過性のものにせず、信頼ある政治勢力として根を下ろすには、主張の整合性と責任ある発信が試される局面に入ったといえるでしょう。
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