宇和島市の岩松川にジンベエザメがやってきたと話題になっていましたが、翌日、死亡していたのが発見されました。
ジンベエザメは海遊館で飼育され、10月に放流されたばかりの「海くん」と判明しました。
どのような経緯で悲しい事故が起こったのかを調査しました。
宇和島岩松川に現れたジンベエザメ
11月5日に愛媛県宇和島市津島町の岩松川にジンベエザメが現れ話題になっていました。
珍客現る!!と地元では話題になっていました。
きょう午後、宇和島市津島町を流れる岩松川にできた、人だかり…
水面に見える背びれ。その正体は…
見に来ていた少年「ジンベエザメです」
ジンベエザメ?
中略
よく見ると、ジンベエザメ特有の白色の斑点。目測では6メートルほどあると見られます。
ジンベエザメの生態に詳しい大阪の海遊館によると、黒潮に乗って、初夏から秋にかけて日本の近海に姿を現すというジンベエザメ。
足摺沖で分岐した黒潮に乗って、宇和島にやってくる可能性も十分あるということです。岩松川に現れた珍客。
県では「事故の危険性があるため絶対に船などで近づかないでほしい」と注意を呼び掛けた上で「午後9時の満潮にのって海に戻ってくれれば」とコメントしています。
南海放送ニュースより
ジンベイザメの死亡が確認される
ところが、6日には死亡しているのが発見されました。
きのう愛媛県宇和島市津島町の岩松川で泳いでいるのが見つかった、ジンベエザメと見られる大型の魚。 つい先ほど、川の中で死んでいるのが確認されました。
確認した大阪海遊館のスタッフによると、死んでいたのは今年10月まで海遊館で飼育・展示していたジンベエザメ「海(かい)くん」だということです。
海くんは体長5.9メートルのオスのジンベエザメで、展示を終えた翌日の今年10月3日に、高知県土佐清水市の大阪海遊館 海洋生物研究所以布利センターから太平洋に放流されていました。
南海放送ニュースより
ジンベイザメは海遊館にいた「海くん」と判明
海遊館によると、メスの「遊」とオスの「海」の2頭のジンベエザメを飼育していましたが、2024年7月23日に高知県土佐清水市の定置網にかかった新しいジンベエザメを搬入し、新しく愛称を「海」としたとのこと。
今まで飼育していた「海」くんは小型記録装置(データロガー)を装着し、太平洋へ放流、自然海での回遊経路の調査を開始していたのことです。
実際には、外洋には行かず、愛媛県宇和島市津島町の岩松川に入ってしまい死亡してしまいました。
ジンベイザメの生態調査のために必要だったのかもしれませんが、放流して死亡してしまったことに批判のコメントも相次いでいます。
死亡した「海くん」は2019年に高知県室戸岬で定置網にかかって、その後海遊館で飼育されていたそうです。
ジンベエザメは臆病な生きもので環境の変化に弱く飼育は難しいとされています。ここまで生きてこれたのは海遊館の努力の賜であるのは確かです。
しかし、新しくジンベエザメを迎えるにあたって放流するのは、長年、人工的に飼育されてきた「海くん」にとっては環境に慣れるのは難しかったのかもしれません。
海中でも匂いなど、感じているものはたくさんあるはずで、水族館に近い、人間に近い場所に泳ぎ辿りついてしまったようにも思えます。
広い海に帰してあげたい気持ちも十分分かりますが海くんにとっては戸惑いや不安でしかなかったのでは?
もしかしたら、海遊館に帰りたかったのかもと思うと可哀想過ぎて涙が出ます。
水族館の方々の飼育の苦労は計り知れないですが、今回の「海くん」が死亡したことは残念ですね。
ジンベエザメ 水族館の役割
プランクトンや小魚、海藻を主食とするジンベエザメは、イワシの群を追ってくることから古くから漁師の間では大漁の吉兆としてあがめられてきました。
しかし、混漁(捕獲対象の種とは意図せず違う種を獲ってしまうこと)や船のスクリューによる損傷、観光のための乱獲、環境汚染などにより絶滅危惧種となっています。
世界で初めて飼育を成功させた水族館は1934年、中之島水族館(現:三津シーパラダイス)で、4ヶ月ほど飼育されたそうです。
現在、ジンベエザメを飼育している水族館は、沖縄野美ら海水族館、沖縄の海遊館、鹿児島のいおワールド鹿児島水族館の3館です。
初めて水槽での長期飼育に成功したのは沖縄の美ら海水族館で、「黒潮の海水槽」は水量7,500t (深さ10m・幅35m・奥行き27m)と非常に大型でジンベエザメの繁殖を前提に作られています。
それほど、ジンベエザメの飼育は難しいのですね。
大阪の海遊館でも1990年から飼育を開始しています。
海遊館のジンベエザメは当初から代々オスは「海くん」メスは「遊ちゃん」という愛称で親しまれていおり、今回事故で亡くなった「海くん」は8代目だそうです。
非常に大きな水槽が必要なジンベエザメは一定の大きさへ成長すると入れ替えられ、大きくなった個体は放流、そして新たな幼少個体を搬入する形でジンベエザメを長期飼育し続けています。これは海遊館だけでなく、他の水族館でも同様です。
放流の際にはジンベエザメにに小型の記録装置のタグを付け位置情報や行動、水質や水温、水深などを追跡し生態解明の調査に役立てているそうです。
水族館は展示するだけでなく、保護と研究をすることも大事な役割なのですね。
まとめ:保護と野生に戻すことの教訓に
事故だけを觀ると、新しいジンベエザメを入れるために古いジンベエザメを放流した結果だと感じてしまいますが、定置網にかかり、弱ったジンベエザメを保護、観察するのが目的で、いずれ外洋に放流することは決まっていたようです。
ただ、5年間という長い人工飼育の期間が「海くん」にどのような影響をもたらしたかは分かりませんね。
海君の死を今後の教訓として生かされて、再び悲しい事故が起こらないことを祈ります。
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