2025年8月、T・ジョイPRINCE品川が「観客の鑑賞マナー」を理由に異例の公式謝罪を出しました。
最前列でのスマホ点灯が終始続き、多くの観客が集中を削がれたという今回の出来事。
何が起き、劇場はどう対応し、私たちはどう備えればいいのか——事実と対策をやさしく整理します。
はじめに

「T・ジョイPRINCE品川」で起きた“鑑賞マナー”騒動の概要
2025年8月8日(金)20時30分の『【吹替版】ジュラシック・ワールド 復活の大地』上映回で、最前列中央に座っていた男性が本編開始直後からスマホ画面を点灯し続けていました。
暗い館内で四角い光がゆっくり揺れるだけでも、後方の多くの席から目に入り、どうしても集中が切れてしまいます…。
係員は上映30分ごろに注意→一度は消灯、しかし約5分で再点灯。さらに約30分後にも注意→また消灯→係員が離れると再点灯…という流れが、エンドロールまで繰り返されたのです。
劇場の客席は7割ほど埋まっており、同伴者が「一番印象に残ったのはスマホの光」と口にするほど、静かなシーンでは特に目立ったといいます。
多くの観客がマナーを守る中、ひとりの行為が場の体験全体を曇らせてしまった典型例でした。
公式謝罪が異例となった背景とSNSの反応
運営元のティ・ジョイは8月12日、公式サイトで「最適な鑑賞環境をご提供できなかった」として謝罪し、巡回強化や上映前アナウンスの徹底などの再発防止策を明記しました。
映写機トラブルのような設備起因ではなく、「観客のマナー」を理由に劇場側が公に謝罪するのは珍しく、SNSでも「どれほどひどかったのか」「劇場がそこまで表明するのは相当」と話題になりました。
一方で「現場で退席を促せなかったのか」「スタッフの負担が大きいのでは」といった意見も見られ、単なる“迷惑行為の一件”を超えて、劇場の対応範囲や観客同士の思いやりをどう守るかが議論の的になりました。
1.上映中に何が起きたのか

最前列中央でのスマホ点灯—視界に入り続けた眩光のストレス
はじめに触れた出来事を、当夜のシアターの様子に沿って振り返ります。観客はおよそ7割の入りでした。
暗転して本編が始まると、最前列の中央に座る男性のスマホ画面が点灯しました。スクリーンの手前で四角い光がゆっくり揺れると、後方の席からも視界の端に必ず入ってしまいます。
たとえば、静かな会話シーンで画面の明るさが一段落すると、ふっと白い光だけが浮き、字幕の読み取りや役者の表情の細かな変化に意識を向けにくくなります。
「前のほうだけでしょ」と思われがちですが、最前列中央は多くの人の“視線の延長線上”です。最後列の人でも、スクリーンと同じ方向に同じ光があると、どうしても目が引かれてしまいます…。
係員の度重なる注意と再点灯—“やめる→再開”の反復
上映開始から約30分後、係員が男性に声をかけ、いったんは消灯しました。
しかし5分ほどで再び点灯します。さらに約30分後にも注意が入り、そのときも一度は従うものの、係員が離れるとまた画面が光る——。この“やめる→再開”の繰り返しがエンドロールまで続きました。
男性は注意に反論したり声を荒げたりはせず、淡々とスマホをしまうだけでしたが、少し時間が経つと、また操作を始めてしまいます。
館内は大きなざわめきこそ起きませんでしたが、静けさの中で点いたり消えたりする光は、周囲の集中を確実に削っていったはずです。
居合わせた観客の証言—集中を奪われた体験と退席希望の声
最後列にいたAさんは「シアター全体が見渡せ、光が何度も点くたびに気が散った」と話します。
上映後、同伴者が最初に口にしたのも作品の感想ではなく「前のスマホの人のこと」。作品の山場や余韻に浸るタイミングで視界に入る光は、思っている以上に体験を薄めてしまいます。
