札幌市南区の体験型動物園「ノースサファリサッポロ」が、無許可開発を行っていた問題で大きな波紋を呼んでいます。
運営会社サクセス観光は、国から交付された約6000万円の「事業再構築補助金」の返還を命じられ、さらに札幌市が追加で交付した750万円についても返還請求が進められています。
「なぜ許可を得ていないのに補助金が交付されたのか?」という市民の疑問や批判の声は強く、補助金制度そのものの透明性や公平性をめぐる議論にも発展しています。
本記事では、国と札幌市の対応、議会での質疑、そして世論の反応までを整理し、今回の問題が私たちに何を示しているのかを考えてみます。
はじめに

ノースサファリサッポロの概要
札幌市南区にある「ノースサファリサッポロ」は、体験型の動物園として知られています。
一般的な動物園と違い、動物たちとの距離がとても近く、エサやりやふれあい体験ができることから、観光客や家族連れに人気を集めてきました。
例えば、ライオンやカワウソに直接エサをあげたり、珍しい動物と写真を撮れたりと、他では味わえない企画が話題を呼んできました。また、園内には宿泊施設やアドベンチャー体験のエリアも整備され、北海道の観光資源のひとつとして注目を浴びてきました。
補助金返還命令が報じられた背景
しかし、今回大きく報じられたのは、その人気の裏で行われていた「無許可開発」の問題です。
運営会社のサクセス観光は、新しい宿泊施設を整備するにあたり、国から約6000万円の「事業再構築補助金」を受給していました。
ところが、都市計画法で義務づけられている事前の開発許可を得ていなかったことが後に判明します。このため、補助金を交付した中小企業基盤整備機構は決定を取り消し、全額返還を命じました。
さらに、札幌市も国と同じ補助制度に基づいて750万円を交付しており、近くこちらも返還を求める見通しです。
補助金制度は本来、地域の事業者を支えるために設けられたものですが、手続きや管理がずさんになると、今回のように大きな問題に発展してしまいます。
この一件は、観光施設の運営や地域振興のあり方を問い直す出来事となっています。

1.無許可開発と補助金返還命令
事業再構築補助金6000万円の交付と取り消し
サクセス観光は、2021年度に新しく宿泊施設を建設する計画を立て、その費用をまかなうために国の「事業再構築補助金」を申請しました。
この補助金は、新型コロナの影響で打撃を受けた事業者を支援する目的で作られた制度で、全国で多くの企業が利用しています。
ノースサファリサッポロの場合、約6000万円という大きな額が交付され、地域経済の活性化にもつながると期待されていました。
ところが、その後の調査で、施設建設が都市計画法に基づく開発許可を得ないまま進められていたことが明らかになり、交付そのものが取り消される事態に発展しました。
都市計画法違反による開発許可未取得の問題
都市計画法は、無秩序な開発を防ぎ、周辺環境や地域の安全を守るために定められています。
例えば、山間部に新しい宿泊施設を建てる場合、災害時の避難経路や自然環境への影響など、多くの観点から事前の審査を受ける必要があります。
しかし、サクセス観光はこの重要な手続きを経ずに施設の整備を進めてしまいました。結果として「法律に反した開発」と見なされ、補助金交付の前提が崩れることになったのです。
利用者にとっては新しい宿泊施設が便利に思えても、法的な手続きを無視して建てられたものだと知れば、不安を感じるのは当然でしょう。
中小企業基盤整備機構の対応と通知内容
補助金を交付した中小企業基盤整備機構は、違反の事実を確認した後、2024年7月23日付で交付決定を取り消しました。
そして、サクセス観光に対し「6000万円を全額返還する義務がある」と文書で正式に通知しました。
この決定は、補助金制度の信頼性を守るためにも不可欠な対応といえます。補助金は税金から支払われているため、ルールを守らずに受け取ったままでは、他の事業者や市民に対して不公平になります。
今回の通知は、国が「不正や不備には厳しく対処する」という姿勢を示す意味でも大きなものとなりました。
2.札幌市の対応と追加補助金
札幌市による750万円補助金の交付経緯
札幌市は、国の補助金制度に合わせて「事業再構築サポート補助金」という独自の制度を設けていました。
これは、国の補助金を受け取った事業者に対して、市も追加で資金を支援する仕組みです。サクセス観光もその対象となり、2023年度に750万円が交付されました。
