自身の性被害を訴えたドキュメンタリー映画『Black Box Diaries(ブラックボックス・ダイアリーズ)』が第97回米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞の候補に選ばれたジャーナリストの伊藤詩織さん。
彼女を支援していた東京新聞の望月衣塑子記者が、映画について映像の無断使用を問題視した記事に対し、事実と異なると提訴したことがわかりました。
ふたりとも美人ジャーナリストとして注目を集めていますが、一体何があったのでしょうか?
伊藤詩織が望月衣塑子を提訴
ドキュメンタリー映画「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」について東京新聞の望月衣塑子記者の記事に対し、伊藤詩織が望月記者を名誉毀損で提訴しました。
東京新聞の望月衣塑子記者が書いた事実と異なる記事で名誉を毀損(きそん)されたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが10日、望月記者に330万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。伊藤さんの代理人弁護士が13日、明らかにした。
伊藤さんが自らの性被害を記録、調査した映画「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」について、望月記者は1月14日、同紙サイトに記事を執筆した。記事は「女性記者たちが性被害などを語った非公開の集会の映像が、発言者の許諾がないまま使われていたことが分かった」と指摘。映画の中で集会参加者が「20代のころ、詩織さんと似た経験した」と語ったことを紹介した。 伊藤さん側は訴状で、この参加者から映像使用の許諾を得ていたことを明らかにした。伊藤さん自らが性被害者なのに、他の性被害者の許可を得ずに映像を使用する利己的な人物であるかのように記事で受け止められ、社会的評価が「地に落ちた」と指摘した。
沖縄タイムズより
2月7日に記事の見出しと本文の一部が訂正・修正されましたので、こちらの投稿の引用部分も修正します。
— 望月衣塑子 (@ISOKO_MOCHIZUKI) February 11, 2025
【伊藤詩織さん監督の映画、性被害めぐる集会の映像を一部許諾なく使用 非公開集会、発言者が削除求めたのに…:東京新聞デジタル 】… https://t.co/drmO4J8Hsi
伊藤詩織性被害事件とは?

2015年伊藤詩織は、当時TBSの政治部記者でワシントン支局長の山口敬之と就職相談のため食事をした際、酒を飲んだ後意識を失い、目を覚ますとホテルのベッドで山口からレイプされたと実名で公表、訴えた事件です。
刑事・民事裁判の結果
山口は合意の上だったとレイプを否定、刑事事件としては2016年準強姦罪「嫌疑不十分」として不起訴処分となります。
これを不服として伊藤は検察審査会に審査請求するも、「不起訴相当」と議決し、山口の不起訴処分が確定、検事手続きは終結しています。
これに対し、伊藤は2017年山口に対し1100万円の損害賠償金支払いを求める民事訴訟を提起します。
2019年、東京地裁は「同意のない性行為」を認め山口に330万円の損害賠償金支払いを明治、2022年山口の上告を退け最高裁で判決が確定(賠償金332万円)で民事訴訟が終結しています。
また、山口は伊藤が「デートレイプドラッグを用いて犯行に及んだ」と発言していることを名誉毀損で訴え、伊藤に対し「的確な証拠がなく、真実とはいえない」という二審の判決が確定し損害賠償金50万円で民事は終結しました。
事件の波紋
事件当時、山口敬之は当時の首相安倍晋三氏と懇意だったことから、政治的圧力があり不起訴になったとの見方もあり、政権批判にもなりました。
また伊藤詩織、山口敬之共に、事件についての発信した者に誹謗中傷、名誉毀損の訴えを起こしています。
メディアでは、日本よりも海外メディアの反応が大きく、ここでも日本の性被害に対する認識の低さが露呈した形となりました。
映画『Black Box Diaries(ブラックボックス・ダイアリーズ)』
伊藤詩織は自身の性加害事件を題材にした映画『Black Box Diaries(ブラックボックス・ダイアリーズ)』を自ら監督して発表しました。
海外では大きな反響を呼び、サンダンス映画祭の国際長編ドキュメンタリーコンペティション部門への出品をはじめ、世界各地の50以上の映画祭で上映され18の賞を受賞。“ドキュメンタリー界のアカデミー賞”と言われるIDAドキュメンタリー賞にて新人監督賞を受賞しました。
また2025年・第97回アカデミー賞で、日本人監督として初めて長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされています。
映画での許諾のない映像・音声の無断使用問題
これだけ話題になっている映画に対して日本での上映は未確定です。
その原因は、今回ニュースになっている映画で映像の無断使用が問題になっているからです。
2024年10月、伊藤氏の元代理人弁護士らが記者会見を開き、作品内での監視カメラ映像、警察官や代理人の音声使用などに関して問題があると指摘しています。
東京新聞 望月衣塑子記者を提訴とは?