Aさんは「ここまで繰り返すなら、退席をお願いしてほしかった」とも。実際、その男性は上映終了後、他の観客と同じタイミングで早々に退席していきました。
多くの観客がルールを守る中、たった一人の行為が全体の満足度を下げてしまう——今回のケースは、その現実をはっきり示す出来事だったと言えます。
2.劇場側の対応と再発防止策
謝罪文の要点—巡回強化・上映前アナウンスの徹底
今回の件を受け、運営は「巡回を強化」「上映前アナウンスを徹底」としました。実務に落とし込むと、たとえば次のような形です。
・開映0〜15分、40〜55分、ラスト20分の計3回を“重点巡回帯”としてスタッフが静かに通路を往復します。
・入場時と本編直前の2回、「スマホは機内モード+画面オフ」「光は後方まで届くので完全消灯」の短い文言をスクリーンで流します。
・案内カウンターと場内掲示に「困ったときの呼び出し場所」を明示(例:最後列の通路側にいるスタッフに合図、非常灯近くに設置した呼び出しベルなど)します。
こうした“具体の場所とタイミング”が伝わるだけで、観客も遠慮なく相談しやすくなります。
Aさんのケースのように静かなシーンが多い作品では、最初の15分が特に要注意帯です。そこで一度巡回が入るだけでも、抑止力になります。
退席要請の線引き—約款・安全配慮・現場判断の難しさ
退席依頼は簡単ではありません。一般的な約款には「他のお客様の鑑賞を妨げる行為の禁止」がありますが、現場では次のような段階を踏むのが現実的です。
①初回注意(小声・短時間)…「光が後方に届いています。完全に消してください」
②二度目の注意+予告…「再開される場合はご退席のご案内になります」
③三度目で退席依頼…安全確保のため、通路側にスタッフが2名以上で対応します。
安全面では、混雑回避のため場面転換や大きな音のタイミングで声かけを行い、通路に誘導してから説明します。
必要に応じて上席者を呼び、感情的対立を避けます。座席の振り替えや後日の招待券などは、周囲の観客への“ケア”として検討できる選択肢です(実施の有無は劇場の方針によります)。
今回のように「注意→一旦やめる→再点灯」を繰り返すタイプには、②の“予告”を明確に伝え、③に移る判断を迷わないことが鍵になります!
マナー啓発の実効性—注意喚起動画・掲示・スタッフ動線の見直し
マナー動画や掲示は“わかっているけどつい”を減らす道具です。効果を高めるには、内容より「置き方」と「動線」が大切です。
・掲示は入場ゲート手前(チケット確認前)と、シートに座って正面を見たときの柱面に1枚ずつ。目に入る場所を最小枚数で押さえます。
・スタッフ動線は“端から端の巡回”だけでなく、最後列の中央→片側→反対側と「コの字」に歩きます。最後列からだとスマホの光を早期に把握できます。
・暗所での声かけ用ライトは、手のひらや布で覆って足元だけを照らす運用に統一。観客の注意がライトに向かないようにします。
・クレームや注意実績は「時間帯・座席ブロック・作品ジャンル」を簡単にメモ化し、週次で“光害ホットスポット”を共有します。
どれも難しい仕組みではありませんが、積み重ねるほど“迷惑行為の芽”を早く摘み取れます。環境づくりで多くのトラブルは防げますが、今回のような執拗な再点灯には、最終的に退席を含む“踏み込み”が必要になる——その線引きを現場で迷わない準備こそ、再発防止の要だと感じます。
3.環境づくりと価格差がもたらす変化
プレミアムシートの役割—私語・光害を減らす“距離”の効用
プレミアムシートは「少し離れる」「区切る」でトラブルを減らす座席です。肘掛けが広い、座席間がゆったり、仕切りやサイドテーブルがある——こうした物理的な“距離”が、私語やスマホの光(=光害)を受けにくくします。
