小さくなる魚たち…!? バルト海のタラに見る“進化”と乱獲の現実

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スーパーでタラを見かけると、つい「昔より小さくなったかも?」なんて思うこと、ありませんか?
実はそれ、ただの気のせいではないかもしれません。

最近の研究によると、バルト海のタラはここ数十年の間に「自ら小さくなる進化」をしてきたのだとか…。しかもその原因は、私たち人間の“獲りすぎ”にあるというのです。

この記事では、魚のサイズが変わるなんて信じられない!という私のような方にもわかりやすく、バルト海のタラに起きた驚きの変化と、それが私たちの暮らしにどう関わっているのかを、一緒に考えていきたいと思います。

はじめまして。海の生き物や環境問題に関心のある一般の主婦です。ふだんの買い物でお魚を選ぶとき、どこで獲れたのかな?どんなふうに育ったのかな?なんてことをよく考えるようになりました。そんな中で出会った「バルト海のタラがどんどん小さくなっている」という話に、びっくりしてしまいました。今回は、そんな私が感じた驚きや気づきを、ブログとしてまとめてみました。

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目次

はじめに

魚の乱獲がもたらす影響とは?

私たちの食卓に並ぶ魚。その背後には、目に見えない自然とのせめぎ合いがあります。

スーパーに並ぶサバやタラ、マグロなどの多くは、漁業によって獲られたものですが、世界各地でその「獲りすぎ」が問題になっています。

漁獲量が多すぎると、魚の数が減るだけでなく、その魚たちの生き方そのものが変わってしまうこともあるのです。

たとえば、漁獲圧が高まると「早く育って早く子孫を残す」ような特性をもつ魚が生き残りやすくなり、結果として種全体が小型化する――そんな“進化”が起きているという報告もあります。

バルト海のタラに起きた異変

最近注目されているのが、バルト海にすむタラの変化です。1990年代には体長1メートル以上にもなる大物が主流でしたが、今では30cm前後の「小さなタラ」が主流になっています。

特に1996年から2019年までの研究では、体長と体重の中央値が半分以下になったという衝撃的なデータが報告されています。

この変化は単なる個体数の減少ではなく、遺伝的な変化、つまり「人間が漁をしすぎた結果として魚のDNAそのものが変わってしまった」可能性を示しています。

今回のブログでは、このタラの変化を通して、私たちが海とどう向き合うべきかを考えていきます。

1.タラの小型化が意味するもの

体長と体重の変化のデータ

1996年当時、バルト海で漁獲されていたタラの平均的な体長は40cm、体重はおよそ1.3kgもありました。

ところが、2019年になると、その中央値は体長で20cm、体重でわずか272gと、なんと5分の1の重さにまで減少しています。

つまり、わずか20年あまりのあいだに、私たちが「タラ」と聞いて思い浮かべる姿は、まったく別のものになってしまったのです。

こうしたデータは、ドイツの研究機関が耳石(じせき)という魚の成長記録が残る器官を使って調査した結果、裏付けられました。

耳石は木の年輪のように年ごとの変化を刻んでおり、それを分析することで魚の成長スピードや体の大きさの変化がわかります。研究では、25年分の記録をもとにした152尾のタラが調査対象となりました。

小型化の背景にある漁業圧

では、なぜこれほどまでにタラは小さくなってしまったのでしょうか。

理由のひとつに、「大きな個体ばかりを狙う漁」が続いたことが挙げられます。

漁師にとって、より大きな魚のほうが高く売れるのは当然で、効率もよいため、長年にわたって“ビッグサイズ”ばかりが網にかかるようになりました。

その結果、大きく成長する前に漁獲されてしまう個体が多くなり、「小さいうちに子どもを産める魚」だけが生き残る傾向が強まっていきます。

これはつまり、漁業によって「進化の方向」が変えられてしまったことを意味します。

「小さいタラ」が当たり前になる未来

このような変化が続くと、近い将来「30cmのタラ」が標準的なサイズとして認識されるかもしれません。

しかもこれは一時的な現象ではなく、魚のDNAに刻まれた“進化”である可能性が高いため、自然に元のサイズに戻ることは簡単ではありません。

このままでは、漁業そのものが成り立たなくなる可能性もあります。

なぜなら、小型化した魚は食用としての価値が下がるうえ、産卵数も少なくなり、個体数の回復にも時間がかかるからです。

つまり、タラの小型化は、単なる「見た目の変化」ではなく、私たちの未来の食と海のバランスに直結する大きな問題なのです。

2.人為的な進化のメカニズム

成長スピードと遺伝子変異

魚が「進化する」と聞くと、何万年もかかるイメージがあるかもしれません。

しかし、バルト海のタラに起きた変化は、たった数十年という短い期間で起きた、まさに人の手による“進化”です。研究によれば、体が大きくなる前に獲られてしまう環境では、「小さくても早く成長し、早く子どもを産める個体」が生き残りやすくなります。

これが世代を重ねるうちに、魚の持つ遺伝子の構成が変わっていったのです。

とくに注目されたのは、成長に関わる遺伝子の中でも、「大きく育つタイプ」と「早く育つが小型なタイプ」との割合の変化です。

研究では、早く育つタイプのタラの遺伝子が急激に増え、反対に大型化しやすい遺伝子は減少していく様子が確認されました。つまり、乱獲によって選別された環境が、進化の方向性を変えてしまったのです。

