「プレー中に吐いたこともあった」——正直な言葉から始まる浅井咲希の再出発。
薬の管理、練習の小分け、深呼吸のルーティン。
小さな積み重ねを武器に、思い出の地・大箱根でCATレディース2025へ。焦点は“曲げない”ゴルフと平常心だ。
復調:医師管理の“競技で使ってよい薬”+「30分×小分け」練習+深呼吸ルーティンで安定。目標は予選通過。
処分時系列:2025/3 不倫報道 → 5/20 JLPGAが3選手厳重注意・栗永遼氏9年出禁 → 8/21 前日取材で本人が状況説明。
見どころ:2019覇者の大箱根。フェアウェイ優先/花道活用/距離感パットで“ダボ回避”の積み上げ勝負。
はじめに
CATレディース開幕前日、浅井咲希の心境と体調管理、そして“復活の手応え”
開幕前日の大箱根カントリークラブ。プロアマを終えた浅井咲希は、ここ数カ月の体調のゆらぎと、そこから少しずつ日常を取り戻すまでを静かに語りました。
プレー中に気分が悪くなる日もあり、いまは医師の指導のもと競技で使ってよい薬を飲みながら出場しています。たとえば練習は「長時間やり切る」から「30分×小分け」へ。炎天下では日陰でのクールダウンと水分補給をルーティン化。ティーショットの前には4秒吸って6秒吐く深呼吸を2回行い、心拍を落ち着かせる――そんな“地味だけど効く”工夫を重ねています。
背中を押したのは周囲の人たちでした。スポンサーが「コースに慣れる練習日」を作ってくれたり、同世代のプロが試合前に「朝の散歩だけでも一緒に」と誘ってくれたり。家族は試合週の送り迎えや子どもの預け先の段取りまで引き受け、浅井は「まずは予選通過」という現実的な目標を口にできるところまで戻ってきました。2019年に初優勝をつかんだこの場所で、もう一度“ゴルフが楽しい”と胸を張れるか――その挑戦が始まります。
記事でわかること:騒動の経緯/今年の大会の焦点/直近データから読む注目点
本記事では、①春から夏にかけて起きた出来事を日付の流れで整理し、外からは見えにくかった影響をやさしく解説します。
②今年のCATレディースの基本情報(大会日程・コースの特徴・賞金)を、初めて観る人にもわかるように具体例で紹介します(例:ラフが深い日は「フェアウェイに運ぶだけで価値がある理由」など)。
③浅井の直近の試合データをもとに、どこが良くて、どこが課題かを専門用語を避けて読み解きます(例:飛距離より「曲げないこと」がこのコースでどれだけスコアに効くか)。
最後に、2019年優勝の記憶がメンタルの支えとしてどう働くのか、再現のカギを具体的な場面に落として探ります。

項目 | 内容 |
---|---|
氏名 | 浅井 咲希(Asai Saki) |
生年月日 | 1998年6月13日(27歳) |
出身 | 兵庫県尼崎市 |
所属 | 小杉カントリークラブ |
プロ入り | 2017年 |
身長・体重 | 151cm・54kg |
血液型 | A型 |
家族 | 2023年に第1子出産 |
趣味 | ネイル |
スポーツ歴 | バレエ |
好きな色 | ピンク、紫 |
主な戦績 | JLPGAツアー通算1勝(2019年CATレディース/大箱根CC) |
ミニ年表
- 2017年:プロテスト合格
- 2019年:CATレディースでツアー初優勝
- 2023年:結婚・第1子出産
- 2025年:CATレディース2025に主催者推薦で臨む
近況ポイント(2025)
- 今季はステップ・アップ・ツアーを中心に出場。出場7試合/予選通過1(カストロール・レディース57位)。
- 体調管理の工夫(30分×小分け練習/深呼吸ルーティン/炎天下でのクールダウン)で復調を図り、まずは予選通過を明確な目標に設定。
プレースタイルの特徴
- フェアウェイ優先で曲げないティーショット。
- 外した後は花道活用と転がし中心のアプローチ。
- 速いグリーンでの距離感重視のパッティング。
1.前日コメントのポイント
「自律神経が狂ったり」—症状の実情と“ドーピング非該当”薬での対応
浅井が口にしたのは、いわゆる“体のスイッチが合わない”感覚でした。たとえば朝の練習で心拍が上がりやすい、手の汗でグリップが滑りそうになる、集中し始めると視界が狭く感じる――そんな日が続くと、練習量だけで押し切るのは難しくなります。そこで今は、医師の指導で競技で使ってよい薬を服用しつつ、生活と練習のリズムを細かく整えています。
実際の工夫はとても具体的です。打球練習は30分ごとに休憩を挟み、クールダウンは木陰+水分+首元の保冷をセット化。