東京新聞の望月衣塑子記者は、映画『新聞記者』の原作者として有名になりました。
伊藤詩織さんの事件についても当初から支援者の一人として名前が上がっていました。
しかし、今回のドキュメンタリー映画については映像の無断使用に関して批判的な記事を発表しています。
これについて、今回、伊藤詩織さんが名誉毀損で訴えたということのようです。
この訴えに対し、東京新聞では記事を修正し誤解を招く表現だったと謝罪しています。
しかし、望月記者は「記事に誤りはないが、可能な範囲で伊藤さん側の意向に沿った対応をした。私個人に訴訟の負担を負わせ、言論活動を抑える意図を感じざるを得ず、誠に遺憾だ」とコメントしています。
二人の美人ジャーナリスト
伊藤詩織
伊藤詩織さんが実名顔出しで性被害を告訴したことは、当時衝撃を持って報道されました。

彼女が美人であることから、自分から誘ったのではないかなどの誹謗中傷も多く寄せられたようです。
それは、昨今の、コンプライアンス問題にもつながる日本の性被害に対する認識の低さが現れていますね
しかし、事件当初から彼女の支持者であった人々にとっても、今回のドキュメンタリー映画での無断使用については厳しい意見が聞かれます。
海外での彼女の発言に対しても、エンタメ的な刺激的な発言が多いとの指摘もあります。
自身の人権侵害に対して怒りがあるなら、他の人の人権侵害に対しても尊重すべきである。事件に公的有用性があるというなら何をしてもいいのか。
望月衣塑子
望月衣塑子記者も、また美人で注目をあつめる記者会見によく登場してきますね。

私も望月記者の講演を聞いたことがありますが、とても面白おかしく話され引き込まれました。とても頭の良い人だという印象です。
菅総理に食い下がる姿は記憶に新しいと思います。これは政権に忖度する記者クラブの問題も提起しました。
先日のフジテレビの会見では、同じ質問を繰り返し、自分の主張を演説すると批判も受けました。
「望月は黙れ」との声に東京新聞元編集局長の菅沼堅吾さんはこう言っています。
その時間が記者一人一人を、編集局という組織を、権力と対峙してもぶれることなく、監視を続けることができるように鍛えたのです。東京新聞の編集局を見渡すと、私が局長時代も今も、権力の空気を読まないのは望月記者一人ではなく、編集局という「組織」が権力の空気を読んでいません。
プレジデントオンラインより
政府の記者会見が予定調和ですすめられており、事前に質問事項を提出するなんてことは世界的に見ても異様だということを示していると思います。
ただ、著作『新聞記者』のモデルになった財務省改ざん事件の赤木俊夫さんの妻、赤木雅子さんの日本記者クラブでの発言がありました。
〈雅子さんによると、望月氏とは改竄問題の取材を通じて知り合ったが、「今は一切、連絡しても電話も取ってくれない」と明らかにした。その上で、「もう取材しないなら、私が渡した素材は消してほしい。それを伝えたい」と訴えた〉
〈雅子さんは同日の記者会見に出席した記者団に対し、「ぜひ、望月さんにお会いする機会がありましたら、『赤木がぜひ直接、お話ししたい』ということを伝えていただければなと思っています」と語り、”音信不通”となってしまった望月氏と再び連絡が付くよう協力を呼び掛けた〉
文春オンラインより
映画はフィクションですが、当事者である赤木雅子さんの意向を無視して制作されたと指摘されています。
記者として真実を伝えるのが使命ですが、そのために自身の不都合な真実は無いことにしてよいのか。
ふたりとも確固たる信念を持って世の不条理に立ち向かう強い女性として尊敬します。
また美人ということは世間の注目も集めてしまいます。
ただ、ジャーナリストとして真実のために人権を侵すことは絶対にしてほしくないと思います。
まとめ
伊藤詩織さんが、東京新聞の望月衣塑子記者を名誉毀損で提訴したとの報道がありました。
伊藤さんの事件の概要と、今回問題になったドキュメンタリー映画「ブラック・ボックス・ダイヤリー」における映像・音声の無断使用について調べました。
今回の提訴は、この映画に関しての無題使用について批判的な記事を望月記者が書いたことが名誉毀損になると訴えたものです。
お互いジャーナリストとしての矜持、取材元の人権を守るということが、真実を伝える中でも重要なことだと分かっているでしょう。
ただ、美人ということは世間の注目も集めやすく、自分の主張を通すために強引なことを行っていないか、ちょっと立ち止まって見つめることも大事だなと感じました。
伊藤詩織さんの「公益性があるから映像は必要性を認められる」というのも正当化できないと思うし、望月記者の「提訴で発言を遮ろうとしている」というのも気持ちはわかるけど。お互い、本質とは違うところで泥仕合にならないでほしいなと思います。
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