佐藤浩市さん主演のドラマ『ロイヤルファミリー』で登場する“山王耕造”というキャラクター。
派手な赤いスーツに強烈な存在感を放つ姿から、「実在の馬主・関口房朗がモデルでは?」という声がSNS上で広がっています。
しかし、実際にはこの人物像は単一のモデルではなく、複数の実在人物の要素を融合させたフィクションと見られます。
本記事では、原作者・早見和真氏の発言や佐藤浩市さんのコメントをもとに、競馬界の実在オーナー像をもとに「モデルとされた人物像」を詳しく解説します。
1.山王耕造とはどんな人物か

物語の中心人物である山王耕造は、「成り上がり実業家にして名馬主」という設定。
一見すると金と名誉を追い求める派手な人物ですが、物語が進むにつれ“馬への愛情”や“血統への敬意”を見せ、次第に人間味を増していきます。
この「成金のようでいて、最後には純粋な情熱で動く男」という二面性が、モデル論の焦点となっています。
2.原作者・早見和真氏のコメント:「モデルはいない」

原作者の早見和真氏は、競馬メディア『netkeiba』のインタビューでこう語っています。
「モデルとなった人物はいるんですか?──いません。オーナーでいうと、10人ほどの馬主の方々にお話を伺い、その中で感じた“馬への純粋な思い”を描いたつもりです。」
(出典:netkeibaインタビュー)
つまり、特定の馬主を直接モデルにしたわけではなく、複数の人物像を取材して構成した“集合的キャラクター”であることがわかります。
3.「関口房朗モデル説」が広まった理由
それでも、視聴者の多くが「関口房朗では?」と感じたのは、明確な“ビジュアルの連想”によるものです。
●赤いスーツのインパクト

ドラマ序盤で山王耕造が登場する際、赤(オレンジ系)のスーツを着た派手な姿が印象的でした。
赤は権力やエネルギーの象徴であり、「自信と誇示」の記号でもあります。
衣装デザイナーが“登場した瞬間に観客の目を奪う色”として選んだと見られ、視覚的に「成金」「豪快」「自己主張」といった要素を強調する狙いがあったと考えられます。
●関口房朗氏との既視感

関口房朗氏は、かつて「フサイチペガサス」「フサイチコンコルド」などで知られる実業家馬主。
フェラーリで競馬場入りする、豪快な発言をするなど、派手で存在感のあるキャラクターとして有名です。
このため、
「派手なスーツ」「豪放な口調」「成り上がり実業家」
といった描写が視聴者に“関口像”を想起させたのです。
4.実はもう一人の影響者──松本好雄オーナー

一方で、原作者・早見和真氏はX(旧Twitter)でこうも語っています。
「勝手に〇〇さんがモデルと噂される山王耕造の、ある一点において強烈に松本オーナーが反映されています。」
この「松本オーナー」とは、“メイショウ”の冠名で知られる名馬主・松本好雄氏のこと。
松本氏は“派手さ”とは正反対の人物ですが、馬主としての理念が山王の後半像に重なります。
●松本オーナーの理念
- 「馬主は命を預かる仕事。名誉や金ではなく“夢”を託す存在である」
- 「大物ほど、馬への愛情が純粋になっていく」
この考え方が、ドラマ終盤で山王が“馬の命と向き合う人間”へと変化していく姿と一致しています。
つまり、外見は関口房朗、内面の成長は松本好雄という二重構造が見えてくるのです。
5.佐藤浩市さんが語る「山王耕造」という人物
主演の佐藤浩市さんは、雑誌『Number PREMIER』のインタビューで次のように語っています。
「山王耕造。これが今回の役名です。名は体を表すがごとく、僕らが生きてきた昭和の価値観のなかで生きてきた男です。
ある種の尊大さがあって、昔気質。今の時代、そうしたタイプの人間は迷惑がられ、時代に即していないと見なすこともできるでしょう。
それでもひじょうに情熱がある男です。演じていくなかで、みなさんにとって魅力ある瞬間が生まれるようにしたいと思っています。」
(出典:Number PREMIER)
このコメントから分かるのは、佐藤さん自身が山王を“昭和の矜持を持つ男”として捉えながら、現代的な脆さや情熱も併せ持つ存在として演じているということ。
単なる「成金キャラ」ではなく、時代に取り残されながらも情熱を失わない男としてのリアリティを求めています。
また、撮影現場では馬との距離感づくりにも積極的に関わり、プロデューサーが
「機嫌の悪い馬に自ら近づいて慣らしていた」
と語るほど。役の“馬主としての風格”を、実際の体験を通して体現しようとしていたことがうかがえます。
6.「山王耕造」は“複合モデル”としてのリアリティ
要素 | 元になった人物・特徴 | ドラマでの反映 |
---|---|---|
成り上がり実業家の派手さ | 関口房朗 | 赤いスーツ、豪放な言動、派手な登場演出 |
馬への純粋な情熱 | 松本好雄 | 後半の内省的描写、馬への敬意、命の尊さへの言及 |
昭和的な矜持と情熱 | 佐藤浩市の役作り | 昔気質だが情熱的な人間としての厚み |
これらの要素が重なり合うことで、山王耕造は単なる“モデル再現”ではなく、
「現実とフィクションの狭間に生きるキャラクター」として完成しています。


7.まとめ:現実とフィクションが交差する“競馬ドラマの象徴”
山王耕造(佐藤浩市)は、
- 外見では関口房朗のような派手さ、
- 内面では松本好雄のような誠実さ、
- そして、佐藤浩市自身の“昭和の情熱と葛藤”
をあわせ持った人物。
原作者・早見和真氏の取材をベースに、実在の馬主たちの精神を凝縮した“複合モデル”と言えるでしょう。
赤いスーツは単なる派手さではなく、「競馬界という舞台で生きる男の象徴」として設計されたビジュアル。
現実のエッセンスを借りながらも、最終的には“フィクションとしての真実”を描いたキャラクター──
それが『ロイヤルファミリー』の山王耕造なのです。
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