2025年6月、米海兵隊に所属する隊員が不同意性交致傷の罪で有罪となり、懲役7年の判決を受けました。事件そのものの痛ましさもさることながら、私が強く感じたのは、これが「またか」と受け止められてしまうほど、沖縄でこうした事件が繰り返されている現実です。
そして今回、初めて米軍側から県への謝罪が行われました。でもそれで何かが変わるのでしょうか? 沖縄県の対応、住民の声、そして「あなたは悪くない」と立ち上がる人々の姿に、私たちが見つめるべき本質があると思います。
この記事では、一市民としてこの出来事をどう受け止めたか、そして何を感じたのかを、できるだけ丁寧に書いてみました。どうか、最後まで読んでいただけたらうれしいです。
はじめに

沖縄で繰り返される米兵による性犯罪事件
沖縄県内では、在沖米軍関係者による性犯罪が長年にわたり社会問題となっています。
今回、米海兵隊の上等兵が女性への不同意性交致傷罪で懲役7年の有罪判決を受けた事件もその一つです
。この事件では、女性の首を絞めるなどの暴力を伴った性暴力が行われたとされ、被害者の心身に大きな傷を残しました。
しかも、2023年6月以降だけでも、同様の容疑で米兵が摘発された件数は8件にのぼり、そのうち4件は起訴されています。繰り返される加害行為に対して、地元住民の間には「なぜ止められないのか」という強い怒りと不信が広がっています。
初の謝罪に見る米軍と県との関係の変化
このたび、事件の判決を受けて在沖米海兵隊の幹部が沖縄県庁を訪れ、正式に謝罪を行いました。
第3海兵師団参謀長のニール・J・オーウェンズ大佐が「県民と被害者に不安を与えたことを深くお詫びします」と述べた姿は、これまでの対応とは異なるものでした。
過去には事件が起きても公式な謝罪や対話がなかったケースもあり、今回の訪問はある種の転換点と見る声もあります。
一方で、謝罪が事件の根本的な解決に結びつくのか、形式だけに終わらないのか──県幹部や市民団体からは厳しい視線も注がれています。
1.事件の概要と有罪判決

昨年5月に発生した不同意性交致傷事件の詳細
問題となった事件は、2024年5月に沖縄県内で発生しました。
被害に遭ったのは、当時20代の日本人女性で、深夜に基地周辺で知り合った米海兵隊の上等兵により、自宅に連れ込まれたうえで性的暴行を受けたとされています。
事件の際、加害者は女性の首を絞めるなどの暴力を加え、抵抗できない状態にしたうえで性交に及んだとされます。裁判では、女性の証言や現場の状況証拠、防犯カメラ映像などが認定され、暴行の意図が明確であったと判断されました。
加害者に下された懲役7年の判決とその後の控訴
2025年6月24日、那覇地方裁判所は加害者の上等兵に対し、「不同意性交致傷罪」により懲役7年の実刑判決を言い渡しました。
判決では、身体的暴力を伴う重大な人権侵害であることが強調され、「被害者の恐怖と苦痛は計り知れない」と指摘されました。
一方、加害者側は「同意があった」と無罪を主張しており、判決後に即日控訴を表明しています。
この控訴は、被害者にとって精神的負担の継続を意味しており、支援団体からは「司法の場で何度も傷をえぐるようなことは避けてほしい」との声も上がっています。
同様の事件が続発する背景と件数の推移
この事件だけでなく、2024年6月以降、沖縄県内では米兵による不同意性交などの容疑で8件もの摘発が相次いでおり、うち4件が起訴に至っています。