ラウンド前は4秒吸って6秒吐く深呼吸×2回→肩回し10回→ショートパット10球の順で、体と気持ちの“立ち上がり”をそろえる。
そして薬は服用時間をスコアカード裏にメモ、成分が分かる診療明細のコピーをキャディバッグに常備――どれも小さな手当てですが、積み重ねるほど「今日は動ける」という実感につながります。
スポンサーと同世代プロの支えがもたらしたメンタル回復
“無理に明るく振る舞わない”ことを周囲が認め、背中を押してくれたのも大きな追い風でした。
スポンサーは「スコアはつけずコースを歩くだけの日」を設け、まずはゴルフ場の空気に慣れる練習を提案。同世代のプロは試合週の朝に9ホールだけ一緒に歩く、練習後に30分だけ雑談するなど、気負わず続けられる関わり方で寄り添いました。
家族は送迎や子どもの預け先の段取りを引き受け、浅井は「今日はここまでできた」と小さな成功体験を積み重ねられるように。
結果として、「コースに来ると体調が崩れるかも」という不安が、「ここなら大丈夫」に少しずつ書き換わっていきました。
まずは予選通過を目標に—当日のゲームプランと狙い
目標は現実的に“予選通過”。そのためのプランもシンプルです。
- フェアウェイ優先:深いラフは無理をしない。ティーショットは“飛ばすより曲げない”。狙いはフェアウェイのど真ん中か、やや安全側。
- グリーンはセンター狙い:ピンが端でもセンターに乗せて2パット。ショートサイドは作らない。
- ボギーで止める:トラブル時はレイアップ→1パットを狙う。ダブルボギー以上を作らないことが通過への近道。
- 距離の合う番手を増やす:試合前の調整で、7I・9I・52°の“頼れる3本”を重点的に。迷いを減らす。
- ルーティン固定:ティーアップ→深呼吸→素振り1回→アドレス。同じ順番にすることで心拍とリズムを一定に。
“勝ちコース”の記憶に頼り過ぎず、欲張らない選択で18ホールを積み上げる――それが初日のテーマです。
2.なぜ注目か:処分と騒動の経緯
2025/3〜5/20の時系列整理(報道→JLPGA処分→謝罪)
春先に、夫でキャディーの不倫疑惑が週刊誌で取り上げられ、浅井の名前も“渦中の人”として広く知られるようになりました。報道後は大会会場でも心ない声が耳に入ることがあり、浅井はまず体調を整えることと生活のリズムづくりに集中。
その後、5月20日にJLPGAから処分が発表されます。女子プロ3選手は厳重注意や研修などの措置、夫の栗永遼氏は9年間の会場立ち入り禁止。当人はSNSで謝罪の文章を公表しました。
夏に入り、8月21日のCATレディース前日取材で、浅井は「プレー中に吐いたことがある」「自律神経が乱れることがある」と自分の言葉で状況を説明。薬は競技で使ってよい範囲で服用していること、周囲の支えで徐々にコースに戻れていることを明かしました。
“9年出禁”処分の要点と当事者の対応
“出禁”とは、JLPGAの試合や関連イベントの会場に入れないということ。
つまり、夫はキャディーとしてバッグを持つことも、練習日に帯同することもできません。大会では選手に入館証(バッジ)が配られますが、これは身分確認と入場管理の役割があり、処分中はこの入場自体が不可能になります。
当事者は謝罪文を出し、表に立つのは浅井自身――という構図が続いています。
浅井は規程に沿った行動(薬の管理、練習環境の整備、必要な説明)を積み重ね、周囲に“やるべきことはやっている”と伝わる歩み方を選びました。
競技機会・イメージへの影響と、信頼再構築への道筋
影響は競技の現場に最も表れます。たとえば、通常はキャディーが担う
- クラブ選びの相談(番手の決定)
- 風向きや傾斜の確認
- トラブル時の選択肢整理(刻む/狙う)
といった役割の一部を、浅井は自分で判断する場面が増えました。新しいサポート体制が必要になり、人の配置換えや連絡のとり方も見直しに。
イメージ面では、どうしても“騒動の人”というラベルが先に立ちます。だからこそ浅井は、①自分の言葉で状況を説明する、②競技に集中し、行動で示す、③小さな約束を守り続ける(挨拶・ファンサービス・メディア対応の丁寧さ)という地道な3つで信頼を積み直しています。
現実的な目標を**「まずは予選通過」に置いたのも、その一歩。無理な“優勝宣言”ではなく、積み上げ型の再スタートを選んだことで、見守る側も結果だけでなく過程を応援**しやすくなりました。

3.舞台・データ・見どころ
