アメリカ・アリゾナ州の公園で見つかったのは、なんと鮮やかなピンクの毛をした10歳の老犬。名前は「ルナ」。
目立つ見た目とは裏腹に、ルナには深い背景がありました。
マイクロチップがあってもつながらなかった元の飼い主、そしてそこから始まる新たな運命。
この記事では、ルナのエピソードをたどりながら、「犬を染めること」に対する賛否や、保護犬をめぐる現実についても考えてみたいと思います。
はじめに
公園で見つかったピンクの毛をした老犬「ルナ」
アリゾナ州にあるワデルのホワイトタンク・マウンテン地域公園。その自然豊かな場所で、ひとりで歩いていたのは、なんと鮮やかなピンク色の毛をした老犬でした。
近くに飼い主らしき人はおらず、まるで「どこかの家から迷い出たのでは」と思わせるような落ち着いた佇まい。10歳という年齢もあり、体には疲れのようなものも見られたものの、全体的には丁寧に手入れされた毛並みが印象的でした。
毛はペット専用の染料で染められており、プロのグルーマーが関わっていたと見られます。
道端でよれよれと歩く“野良犬”というよりは、つい最近まで愛されていたペットが、なにかの事情でひとりになってしまったような姿だったのです。
飼い主が見つかるかもしれないという期待
発見されたルナの体には、マイクロチップが埋め込まれていました。これは、現代ではペットと飼い主をつなぐ大事な手がかりです。
動物保護施設のスタッフたちは、すぐに飼い主と再会できるかもしれないと期待し、電話やメール、郵送などあらゆる方法で連絡を試みました。
さらに、ルナの特徴的な毛並みを見たグルーマーが「この子に見覚えがある」と証言。
飼い主の連絡先も伝えてくれたことで、「すぐにでも元の家に帰れるのではないか」と希望が高まりました。しかし、現実はそれほど簡単ではありませんでした──。
1.発見時のルナの様子

ワデルの公園でひとり歩いていた
2024年3月20日、アリゾナ州のワデルにあるホワイトタンク・マウンテン地域公園。地元のハイカーが、ひとりでとぼとぼと歩いている犬を見つけました。
犬は首輪もリードもしておらず、人を警戒する様子もなければ、吠えることもなく、落ち着いた様子で公園内を歩いていたといいます。
発見した人が近づいても逃げることはなく、どこか「誰かを探している」ような雰囲気があったそうです。すぐにマリコパ郡動物管理局に通報が入り、スタッフが現場に駆けつけました。
鮮やかなピンクの毛と整った毛並み
保護された犬は、全身が明るいピンク色に染まっていました。しかもその毛並みは、長いあいだ外で放浪していたような乱れはなく、むしろ丁寧にブラッシングされたかのように整っていたのです。
毛先にはツヤがあり、犬特有の匂いも少なく、清潔感がありました。
このピンク色は決して自然のものではありません。とても目立つカラーリングにもかかわらず、色むらもなく、毛全体に均等に施されていたことから、素人の手によるものではないと推測されました。
プロのグルーマーによる施術の可能性
動物管理局のスタッフによると、ルナの毛色は「ペット専用の染料」によるもので、アレルギーなどの心配が少ないとされる安全な製品である可能性が高いそうです。
また、その染め方は非常に丁寧で、プロのグルーマーが関与していたと見られます。
このような毛染めは、ペットサロンなどで定期的にケアされている犬に見られる特徴です。
つまりルナは、つい最近まで“誰かに大切にされていた”ことを物語っていました。
その姿を見た施設スタッフたちは、「きっとこの子には帰る家がある」「きっと誰かが今も探しているはずだ」と信じ、飼い主探しに希望をつなげていったのです。
2.マイクロチップからの飼い主探し

チップ情報をもとにした連絡の試み
ルナの体にはマイクロチップが埋め込まれており、動物管理局のスタッフはすぐに専用のスキャナーで情報を読み取りました。
マイクロチップには登録された飼い主の名前や電話番号が記録されており、それを手がかりに、スタッフたちは一刻も早く連絡を取ろうとしました。
電話をかけても応答はなく、テキストメッセージや留守番電話を残すも返答なし。
手紙を郵送するという古典的な方法まで試みましたが、やはり返事はありませんでした。
情報が古い可能性もある中、それでも希望を捨てず、スタッフたちは毎日何度も連絡を繰り返したといいます。
グルーマーの証言と飼い主の手がかり
そんな中、ルナの姿を見て「この子を知っている」と話す地元のグルーマーが現れました。
ピンクの毛並みの染め方には見覚えがあり、「うちの店で施術した子に間違いない」と証言。そのグルーマーは飼い主の連絡先も把握しており、すぐに施設に情報を提供してくれました。
この証言は非常に有力な手がかりでしたが、グルーマーから聞いた番号に連絡しても、やはり応答はありません。着信拒否や番号変更の可能性も疑われましたが、どの方法を使っても「つながらない」という結果に終わってしまったのです。
5日間の保留期間中の動きと結果
アリゾナ州の動物保護のルールでは、保護された動物には5日間の保留期間が与えられています。
この間に飼い主が名乗り出れば、正式に返還されることになります。しかし、ルナの場合、どれだけ連絡を試みても返答がありませんでした。
「これだけ丁寧に手入れされていた子なのに、どうして…?」とスタッフたちは不思議がりながらも、保留期間が過ぎた後、ルナを新たな家庭へ迎えてもらう準備に入りました。
施設内ではスタッフ全員がルナに強い愛着を感じており、「彼女には必ず新しい幸せが待っている」と信じて、次の一歩を踏み出したのです。
3.施設での生活と新たな出発