事件の多発に共通しているのは、加害者が軍の外に出た際の行動管理が不十分であるという点です。
また、加害行為の一部が酒に酔った状態で行われたこともあり、「基地の外での自由な行動が犯罪を招いているのでは」という疑念が、住民の間で根強くあります。
米軍関係者による事件の頻度は、被害者やその周囲だけでなく、地域全体に深刻な不安を与えており、実態把握とともに、構造的な対策が求められています。
2.米軍側の謝罪と対応
第3海兵師団参謀長による謝罪の経緯と発言内容
事件の判決からわずか数日後の2025年7月3日、在沖米海兵隊の幹部らが沖縄県庁を訪れました。
今回の訪問には、第3海兵師団の参謀長であるニール・J・オーウェンズ大佐が出席し、溜政仁・県知事公室長に対して正式な謝罪を行いました。
オーウェンズ大佐は、「被害者の方や県民の皆さまに不安と不快な思いを与えたことを、心よりお詫び申し上げます」と深々と頭を下げ、今回の事件の深刻さを認めました。
これまで、米軍が沖縄県に対して個別事件に関して謝罪するケースは極めて稀であり、今回の謝罪は「異例の対応」として県内外の注目を集めました。
背後には、県民感情の高まりや、繰り返される事件に対する日米関係の信頼問題があったと見られます。
提示された再発防止策とその実効性
謝罪と同時に、米軍側は複数の再発防止策を提示しました。
具体的には、①米兵に対する規則順守教育の強化、②夜間外出や飲酒に関する内部ルールの見直し、③事件発生時の対応マニュアルの再整備などです。オーウェンズ大佐は、「部隊内での道徳・倫理教育を強化し、若い隊員にも徹底していく」と説明しました。
しかし、こうした策に対しては、実効性を疑問視する声も上がっています。
過去にも「再発防止」の名のもとに同様の方針が打ち出されたものの、結果として事件の抑止につながっていないのが実情です。県民の間では、「形だけの対策では意味がない」「教育よりも行動の管理を厳格にすべきだ」という意見も根強く、米軍の内部統制の限界が問われています。
合同パトロールなど、沖縄県との連携強化の方針

米軍は今後、沖縄県警や県と連携して、基地周辺の治安維持に努める方針を表明しました。
その一環として、夜間の基地外パトロールを県警と合同で行うことや、問題行動を起こした隊員への迅速な処分制度の整備も検討されています。また、米軍が主体となって地域住民との対話イベントや啓発活動を行うことも提案されました。
これらの連携策については、現場レベルでの協力体制を築けるかどうかがカギを握ります。
過去には、協力が表面的に終わったケースもあり、持続性と誠意が求められる段階にあります。被害の再発を本気で防ぎたいのであれば、形式的な対応ではなく、住民の信頼を取り戻すための「見える行動」が必要です。
3.沖縄県の対応と住民の声
県幹部による強い抗議と疑念の表明
謝罪を受けた沖縄県の溜政仁・県知事公室長は、面会の場で厳しい言葉を米軍側に投げかけました。
「女性の人権をないがしろにする行為であり、強い憤りを禁じ得ない」と述べたうえで、米軍内の教育体制や内部統制に深い疑念を抱かざるを得ないと抗議しました。
単なる「事件」として済ませず、その背後にある米軍の組織的問題にまで踏み込んだこの発言は、沖縄県がこれまでに積み重ねてきた不信の表れといえるでしょう。
沖縄県は、過去にも繰り返されてきた類似の事件に対し、再発防止策や日米地位協定の見直しなどを国に求めてきましたが、根本的な改善はなかなか実現していません。