CAT Ladies 2025の基本情報(日程・会場・賞金・コース傾向)
大会は8/22(金)〜24(日)の3日間、会場は大箱根カントリークラブ(パー72/6,652ヤード)。賞金総額は8,000万円(優勝1,440万円)です。箱根は山あいにあるため風の向きが変わりやすく、午後はグリーンが速くなりがち。ラフは深めに整えられることが多く、フェアウェイからの一打がスコアに直結します。
初めて観る人向けに、コースでよく起きる“あるある”を挙げると――
- 打ち上げで距離感がズレる:見た目より1本“強い番手”を選ぶと安全。
- グリーンの“最後ひと転がり”:午後は乾き、下りラインは強さ控えめが基本。
- ラフからは無理をしない:グリーン奥に外すと寄せが難しいので、花道(グリーン手前の平らな場所)に置くだけでも価値があります。
浅井にとっては2019年に初優勝をつかんだ“思い出の場所”。「狙いすぎない」「フェアウェイから丁寧に」が、今年も生きるテーマになります。
直近の実戦データ:ステップ7戦/通過1(カストロール・レディース57位)
今季は主に下部ツアーで経験を積み、出場7試合で予選通過1回(カストロール・レディース57位)。数字だけ見ると苦しいですが、内容には前向きな芽があります。
- 前半は我慢、後半で崩れやすい:暑さで集中が切れやすい時間帯にミスが重なる傾向。→給水のタイミング固定と間食(ゼリーやフルーツ)を差し込むだけで終盤の乱れが減る。
- ティーショットの左右ブレがボギーに直結:深いラフから寄せワンが難しい。→ドライバーを短く握る、安全側に狙いをずらすだけでもフェアウェイ率は上がる。
- 3パットがスコアを押し下げる:速いグリーンでの距離感が合わない。→練習では5m・10m・15mの“距離だけ合わせる”ドリルに集中。
大箱根では「外さない側に外す」だけで結果が変わります。具体的には、ピンの反対側には外さない、バンカー越えは無理をしない、花道に逃がす。この3つを徹底できれば、予選通過ラインに近づけます。
2019年初Vの再現可能性—鍵はフェアウェイキープ/アプローチ精度/平常心
2019年の勝ち方を“今の自分”に置き換えると、カギは次の3つです。
- フェアウェイキープ:飛距離より曲げないを最優先。狙いはフェアウェイ中央〜安全側。ドライバーを3Wに替える勇気も武器。
- アプローチ精度:外した後が勝負。52度の転がしを主軸に、ラフからは“高く上げない・短く振る”でシンプルに。寄せが1〜2mに寄れば、2パットで十分合格点。
- 平常心(ルーティンの固定):ショット前は深呼吸→素振り1回→アドレスの順を崩さない。トラブル時は選択肢を声に出して整理(例:「刻む・狙う・出すだけ」)し、“最も悔いが残らない一手”を選ぶ。
もし初日にパーオンが少なくても悲観しないこと。ボギーで止める、ダブルボギーを作らない――この“地味な2つ”を守れれば、2日目の上積みで十分にチャンスは残ります。2019年の記憶は“過去の栄光”ではなく、迷ったときに戻れる設計図。それを今の体調管理と組み合わせれば、あのときの強さを今の形で再現できます。
まとめ
浅井咲希は、体調の波と向き合いながら「できることを積み上げる」やり方でここまで戻ってきました。
練習は30分×小分け、ラウンド前は深呼吸→素振り1回→アドレスの固定ルーティン、炎天下では日陰+給水+首元の保冷。
薬は競技で使ってよい範囲で、服用時間をメモし明細をバッグに入れておく――どれも小さく具体的な工夫です。スポンサー・同世代プロ・家族の支えで「まずは予選通過」という現実的な目標を素直に掲げられる地点に立ちました。
大会の鍵は、フェアウェイを外さないこと、グリーンはセンター狙い、そしてダブルボギーを作らないという地味な三本柱。
たとえば「ピンが左奥なら安全にセンター」「深いラフからは花道へ逃がす」「トラブルは刻んで1パットを狙う」。頼れる番手(7I・9I・52°)を軸に迷いを減らせば、大箱根の“最後ひと転がり”にも飲み込まれにくくなります。
2019年の初優勝は“過去の栄光”ではなく、迷ったときに戻れる設計図。
その記憶と、今の体調管理・メンタルの再現性が噛み合えば、結果はあとからついてくるはず。読者の観戦ポイントは、ティーショットの置き場所、花道の使い方、距離感重視のパット。この三つがハマったとき、浅井の「復活の手応え」はスコアに変わります。
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