「終活って、高齢者の話でしょ?」と思っていた私が驚いたのは、ニュースで“20代の4人に1人が終活を始めている”と知ったときでした。
「なんでそんな若いうちから?」と不思議に思いながら調べていくうちに、若者たちの“デス活”には、とても前向きでやさしい理由があることに気づいたんです。
この記事では、そんな若者たちの終活事情を、身近な事例や社会の動きとともに紹介していきます。
はじめに
終活は高齢者だけのもの?若者の意外な関心
「終活」と聞くと、多くの人が高齢者や介護の始まった世代の話だと思いがちです。
しかし、最近の調査では、20代の若者の約4人に1人がすでに終活を意識しているという結果が出ています。たとえば、大学3年生の佐藤さん(22歳)は、祖母の葬儀をきっかけに「自分が突然いなくなったら、SNSやスマホの中身はどうなるのか」と考えるようになりました。
こうした「もしものとき」に備える姿勢は、もはや年齢に関係なく広がりつつあるのです。
【若者の「デス活」死を前向きに】https://t.co/8FhQ7aDS9J
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) June 20, 2025
SNS時代の「死の自己表現」としてのデス活
現代の若者は、SNSを通じて日常のあらゆる瞬間を記録・共有しています。それは、死をどう迎えるか、死んだあとどう記憶されたいかという「デジタルな自己表現」にもつながっています。
実際、Instagramで「#エンディングノート」や「#終活」を検索すると、20代が書いた投稿が多く見られます。
ある女性は、自作のエンディングノートの中で「自分の好きだったことや大事にしてきた価値観を、死後に家族へ残したい」と語っていました。
SNSを使った“デス活”は、若者にとって「今を生きること」と「死を考えること」が決して矛盾しないという新しい価値観のあらわれなのかもしれません。
1.若者が終活を始める理由

親や祖父母の死を通じた意識の変化
若い世代が終活に目を向けるようになった背景には、身近な人の死があります。
たとえば、大学生の加藤さん(21歳)は、高校時代に祖父を亡くした経験から「人の死は突然訪れるものだ」と強く感じたそうです。
葬儀の準備や遺品整理に関わるなかで、「何が故人の希望だったのか分からず迷った」と話しており、自分の死についてもきちんと考えておこうと思うようになりました。
このように、家族の死が、終活への最初のきっかけになることは少なくありません。
コロナ禍や災害で高まった「もしも」の意識
新型コロナウイルスの流行や、地震・豪雨といった災害の増加は、若者たちに「明日は当たり前に来るとは限らない」という現実を突きつけました。
就職活動中に祖母をコロナで亡くした田村さん(24歳)は、「自分の命も不確かだと感じるようになり、今のうちに自分の意志を残したい」とエンディングノートを始めました。
特に、医療崩壊や避難所生活などのニュースに触れることで、終活が“高齢者の話”では済まないと実感する若者が増えてきています。
ライフスタイルや価値観の多様化による影響
「結婚しない」「子どもを持たない」「一人で暮らす」など、ライフスタイルの多様化が進む現代において、自分の死後を自分で準備しておくことは、若者にとって自然な選択肢となりつつあります。
たとえば、デザイナーの仕事をしている川村さん(28歳)は、「誰かに迷惑をかけたくないし、自分のモノは自分で片づけたい」とミニマリスト的な終活を実践中。
SNSで「#ひとり終活」などのハッシュタグが増えているのも、こうした価値観の反映といえるでしょう。
2.20代が実践するリアルなデス活とは?
デジタル遺品整理・SNSアカウントの管理
若者の「デス活」で特に注目されているのが、デジタル遺品の整理です。今やスマホ一台に多くの思い出や情報が詰まっており、SNSアカウントやクラウドに保存された写真、動画、メモなどが「その人の記録」そのものになっています。
大学院生の石井さん(25歳)は、自分が使っているSNSやクラウドサービスのIDとパスワードをエンディングノートに記しておくようにしているそうです。
「突然死んだら、家族がスマホの中を見られないと困ると思って」と話していました。また、GoogleやInstagramなどが提供する「アカウント管理設定(死後アカウント管理機能)」を活用している若者も増えています。
エンディングノートやメモリアル動画の作成