しつけの行き届いたルナの行動
保護施設での生活が始まっても、ルナは驚くほど落ち着いていました。
10歳という年齢からくる穏やかさだけでなく、過去にしっかりしつけられてきたことが随所に感じられたそうです。
例えば、「おすわり」「お手」「ふせ」といった基本的な指示にはすぐに反応し、スタッフの声に耳を傾ける様子はまるで家庭の中にいるような安心感すらありました。
また、ドアの前では勝手に飛び出さず、ちゃんと座って“開けてもらう”のを静かに待つ姿には、スタッフも感心せずにはいられなかったといいます。
環境の変化に戸惑う犬も多い中、ルナには「ケンネルストレス」と呼ばれるような不安行動はまったく見られませんでした。
それどころか、スタッフやボランティアにやさしく寄り添い、まるでみんなの心を癒してくれる存在だったそうです。
動画の制作とネットでの反響
そんなルナの魅力をもっと多くの人に知ってもらおうと、施設のスタッフたちは彼女の紹介動画を制作しました。
動画には、ルナが穏やかにスタッフの手をなめたり、やさしい目でカメラを見つめる様子、そしてピンクの毛が柔らかく揺れる姿などが映し出されていました。
この動画はSNSに投稿されると、瞬く間に多くの人たちの心を打ちました。
「こんなにかわいいシニア犬がいるなんて!」「見た瞬間に泣いてしまった」「ピンクの毛がキュートすぎる」などのコメントが寄せられ、動画は一気に拡散。何千件もの「いいね」がつき、多くのシェアが広がっていったのです。
新しい飼い主との出会いとピンクの靴
そして、運命の出会いが訪れます。動画を見た一人の女性が、ルナに一目惚れしたのです。
その女性は、実際に施設を訪れる際、自身も「鮮やかなピンク色の靴」を履いて現れました。それはルナの毛とまるでおそろいのようで、スタッフたちもそのセンスと愛情に思わず笑顔に。
新しい飼い主となった彼女は、ルナをしっかりと抱きしめ、「あなたがうちに来てくれて本当にうれしい」と涙を流したそうです。こうしてルナは、再び“家庭のぬくもり”を手に入れることができました。
何があってルナがひとりになったのか、その背景はわからないままですが、新しい出発を迎えた彼女の姿は、多くの人に「保護動物にも幸せな未来がある」という希望を届けるものとなりました。
犬の染色はアリ?ナシ?──賛否が分かれる理由とは
ルナの鮮やかなピンク色の毛並みは、多くの人の目を引き、新たな飼い主との運命の出会いにもつながりました。でもその一方で、「犬を染めること」自体に対して、疑問や批判の声も少なくありません。
健康リスクと動物福祉の視点から考える
「ペット用の安全な染料」とはいえ、やっぱり心配になるのは健康への影響です。
犬は自分で選べないからこそ、「本当に染めていいの?」「皮膚に負担がかかっていない?」といった声がSNSやコメント欄に寄せられていました。
中には、皮膚のかぶれやアレルギー、毛づくろいのときに薬剤をなめてしまうことなど、細かい点を気にする飼い主さんも多いようです。
SNS時代の“かわいい”の裏側
近年では「SNS映え」や「個性づくり」といった理由で、犬を派手な色に染めるケースが増えています。でも、その見た目が飼い主の“自己満足”になってしまっていないか?という声もあります。
「本人(犬)の気持ちはどうなるの?」
「おもちゃみたいに扱っているようでイヤだなあ…」
こうした意見もまた、愛情があるからこそ出てくるものなのかもしれません。
染色された犬が注目されやすいことの功罪
今回のルナのように、ピンクの毛がきっかけで里親が見つかるのは素晴らしいこと。
でも逆に言えば、「目立つ子だけが注目される」ようになってしまうと、ほかの保護犬たちが見過ごされる原因にもなりかねません。
「すべての保護動物に平等なチャンスを」──そんな声があることも、忘れてはいけないと感じました。
このセクションを「まとめ」の前に挿入すれば、よりバランスの取れた記事構成になります。ご希望でしたら、既存の全文にこのパートを統合したバージョンもご用意しますか?
まとめ
アリゾナ州の公園でひとり歩いていた、ピンクの毛をした老犬ルナ。彼女の姿は、たまたま通りかかった人によって発見され、そこから多くの人の心を動かす物語が始まりました。
鮮やかな毛色と整った姿からは、過去に大切に育てられてきたことがうかがえましたが、マイクロチップを頼りにした飼い主探しは思うように進まず、結局、誰からも名乗り出ることはありませんでした。
それでも、ルナの穏やかでしつけの行き届いたふるまいは保護施設のスタッフたちを魅了し、やがて紹介動画がネットで拡散。多くの人がその姿に心を寄せ、新たな飼い主との運命的な出会いへとつながりました。
「ルナは誰にも見捨てられていなかった」。そう感じさせてくれる、優しさとつながりに満ちた出来事でした。たとえ今は保護施設にいる動物たちでも、その先には新たな家族との出会いが待っている──ルナの物語は、そんな希望を私たちに教えてくれます。
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