たとえば通常席で隣との間隔が拳一つ分だと、隣の手元の明かりが視界に入りがちです。プレミアムでは椅子自体が大きく、ひじ掛けが二本あって身体が自然に離れるため、同じ明るさのスマホでも気づきにくくなります。
「静かな作品をじっくり見たい」「周囲の出入りが多い時間帯に観る」という日は、後方通路側やプレミアム席を選ぶだけでも集中しやすさが変わります。
実際、今回のように最前列中央の光が気になった観客でも、後方の座席や仕切りのある席なら影響が小さくなります。距離と視線のコントロールは、もっとも手早い“自己防衛”策だと思います。
鑑賞料金の分化—ティ・ジョイ2200円/TOHO2000円/イオン1800円の現状
近年は同じ作品でも劇場によって一般料金が異なります。
今回話題になったティ・ジョイは9月1日から2200円、TOHOシネマズは2000円、イオンシネマは1800円です。家族やカップルでの観賞では、館の選び方で合計額に差が生まれますね。
価格だけを見ると安い館が魅力ですが、座席の作りや導線、スタッフの巡回体制など“環境づくり”も体験の質を左右します。
混雑の少ない時間帯を選ぶ、後方の見通しの良い席にする、追加料金が必要な座席は目的に合わせて使い分ける——こうした選択で「料金差」を「快適差」に変えられます!
価格・座席設計とマナー—改善の限界と“個人の悪質行為”への対処
設備や価格設定を整えても、今回のように一人の再三のマナー違反で全体の満足度が下がることはあります。だからこそ、環境づくりと併せて“現場で素早く動ける仕組み”が必要です。
具体的には、空席がある回はスタッフが静かに「後方の別席」へ案内できるよう準備しておく(その旨を事前に掲示)。注意を2回受けても改善しない場合は退席の可能性をはっきり告げる。
観客側も、困ったら最後列のスタッフに合図する、通路側に移るなど「できる行動」を知っておく——こうした小さな工夫の積み上げが、悪質行為の影響を最小化します。
料金や座席設計は“土台”として効きます。一方で、土台では止めきれないケースに備えた運用(巡回タイミング、声かけの手順、座席振替の用意)が、安心して映画を楽しめる最後の砦になります。
まとめ
今回の出来事は、「たった一人のスマホの光」が、満席ではない回でも多くの人の体験を左右してしまうことをはっきり示しました。最前列中央という“視線の延長線上”での点灯は、後方まで確実に届きます。
劇場は巡回やアナウンスを強化し、必要時は退席まで含めた対応が求められますが、観客側の小さな工夫でも被害はぐっと減らせます。
――観客としてできること
・入場前に「機内モード+画面オフ(完全消灯)」、スマートウォッチの通知もオフにします。
・静かな作品や混雑時間帯は、後方通路側や仕切りのある席/プレミアム席を選びます。
・近くで光や私語が続くときは、最後列のスタッフに目配せや小声で伝えます。空席があれば座席の振り替えも検討しましょう。
・自分が“つい”触ってしまいそうなら、鞄の奥にしまう・電源を落とすなど「触れない仕組み」を作ります。
――劇場が続けたいこと
・開映直後/中盤/終盤の“重点巡回帯”を設定し、静かに通路を往復します。
・本編直前に短い注意喚起をスクリーン表示し、「困ったら最後列のスタッフへ」の導線を明示します。
・「注意→予告→退席依頼」の段階と、座席振替・招待券などのケア方針を現場で共有します。
・注意やクレームの記録を週次で見直し、光害が起きやすい座席ブロックを把握します。
価格や座席の作りは“土台”として体験を底上げしますが、土台だけでは止めきれないケースがあります。
だからこそ、観客のちょっとした配慮と、劇場の素早い運用の両輪が必要です。
お互いの一手がかみ合えば、エンドロールの余韻まで気持ちよく味わえるはずです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
コメント