有利となった「早熟・小型」な個体

かつては1mを超えるサイズが当たり前だったバルト海のタラ。今では、30cmにも満たない大きさで成熟し、産卵を始める個体が主流となっています。

これは一見、環境にうまく適応しているようにも見えますが、実は大きな問題もはらんでいます。

たとえば、小型のまま成熟する魚は、体内に抱えられる卵の数が少なくなります。

これにより、将来的に生まれてくるタラの数も減り、結果的に資源の回復が難しくなってしまいます。さらに、小型化によって捕獲される魚の市場価値も下がり、漁業者にとっても打撃となります。

このように、「早熟・小型」という特性は、自然選択の中では生き残るために有利ですが、人間社会における食や産業の視点から見ると、必ずしも好ましい結果とは言えないのです。

耳石から読み解かれる成長の記録

今回の研究で大きな鍵となったのが、「耳石(じせき)」と呼ばれる器官です。

耳石は魚の頭の奥にある小さな骨で、人間の内耳の石灰粒のようなもの。魚が成長するにつれてこの耳石にも層が重なり、まるで木の年輪のようにその魚がどのくらい成長したのかを示してくれます。

研究チームは、1996年から2019年にかけて捕獲されたタラの耳石を使い、25年分の成長データを詳細に調べました。

その結果、過去の個体よりも近年のタラは、はるかに早い段階で成長を止め、小さいまま成熟していることが明らかになったのです。このようにして、「魚の成長スピードと遺伝的変化」が科学的に裏付けられました。

つまり、耳石は単なる骨ではなく、「魚の一生と進化の物語」を記録している重要な証拠なのです。

3.生態系と漁業への波及効果

食物連鎖や生態系のバランス崩壊

タラはバルト海の食物連鎖において非常に重要な役割を担っています。

上からはアザラシや大型魚に狙われ、下にはニシンやオキアミといった小さな生物を捕食する――つまり、海の「中間管理職」のような存在です。

そのタラが小さくなり、数も減ってしまうと、食物連鎖のバランスが大きく崩れてしまいます。

たとえば、タラの数が減ることで、その餌となっていたニシンが増えすぎ、それによりプランクトンの量が減少する…といった「ドミノ倒し」のような連鎖が発生します。

このような生態系のゆがみは、一度起きると簡単には戻りません。そして最終的には、海そのものの豊かさを損なってしまうのです。

持続可能な漁業への課題

現代の漁業は「たくさん獲って売る」ことに重点が置かれがちですが、それでは海の資源はどんどん枯れていきます。

バルト海のタラのように、漁業のプレッシャーによって魚の体質そのものが変わってしまった例は、世界中で他にも報告されています。

たとえば、北大西洋のマダラやアラスカのニシンでも、似たような小型化や早熟化の傾向が見られているのです。

こうした問題を解決するには、「何尾獲れるか」だけでなく、「どのサイズをどの時期に、どれくらい獲るか」といったきめ細かな管理が求められます。

たとえば、一定サイズ未満の魚の漁獲を禁止するルールを設けたり、産卵期に合わせて漁を制限したりすることで、魚が自然な成長と繁殖のサイクルを保てるようにする必要があります。

遺伝的多様性の喪失がもたらすリスク

魚が「小さく、早く育つ」方向に偏った進化を遂げると、種としての多様性が失われていきます。

これはまるで、強い個性を持った人がいなくなり、似たような考え方の人ばかりになってしまう社会のようなもの。

多様性があれば、環境の変化にも対応しやすくなりますが、それが失われると、病気や水温変化などの“自然の揺らぎ”に弱くなってしまうのです。

つまり、遺伝的多様性は、魚たちにとって「将来への保険」のようなもの。小型化が進み、特定の遺伝子ばかりが残る状況が続けば、その保険を失うことになります。

そしてこれは、タラという一つの魚だけでなく、私たち人間の食卓、さらには海そのものの持続性にも大きなリスクをもたらすのです。

まとめ

バルト海のタラがたどった変化は、「乱獲が魚を減らす」という単純な話にとどまりませんでした。

私たち人間の行動が、魚の体のサイズや成長スピード、さらにはDNAのかたちにまで影響を与えていたのです。

タラはかつて1メートル以上に育つ魚でしたが、今やその姿は消えつつあります。小さなサイズで早く成熟する個体ばかりが生き残り、世代を重ねるごとに遺伝子が偏っていく――それはまさに「進化」とも言える現象です。

そしてその進化は、海のバランスを崩し、漁業そのものの持続可能性を脅かし始めています。

この問題は、バルト海のタラだけに限った話ではありません。世界の海のあちこちで、同じような兆候が見られています。

だからこそ、今、私たちが考えるべきなのは、「どれだけ獲れるか」ではなく、「どのように海と付き合っていくか」ということです。

魚を食べることが悪いのではありません。ただ、未来にも魚が泳ぐ海を残すために、獲りすぎない工夫や、自然と調和した漁業のあり方を、もっと大切にしていく必要があるのではないでしょうか。

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