つまり、国の6000万円と合わせると、実際には6750万円という巨額の公的資金が投じられていたのです。
市としても地域の観光資源を育てたいという思いがあったことは確かですが、結果的に「前提条件が崩れた」形となり、補助金の妥当性が問われることになりました。
市長会見での発言と国との連動
この問題について、札幌市の秋元克広市長は会見で「国の決定を条件に市も補助金を出したので、前提がなくなれば返還を求める」と説明しました。
市としては、国の判断に歩調を合わせる方針を明確に示した形です。例えば、国が交付を取り消した時点で、市も連動して返還を求めるというスタンスをとることで、二重基準にならないよう調整しているのです。
市長の発言は、市民から見ても「筋を通した対応」に見えますが、裏を返せば国任せの姿勢とも取られかねません。実際に「市独自で調査をすべきではなかったのか」という指摘も一部で上がっています。
行政指導の経緯と今後の返還請求
札幌市はこれまでも、ノースサファリサッポロに対して複数回の行政指導を行ってきました。2024年4月には、市職員が現地を立ち入り検査し、開発許可の取得を怠っていた点を確認しています。
こうした経緯を踏まえ、市は近く正式に750万円の返還を請求する方針です。返還が実現すれば、国と市を合わせて「全額返還」という形になります。
今後は、補助金の審査や交付の過程で、より厳密なチェック体制を整えることが課題になるでしょう。市民の税金が使われる以上、「杜撰な管理では済まされない」という意識が、行政側に求められています。
3.議会質疑と世論の反応
国会での荒井議員の質問と経産相の答弁
ノースサファリサッポロの補助金問題は、国会でも取り上げられました。
立憲民主党の荒井優議員は、衆議院の経済産業委員会で「無許可開発を行った事業者に多額の補助金が渡ったことは問題ではないか」と質問しました。
これに対して武藤経済産業相は「中小企業基盤整備機構により適切かつ厳正な対応が取られるものと認識している」と答弁し、行政としても厳しく対処する姿勢を強調しました。
議論の背景には、「補助金が本当に適正に使われているのか」という全国的な問題意識があるといえます。
主なヤフコメの意見(行政対応への批判)
今回の報道には129件のコメントが寄せられ、一般市民の声も大きく反映されました。
特に目立ったのは「どうして許可を得ていないのに補助金が出たのか」という行政側のチェック体制への批判です。
「役所の対応が杜撰すぎる」「税金を使ってまで違反企業を支援するのは納得できない」といった意見が多く見られました。
中には「現場で確認すれば分かる話ではないのか」と、基本的な調査の不備を指摘する声もあり、行政の信頼性に対する不安がにじみ出ています。
補助金制度全体への不信感と改革を求める声
さらに、議論はノースサファリサッポロだけにとどまらず、補助金制度全体への疑問にも広がっています。
コメントの中には「補助金は利権の温床になっている」「政治家や一部業者に有利に使われているのではないか」といった批判も少なくありません。
「補助金に頼る仕組みそのものを見直すべき」「全国で制度改革を行わなければ同じ問題が繰り返される」という意見も目立ちました。
つまり、今回の件は一つの動物園の問題にとどまらず、日本の補助金制度全体に対する信頼の揺らぎを浮き彫りにしているのです。
まとめ
ノースサファリサッポロの無許可開発問題は、単なる一施設のトラブルにとどまらず、補助金の在り方や行政のチェック体制そのものを問い直す大きな出来事となりました。
6000万円という巨額の国の補助金と、750万円の札幌市の補助金が返還命令の対象となったことで、税金の使い道に対する市民の関心と不信感は一層高まっています。
国会での質疑や市長会見を通じて、国と市は「厳正に対処する」との姿勢を示しましたが、ヤフコメを中心とした世論からは「なぜそもそも許可前に交付されたのか」という根本的な疑問が相次ぎました。
さらに、「補助金制度は利権の温床だ」という意見もあり、制度全体の改革を求める声が強まっています。
今回の事例は、地域の観光資源を育てるという善意の制度が、ずさんな管理によって大きな批判を招くことを示しました。今後は、補助金の審査や監督をより透明で厳格なものにすることが、行政に求められる最大の課題といえるでしょう。
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