今回の対応でも、「謝罪を受けたからといって問題が解決したわけではない」との立場を崩しておらず、県としては引き続き国と米軍双方に対し、実効性ある対応を求める姿勢です。
住民・被害者支援団体の反応と社会的影響
事件に対しては、地元住民や支援団体からも強い反応がありました。特に女性支援を行う団体は、「被害者の声が軽視されない社会をつくらなければいけない」と繰り返し訴えています。
実際、事件後に開かれた那覇市内での緊急集会では、被害女性のプライバシーを守りながら、同様の体験を語る女性の証言が披露され、「これは一人の問題ではない」と会場全体が静まり返る場面もありました。
また、若い世代を中心にSNSでも「#沖縄の声を聞いて」などのハッシュタグが拡散され、「これ以上、基地のある土地だからといって、理不尽を受け入れろとは言えない」といった投稿が多く見られました。
性暴力の構造的な問題と向き合おうとする市民の姿勢が、少しずつではありますが、社会を動かしつつあります。
「あなたは悪くない」と声を上げ続ける活動の意義
この事件を受けて、沖縄では「あなたは悪くない」と書かれたプラカードやTシャツを手に、被害者支援の意思を示す人々が増えています。
こうした言葉は、加害者に責任があるにもかかわらず、自責の念にかられがちな被害者を力づけるメッセージとして全国に広がりつつあります。
沖縄市では、性暴力被害者支援センターが中心となり、街頭での啓発活動や相談窓口の案内が行われており、「もし自分が声を上げられなかったとしても、誰かが代わりに声を上げてくれる」安心感を与える取り組みが進んでいます。
こうした草の根の活動が、被害者の尊厳を守ると同時に、地域社会における共感と連帯を育てているのです。
沖縄で繰り返される米兵性犯罪──「あなたは悪くない」と伝えるために、私たちが知っておくべきこと
1.沖縄に米軍基地が集中している現実
沖縄には、日本全国の在日米軍専用施設の約7割が集中しています。これにより、米兵と地元住民が接触する機会が非常に多く、事件やトラブルのリスクも高まってしまいます。
本土からはなかなか実感しづらいかもしれませんが、「日常のすぐそばに基地がある」暮らしは、沖縄の多くの方にとって現実です。そしてその中で、心を踏みにじられるような事件が後を絶たないのです。
2.過去に起きた重大な事件──1995年の少女暴行事件
今から約30年前、1995年に起きた事件をご存じでしょうか? 米兵3人が12歳の少女を暴行し、県内に大きな衝撃を与えました。
この事件に対し、なんと8万人以上が集まって抗議集会を開きました。「怒りの日」とも呼ばれるほど、県民の怒りは爆発したのです。
それでも、構造は変わりませんでした…。それが今もなお「繰り返されている」という事実に、私たちは目を背けてはいけないと思います。
3.最近の摘発件数と“見えない”性被害
2023年以降だけでも、不同意性交などの容疑で米兵が8件摘発され、そのうち4件が起訴されています。
でもこれは、あくまで“明るみに出た”数字です。実際には、泣き寝入りした被害者、届け出る勇気が持てなかった人…そうした「声にならない被害」がたくさんあるのではないかと、私は思っています。
性被害って、ただでさえ声を上げるのが難しいものです。しかも相手が「米軍関係者」というだけで、さらにハードルが高くなってしまう。そんな現実を、忘れてはいけないと感じます。
4.なぜ繰り返される?構造的な問題とは
なぜ、こうした事件が繰り返されるのでしょうか?
