「子育てペナルティ」本来の意味は? チャイルドペナルティとは?

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「子育てペナルティ」がXのトレンドに上がっていました。

少子化やジェンダーギャップの問題をはらんでいますが、ペナルティ=罰則という言葉に反応する書き込みが多く見られます。「子育ペナルティ」の本来の意味とは違う受け取り方をされている書き込みも見られます。

女性は出産して職を離れたり時短勤務になることで、10年後の賃金差が46%減少しているそうです。

「子育てペナルティ」「チャイルドペナルティ」とは何か?詳しく紹介しています。

目次

「子育てペナルティ」SNSの反応

「子育てペナルティ」と聞いて、どのような感想を持ちますか?

子供を産み、育てることは罰?!

ペナルティという言葉が強烈な印象を生んでいるようです。

ニュースでは、女性が出産して子供を育てる場合、時短勤務になるので賃金が子供のいない女性より46%減少すると報じています。

これに対して、子供のいない女性から「時短した分のしわ寄せが来ている」「勤務時間が違うのだから給料に差があるのは当たり前」との声が多く上がっています。

子育てペナルティ…言葉が悪いよねぇ…子育てに限らず、仕事から離れたら昇進や昇給が遠のくのは普通だし、そうやって独身と子持ちの溝が深まりそうな言葉をこれ以上生まないでほしいと思う

同じ給料=対価を求めるのであれば、同じ仕事ができないとだめ。 時短勤務とか急な休みとかで穴開けるなら、そりゃその分のマイナスは発生するよね。 だって家のことが?子供が? それは自分の選択の結果でしょ?

この言葉は、子持ちと独身、子供のいない人との分断を煽っているという意見が多数です。

子供を持つ、持たない。結婚する、しないは個人の自由ですが、社会全体の問題として冷静に考えることも必要だと思います。

子育てを取り巻く現在の状況は、多くの親にとって厳しい現実を突きつけています。自己責任論や共働きの必要性、保育園の抽選、育休や時短勤務のデメリットなど、どれもが少子化対策の障壁となっています。子育て環境を改善し、社会全体で子育てを支える仕組みが必要です。

チャイルドペナルティ

この言葉はどこから来ているのでしょうか?

「子育てペナルティ」という言葉が使われていますが、「チャイルドペナルティ」が一般的なようです。

出産、育児など子育てによって労働所得が減少し、社会的・経済的に不利になる状況のことをいいます。

これは男女ともに起こり得ることですが、SNSの反応のように主に女性に顕著に現れることから「マザーフッド(Motherhood)ペナルティ」とも呼ばれています。

チャイルドペナルティはジェンダーギャップの要因の一つとも言えますね。また少子化の原因にも考えられます。

キャリアか家庭か

男女の賃金格差は先進国の共通した問題として認識されてきました。

近年、各国はジェンダーギャップを無くすための取り組みとして学歴格差の解消同一労働同一賃金に取り組んできました。

けれど、それでも男女の賃金格差が無くならない原因について様々な研究が行われてきました。

2019年に米国プリンストン大学のヘンリック・クレベン教授らがその原因について、「子を持つことにより生じる賃金格差」と提起し「チャイルドペナルティ」という言葉が知られるようになりました。

そして2023年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカ・ハーバード大学教授のクラウディア・ゴールディン氏の研究によってさらに注目度が高まりました。


ゴールディン氏は、アメリカの大卒女性が「キャリアか家庭か」の選択について、100年の間にどのように変遷したかを研究しました。

第1グループ:1900~1919年代に卒業(1878~1897年生まれ)「家庭かキャリアか」のニ者選択⇒両立はほぼ不可能

第2グループ:1920~1930年代に卒業(1898~1923年生)「仕事の後に家庭」経済不況で女性の雇用が制限された時代⇒結婚後は退職している者が多い

第3グループ:1950年代に卒業(1924~1943年生まれ)「家庭のあとに仕事」大学で専攻した仕事に従事し、キャリア志向もあるが、実際には子供が成長して復職する際には必要なスキルがなく苦労した。

第4グループ:1970年代に卒業(1944~1957年生まれ)「キャリアのあとに家庭」第3グループを教訓に、市場に通用するスキルが重要な事を学び専門職につく者も増えた。またピルにより結婚や妊娠のスケジュールをコントロールできるようになった。しかし、結婚、出産年齢が高齢化したため大卒女性の約27%が子どもを持たなかった。

