2025年の大河『べらぼう』を観ていて、「あれ、この声どこかで…」と思った人、多いのでは? そう、今作には人気声優や歌手、さらには芥川賞作家までが出演しているのです。
出版業で時代を動かした蔦屋重三郎の人生を描くこの作品は、実在の文化人が登場するだけでなく、“演じる人”たちも現代の表現者ばかり。
従来の大河とはひと味違うこのキャスティングの狙い、気になりませんか?
『べらぼう』に見る大河ドラマのキャスト多様化とは?
2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』では、従来の大河とは一線を画す“キャストの多様性”が話題となっています。出版文化の華やぐ江戸時代を舞台に、声優・歌手・芸人・小説家・文化人など、ジャンルを超えた出演者が集結しています。

これまでの大河ドラマとの違いは?
従来の大河ドラマは、戦国武将や幕末の志士を主役とした「武家中心」の物語がほとんどでした。登場人物も武士や公家、藩主や家臣団などが中心で、出演者も基本的に俳優や女優がメインでした。
しかし『べらぼう』では、主人公・蔦屋重三郎が商人であるように、登場人物の大半が町人や芸術家。彼らを演じるキャストにも、以下のような新しい顔ぶれが加わっています。
ジャンル別・『べらぼう』出演者一覧
- 声優:関智一、中井和哉、山路和弘、高木渉、島本須美、水樹奈々 など
- 歌手:水樹奈々、新浜レオン
- 芸人・作家:又吉直樹(芥川賞作家)、宮川大輔
- 俳優:横浜流星、橋本愛、佐藤浩市、柄本明、尾上菊之助 ほか
なぜ今、ジャンル横断の出演者が起用されるのか
『べらぼう』が描く江戸の出版・芸術・狂歌文化は、まさに“多様な表現者”たちの時代。声優のセリフ技術、歌手の表現力、芸人の間と笑い、小説家の言葉の深みなど、それぞれの得意分野が、ドラマの世界観に新たな命を吹き込んでいます。
特に水樹奈々さんや又吉直樹さんのように、音楽や文学といった他分野からの参加は、大河史上でも異例のこと。NHKが「文化としての大河」を再定義し始めたようにも感じられます。
歌舞伎・伝統芸能分野の役者たちの系譜
実は大河ドラマには、以前から歌舞伎界や伝統芸能の名手が登場してきました。以下はその代表例です。
- 中村勘九郎:『いだてん』で大河初の歌舞伎主役
- 尾上菊之助:『青天を衝け』徳川慶喜役
- 野村萬斎(狂言師):『花の乱』『風林火山』などに出演
所作や発声、美意識が求められる大河ドラマにおいて、伝統芸能出身の俳優は“重厚感と格”を担ってきた存在です。
NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』は、これまでの大河ドラマと比べても、登場人物の多様性が非常に際立っている作品です。以下に、従来作との比較や特徴を挙げて説明します。
🔍《登場人物の“多様性”という点での比較》
比較項目 | 『べらぼう』 | 従来の大河(例:『どうする家康』『鎌倉殿の13人』など) |
---|---|---|
文化人・庶民層の比率 | 非常に高い(出版・戯作・浮世絵など) | 武将・政治家・武士中心 |
声優・芸人・歌手の起用 | 積極的(声優10名近く、歌手や小説家も) | 極めて少ない、ほぼ俳優のみ |
主役の職業・社会階層 | 商人(出版業) | 武士・将軍・殿様など |
ジャンル横断キャスト | 声優・ミュージシャン・小説家・落語家など | 俳優・時に芸人(脇役)程度 |
女性の活躍描写 | 芸者・狂歌師・出版人など多数登場 | 武家の妻・姫・側室役が中心 |
『べらぼう』における多様性のポイント
1. 階層の多様性
- 主人公・蔦重は「武士」でも「政治家」でもなく、出版商人。
- 飯盛り女・芸者・町人・狂歌師・問屋など、庶民階層が中心に描かれる。
2. 表現ジャンルの多様性
- 出版、浮世絵、戯作、狂歌、芝居、浄瑠璃…と江戸文化の横断的ジャンルが主題。
