「クマ対応に出動して2時間で3,000円」──X(旧Twitter)で投稿された報酬明細が大きな波紋を呼んでいます。
時給に換算するとわずか1,500円。命懸けで山に入るハンターたちに対して、この報酬は妥当なのか?
実はクマ駆除の報酬は自治体ごとに大きく異なり、「1頭あたり8万円の地域」もあれば「日当5,000円」の自治体もあるなど、全国で格差が広がっています。
本記事では、話題となったSNS投稿の背景から、クマハンターの報酬制度・地域差・今後の課題までを詳しく解説します。
🦌 話題となったX投稿:「2時間で3000円」の現場
2025年10月30日、X(旧Twitter)で「信州ジビエ職人」というユーザーが投稿した一枚の画像が拡散されました。
自治体の「クマ出動報告書」とみられる書類には、『支払対象時間:2時間00分』『報酬金額:3000円』『獣種:ツキノワグマ』と記されています。
自治体「クマ対応できるハンターが少なくなってる」
俺「そりゃそうだよね。この時給で命張れって言われてもね」
まぁそれでもやるけどさぁ— 信州ジビエ職人(@nekota_gorou) 2025年10月30日
つまり、命の危険を伴うクマ対応に対し、時給換算1500円の報酬ということになります。
💬 SNSの反応:賛否と共感の声
肯定派(緑)
・「この額でも現場に出てくれる人がいること自体がすごい」
・「地域を守る使命感に頭が下がる」
・「ボランティア頼みの仕組みはそろそろ見直すべき」
批判派(赤)
・「時給1500円で命を張るとかおかしい」
・「弾代やガソリン代も自腹って…」
・「危険手当や保険すら整ってない現場がある」
投稿は数日で500万回以上閲覧され、「#クマハンター」「#報酬3000円」などのハッシュタグでトレンド入りしました。
🐾 ハンターの現場実態:使命感と危険のはざまで
ツキノワグマやヒグマの出没が相次ぐ中、自治体がハンターに出動を依頼するケースが増えています。
しかしその多くは、「臨時委託」「日当制」「自己負担多数」という条件で、正式な雇用契約ではないことが多いのが現状です。
- 弾薬代・ガソリン代・装備は自己負担
- 夜間出動でも追加手当なし
- 猟銃保険は個人加入
- 出動要請が頻発しても収入は不安定
それでも現場に立つのは、「地域を守る」という強い使命感。投稿者の「まあそれでもやるけどさぁ」という言葉に、全国のハンターたちが共感の声を寄せました。
📊 自治体別の報酬比較表
| 自治体・制度 | 報酬額/条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 北海道 奈井江町 | 出動手当8,500円/発砲1,800円加算 | 「低すぎる」として猟友会が出動辞退 |
| 北海道 浜頓別町 | 1日5,000円+親熊80,000円・仔熊20,000円 | 頭数報奨金制度あり |
| 山形県 村山市 | 1頭あたり報奨金1万円→3万円に引上げ | 2024年度に改定提案 |
| 国交付金(標準枠) | 1頭あたり8,000円 | 自治体補助の基礎単価 |
🏔 自治体による報酬のばらつきとその背景
実は、クマ対応ハンターへの報酬は自治体ごとに大きな差があります。
その理由は、地域の地形・財政規模・クマ出没頻度・猟友会の体制など、複数の要因が絡んでいるためです。
- ① 地形と危険度:山岳地が多く、出動時間が長い地域(例:北海道・長野)は報酬が高め。
- ② 財政力:小規模自治体では予算が限られ、日当5,000円以下のケースも。
- ③ クマ出没頻度:出動件数が多い地域では単価を下げ、総額で調整する傾向。
- ④ 猟友会の交渉力:猟友会が強い地域では報酬見直し交渉が行われやすい。
たとえば北海道では「1頭8万円」という高額報酬がある一方、長野県や東北の一部では「時給換算1,000~1,500円」という水準も存在します。
また、同じ県内でも市町村単位で金額が異なり、“命の危険に対して値段の格差”が生じているのが現状です。
▶ 比較例:
・北海道浜頓別町:出動5,000円+捕獲80,000円
・長野県A町:2時間3,000円(時給1,500円)
・山形県村山市:1頭3万円(改定後)
→ 単純換算で5倍以上の差が存在。
この地域格差が、ハンター不足の一因とも言われています。
🗣 専門家の見解と制度課題
「熊ハンターは地域インフラの一部であり、報酬は危険手当・災害出動と同等に扱うべき」(環境政策アナリスト・中山健氏コメント)
中山氏は、現行制度では「委託契約の枠」にとどまり、労災・保険・安全保障が整っていないことを問題視。
また、環境省の支援金制度が「頭数捕獲重視」になっており、予防・巡回などの活動が評価されない構造にも課題があると指摘しています。
📌 まとめ:現場を支える制度改革を
今回の「時給1500円」という数字は、単なる報酬の話ではなく、地域を守る仕組みの限界を映しています。
出動の危険性・技術的熟練度・地域防衛の役割を考えれば、制度的な保障と正当な報酬が不可欠です。
- 公的な「地域野生動物対策員」制度の創設
- 危険手当・夜間加算の義務化
- 装備・弾薬・車両費の公費補助
- 若年層ハンター育成と報酬見直し
“命を張って地域を守る仕事” に見合う対価が支払われる社会へ──。
「2時間3000円」という紙切れは、その第一歩を考えるきっかけとなっています。
更新日:2025年10月30日|出典:X投稿(@nekota_gorou)、日刊スポーツ、FNNプライムオンライン、環境省資料

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