第5グループ:1980年~1990年代に卒業(1958~1978年生まれ)「キャリアも家庭も」を目指している。第4グループを教訓に、子供を産むことを先延ばしにすることで家庭をもつ可能性を失いたくない。生殖医療の技術進歩を利用することで出生率は大幅に上昇している。

以上はアメリカの大卒女性を対象にした研究ですが、女性たちは前の世代を教訓にし、雇用形態や科学技術を取り入れながら「キャリアも家庭も」を実現しようとしてきました。

なぜ男女格差はなくならないのか

女性が高い教養を身に着け、会社への貢献度も上がっているにも関わらず、現在も残る男女格差の原因として、ゴールディン教授は女性が子供を持ったか否かと、「グリーディー・ジョブ」(貪欲な仕事)があるとしています。

「グリーディー・ジョブ」(貪欲な仕事)とは、高収入の見返りに長時間労働を必要とし、勤務時間・場所のフレキシビリティのない仕事を指しています。

同学歴・同企業の同職に就いている女性の間では、育児の有無で賃金差が大きくなっています。「子供のために仕事から離れている」時短勤務により当然賃金には差が出ます。

しかし、子育てを終え職場に復帰する場合でも、労働時間により勤務評価がされて昇進が難しいため第1子出産時の格差が縮まりません。

上の表を見るように、女性の賃金が妊娠、出産を機に急降下しているのは育児の負担が女性に偏っていることがわかります。

企業内の昇進システムが生む『子育てペナルティ』
――人事データから明らかになった男女間賃金格差の原因――東京大学大学院経済学研究科 山口 慎太郎 教授による

出産直後は育児休業や時短勤務のため、「残業手当・時短控除」といった労働時間によって決まる給与項目の金額現象が主な要因でしたが、15年を超えると「役職手当」の差が最大の要因となりました。さらに詳しい分析から、育児期の時短勤務が、人事評価を通じて昇進機会に影響を与える構造が明らかになりました。

企業内の昇進システムが生む『子育てペナルティ』
――人事データから明らかになった男女間賃金格差の原因――

少子化が加速している日本では喫緊の問題ですが、出産・育児に費やす時間は少なくても小学校卒業まで12、3年は必要です。

育児の負担が主に女性だけにかかってくる場合は、その間、仕事を辞めるかフレキシブルに時間を選べる非正規につくかを選択せざるを得ない状況です。

「グリーディー・ジョブ」(貪欲な仕事)

「男性は働いて、女性は家を守る」という考え方がまだまだ根強いだけでなく、「グリーディー・ジョブ」(貪欲な仕事)に就いているのは男性が多いということも、育児に男性が関われないことの原因ともなっています。

ゴールディン教授の研究では、技術や科学系のような比較的柔軟性のある仕事のほうが同職種内での男女格差が小さく

事務系や医療系のような「長時間続けて働いた方が時間あたりの生産性が高くなる。」「時間のプレッシャーがある、人との連絡の必要性がある、人間関係の構築が必要がある、意思決定権がない」仕事では同職種内の男女間賃金格差が大きいことが示されました。

長時間労働が必要であったり、時間の制約がある場合、既婚女性が不利な立場に立ってしまい昇進の可能性が低くなることがわかります。

チャイルドペナルティを解消するには?

チャイルドペナルティは各国で問題になっていますが、特に日本では格差が大きくなっています。

「子育ては女の仕事」という従来からの社会通念をアップデートする必要があります。男性の育児参加も望まれますし、そのための環境整備も必要です。

今年の冬ドラマ『まどか26歳。研修医やってます』では、令和の働き方改革で医療現場も変わりつつあるらしいですね。

年功序列とか、生涯雇用などが崩れてきた現代、若い人たちの間にも仕事と自分の生活を両立を望む声も出ています。

コロナを経験してリモートワークも定着してきました。

SNSの反応のように、「仕事のしわ寄せが来ている」と不満がでるのも、働き方を変化させれば解決することもあるのではないかと思います。

子持ちと独身の対立を煽るような受け止め方は、本質を見逃してしまいますね。「家庭も仕事も」両立できる社会が、女性にとっても男性にとっても望まれる社会だと思います。

もちろん、保育園などのサービスの充実や学費などの経済的支援等、政治が解決すべき問題もたくさんありますね。

男女関係なく、結婚や子供を持つ、持たないではなく、キャリアを積みたいと努力している人材が柔軟に働ける環境が望まれます。

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