- そのため、出演者にも「表現者(声優・作家・歌手)」が多く起用されている。
3. キャストの出自の多様性
- 芸能界の多ジャンルから出演者をキャスティング
→ 例:声優(中井和哉、関智一)、歌手(新浜レオン、水樹奈々)、小説家(又吉直樹)
他作品との違い:事例比較
作品名 | 主役 | 人物層 | キャストジャンルの広さ |
---|---|---|---|
べらぼう(2024) | 蔦屋重三郎(出版商) | 町人・芸術家・文化人 | ◎ 非常に多様(声優・歌手・作家) |
どうする家康(2023) | 徳川家康 | 武士・戦国武将 | △ 俳優中心、一部芸人あり |
鎌倉殿の13人(2022) | 北条義時 | 武家・公家 | △ 俳優メイン、庶民描写は少なめ |
篤姫(2008) | 鹿児島藩の姫君 | 武家・宮中 | × キャストは俳優・女優のみ |
『べらぼう』は大河ドラマの中でも稀に見る「多様な人々の視点」が交錯する作品です。
- 声で表現するプロ(声優)
- 歌で語るプロ(歌手・浄瑠璃)
- 笑いと知性のプロ(芸人・作家)
- 生活者のリアリティを持つ町人や女中
こうした多様な背景を持つ人物が、権力ではなく文化によって時代を動かす様子を描いている点で、従来の大河とは一線を画しています。
NHK大河ドラマに登場した「ジャンル別・俳優以外の人物」
*NHK大河ドラマに登場した「ジャンル別・俳優以外の人物」**を整理した歴代一覧です。俳優だけでなく、声優・歌手・芸人・文化人など多彩な才能が出演した例をご紹介します。
🎤 声優の登場例
- はんにゃ・金田哲:『光る君へ』(2024年)で藤原斉信役として出演し、芸人でありながら声の表現にも挑戦 。
- ※声優の大河登場は稀。2025年『べらぼう』は声優起用の波を作る作品と言えます。
🎵 歌手・ミュージシャンの例
- 水樹奈々:声優・歌手として活躍し、『べらぼう』(2025年)で狂歌師・智恵内子を演じる。
- 歌手として大河に出演する例は極めて珍しく、『べらぼう』は先駆的といえます。
🎙 芸人・タレントの起用
かなり多くの芸人出演例があります。代表的な抜粋は以下のとおりです :
- 柳沢慎吾(『獅子の時代』『元禄繚乱』『八重の桜』)
- 所ジョージ(『峠の群像』)
- ビートたけし(『武蔵』)
- 明石家さんま・笑福亭鶴瓶(『元禄繚乱』)など多数
📚 文化人(作家・脚本家など)
- 又吉直樹:芥川賞作家であり芸人としても知られており、『べらぼう』(2025年)で狂歌師・宿屋飯盛を務める。
- 歴代でも作家や文化人の大河登場は非常に珍しいケースです。
📊 ジャンル別出現頻度の傾向
ジャンル | 歴代大河での登場頻度 | 最近の傾向 |
---|---|---|
声優 | 極めて少ない | 『べらぼう』で初めて複数起用 |
歌手 | ほぼゼロ | 『べらぼう』で挑戦的起用 |
芸人 | 比較的多数 | 脇役やコメディ役で定着 |
作家・文化人 | 非常にまれ | 又吉による突破例 |
- 従来の大河ドラマは 俳優中心構成で、芸人やタレントの起用はあるものの 声優/歌手/文化人 の出演は非常に限定的でした。
- その中でも『べらぼう』は例外的な構成で、多ジャンルから表現者を大河に起用し、文化描写を強化している作品です。
- この傾向は、文化の多様性に注目した新時代の大河像とも言え、他作品とは一線を画しています。
今後の大河はどうなる?
『べらぼう』は、大河ドラマのキャスト像を大きく変える試金石になるかもしれません。今後も、文化人や表現者がストーリーの中核を担う大河が増えていくことでしょう。
『べらぼう』は「大河=武士ドラマ」という常識を軽やかに飛び越えた、まさに“表現者たちの大河”。これからの展開にも注目です!
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