終活の中でも身近で取り組みやすいのがエンディングノートの作成です。
といっても、堅苦しいものではなく、「好きだった音楽」「大切にしている価値観」「お墓より海にまいてほしい」など、自由な記述が中心です。
動画制作が得意な山口さん(23歳)は、自分のこれまでの写真や語りを編集して“メモリアルムービー”を作成。親しい友人に「もしものときはこれを流してね」とUSBで渡しているそうです。「恥ずかしいけど、自分らしさを残せると思った」と話していました。
死後のペット・遺言・供養についての考え方

デス活は“自分が死んだあとの責任”を考えることでもあります。ペットを飼っている人にとっては、「自分が先に死んだらどうなるか」は深刻な問題。
27歳の会社員・藤原さんは、自分の飼い猫を信頼できる友人に託すという「ペット後見契約」まで準備しています。
また、法的に有効な遺言書まではいかなくても、LINEのメモ帳機能やノートアプリに「○○にお金を渡したい」「お葬式はしなくていい」など簡単な意思を残している人も多いようです。
供養も「お墓にこだわらず樹木葬がいい」「散骨したい」という声が多く、若者ならではの自由な発想が反映されています。
3.デス活に対する社会のまなざし
家族や友人からの理解とギャップ
若者が「死」を前向きに考えることに対して、年上世代や身近な人々との間で温度差が生じることもあります。たとえば、エンディングノートを書き始めたことを親に話した際、「縁起でもない」「まだ若いのに」と心配されたという声は少なくありません。
22歳の大学生・岡本さんは、終活について話題にすると「そんな話やめて」と避けられてしまい、ひとりで準備を進めているそうです。
本人は「死ぬ準備というより、いまをよりよく生きるための整理」ととらえており、意識のギャップが浮き彫りになります。
メディア・企業の終活マーケティング
メディアや企業も、若者の終活への関心に注目しはじめています。ある大手手帳メーカーでは、若者向けのカラフルでカジュアルな「エンディングノート」を発売し、文房具店やネットショップで人気を集めています。
また、終活アプリやクラウド型の遺言書作成サービスも登場し、「誰でも簡単にできる終活」を提案しています。
テレビやYouTubeでは、タレントやインフルエンサーが終活を語る企画も増えており、終活そのものが「自己表現」や「ライフプランの一部」として扱われるようになってきました。
学校教育や自治体による命の学びとの接点
学校教育や地域活動でも、「命」や「死」を考える機会が少しずつ増えてきています。
高校の倫理の授業では「人生会議(ACP)」をテーマにディスカッションを行ったり、地域の図書館でエンディングノート作成ワークショップが開催されたりと、若者が自分ごととして死を考える場が設けられています。
たとえば、札幌市では10代・20代向けの終活セミナーを開き、「今のうちに考えておくことが、未来の安心につながる」といったメッセージが発信されています。
こうした社会全体の取り組みが、若者の「デス活」を後押ししているのです。
まとめ
「終活=年配の人のもの」というイメージは、今や過去のものとなりつつあります。
20代の若者たちは、自分の人生をよりよく生きるために、そして自分の死後に周囲が困らないようにという思いやりから、積極的に“デス活”に取り組んでいます。
SNSやデジタルツールを活用した情報整理、個性を映すメモリアル動画の作成、大切なペットへの配慮まで、その内容は柔軟で自由です。
また、社会全体も少しずつその動きに寄り添い始めています。家族や学校、自治体や企業が若者の終活を受け入れ、サポートする仕組みが整っていけば、「死を考えること」はもっと日常的なものとして根付いていくでしょう。
死を意識することは、決して暗いことではなく、「今を大切に生きること」への第一歩なのだと、若者たちのデス活が教えてくれているのです。
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