一つには「日米地位協定」という壁があります。米兵が加害者となった場合、日本側がすぐに身柄を拘束できないケースがあるんです。こうした制度の不備が、「どうせ捕まらない」「責任を問われない」といった意識につながってしまうこともあるのではないでしょうか。
また、米軍内部の規律や教育の甘さも指摘されています。「再発防止」と言われて久しいですが、実際に被害は減っていないのが現状です。
5.声を上げる沖縄の人たち──「あなたは悪くない」
こうしたなかで、勇気を持って声を上げる人たちがいます。
那覇市内で開かれた緊急集会では、ある女性が自らの体験を語りました。「これは一人の問題じゃない」と語るその姿に、胸が締めつけられる思いがしました。
また、「あなたは悪くない」と書かれたTシャツやプラカードを手に、街頭に立つ方々もいます。この言葉は、被害者を責めるのではなく、そっと寄り添う強いメッセージです。
6.私たちにできること
この問題を、自分には関係のない遠い出来事だと感じる方も多いかもしれません。
でも、「声を上げることはこわいけど、ひとりじゃない」と思える社会にしていくこと。それこそが、今私たちに求められているのではないでしょうか。
SNSで知る、署名に参加する、正しい情報をシェアする…できることは小さくても、無意味なんかじゃありません。
米軍基地で繰り返される性被害──日本だけじゃない、他国でも見えた“同じ壁”
沖縄でまた米兵による性犯罪が報道され、「なぜ繰り返されるのか」と悲しみと怒りが入り混じる気持ちになりました。でもこの問題、日本だけじゃないんですよね。他の国々でも、似たような被害や葛藤があるのです。
韓国──地位協定の見直しで少しずつ変化が
韓国でも米軍による性暴力事件は過去に繰り返されてきました。特に2008年の強姦事件のあと、地元では激しい抗議が起こり、その後韓国の司法が一部の米兵に対して起訴・有罪判決を出せるようになりました。
今では、韓国側が第一次裁判権を持つケースもあり、性犯罪で懲役判決が出た米兵もいます。とはいえ、「すべての事件」が公平に裁かれているわけではありません。制度の運用次第で、依然として加害者が送還されてしまうこともあるようです。
フィリピン──声を上げた女性と裏切られた正義
2005年の「スミス事件」では、米海兵隊員がフィリピン人女性に集団で暴行を加えたとして、現地で有罪判決が下されました。「歴史的判決」と言われましたが、米国大使館に引き渡されたのち、減刑され釈放されてしまいました。
被害者の女性は「もう誰も信じられない」と涙ながらに訴えたそうです。法的には勝っても、心の傷は癒えなかった──そんな現実が突きつけられた事件でした。
ドイツ・イタリア──繰り返される“送り返し”の構造
ドイツやイタリアでも、米兵による性犯罪事件がたびたび報道されています。いずれも問題になるのが、「米国に送還されてしまう」ケースがあるということ。
せっかく現地の司法で裁こうとしても、結局アメリカ側が「自国で処理する」として連れ戻してしまえば、有罪にならないこともあるのです。これでは、被害者の気持ちはどうなるのか…。私は強い疑問を感じます。
日本(沖縄)とどう違う?表で比べてみました
以下の表に、各国での米兵性犯罪への対応の違いをまとめてみました。
国名 | 現地司法による裁判 | 米国による身柄保持 | 住民の反発 | 改革の動き |
---|---|---|---|---|
韓国 | ◯ 可能(拡大中) | △ ケースバイケース | 強い | 一部あり |
フィリピン | ◯ 初の有罪事例あり | ◯ その後減刑 | 非常に強い | 協定破棄通告あり |
ドイツ | △ 限定的に可能 | ◯ 多くは送還 | 中程度 | 継続交渉中 |
イタリア | △ 一部成功 | ◯ 批判あり | 高まっている | 継続中 |
日本(沖縄) | △ 起訴困難なケースも | ◯ 基本は米軍管理 | 非常に強い | 改定求める声多い |
まとめ
沖縄で再び発生した米兵による性犯罪事件は、単なる個人の逸脱行動ではなく、米軍の組織的な規律の問題として、県民に深い不信と怒りをもたらしました。上等兵に対して懲役7年の実刑判決が下され、異例の米軍幹部による謝罪も行われましたが、これで問題が終わったわけではありません。
県は米軍に対し、教育や統制の強化を改めて強く求め、住民や支援団体は「これ以上、繰り返させない」という強い意志のもと、行動を起こしています。被害者に寄り添う「あなたは悪くない」というメッセージは、被害者だけでなく、社会全体への問いかけでもあります。
再発防止のためには、米軍の本気の取り組みとともに、県民の声を正面から受け止める姿勢が不可欠です。事件を風化させず、被害者の尊厳を守り、加害を許さない社会を築くために、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があります。
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