「ゾンビたばこ」の危険性と日本での広がり|エトミデートの正体と逮捕事例・専門家警鐘

記事内に商品プロモーションを含む場合があります。
スポンサーリンク

最近ニュースやSNSで耳にすることが増えた「ゾンビたばこ」。吸った人がけいれんし、ふらつきながら歩く姿はまるでホラー映画のゾンビのよう…。

その正体は、エトミデートという本来は医療用の成分を含む危険ドラッグです。中国や香港、台湾での乱用が問題となり、ついに日本でも沖縄や三重で逮捕事例が相次ぎました。

本記事では、一般市民の立場から、エトミデートの危険性や国内での広がり、そして専門家が警鐘を鳴らす理由まで、わかりやすくお伝えします。

スポンサーリンク
目次

はじめに

危険ドラッグ「ゾンビたばこ」とは何か

「ゾンビたばこ」とは、電子たばこのリキッドに混ぜられた危険ドラッグで、吸引すると体がけいれんし、まるでホラー映画に出てくるゾンビのようにふらつき歩く異常な状態になることから、この名が付けられました。

原因となるのは「エトミデート」という成分で、もともとは医療現場で麻酔や鎮静のために使われる薬ですが、日本では未承認の医薬品です。

問題は、こうした成分が違法に入手され、遊び目的で使われていること。中枢神経が抑制され、極微量でも命に関わる危険性があります。

中国から日本へ広がる脅威の現状

このドラッグが注目されたきっかけは、中国で撮影された衝撃的な映像です。震えながら立ち上がり、制御不能な足取りで歩く人々の姿は、まさに「ゾンビ」と呼ばれるにふさわしいものでした。

この現象は香港や台湾でも問題化しており、そこから日本に流入した可能性が指摘されています。

実際、沖縄や三重では所持・使用での逮捕事例が相次ぎ、逮捕時には手の震えや叫び声など、映像と同じような異常行動が確認されています。

SNSやネット販売を通じて若者に広がる構造もあり、日本でも深刻な社会問題となりつつあります。

1.“ゾンビたばこ”に含まれる危険成分「エトミデート」

エトミデート

エトミデートの開発背景と医療用途

エトミデートは1964年にベルギーで開発された薬で、医療現場では全身麻酔を始めるときの導入薬や、短時間の鎮静が必要なときに使われます。

たとえば、内視鏡検査や手術の前に患者を眠らせるために使われるケースが多く、即効性と持続時間の短さから重宝されています。

海外の病院では、特に血圧を大きく下げない点がメリットとされ、心臓疾患を持つ患者にも比較的安全に使えるとされます。

しかし、これはあくまで厳格な医療管理下での話であり、濃度や投与方法を誤ると呼吸停止や意識障害を引き起こす危険性があります。

国内未承認から指定薬物へ至った経緯

日本ではエトミデートは未承認の医薬品であり、一般の医療現場では使用されてきませんでした。

しかし、海外から違法に持ち込まれ、医療目的ではなく娯楽目的で使用される事例が増加。

特に2024年頃から、電子たばこのリキッドに混ぜて吸引する手口が広まり、危険な状態に陥る若者が報告され始めました。

こうした状況を受け、厚生労働省は2025年5月16日、エトミデートを「指定薬物」に指定。

これにより、製造・輸入・販売・所持・使用のすべてが医療用途以外では禁止され、違反すると懲役や罰金が科されるようになりました。

吸引による人体への影響と危険性

エトミデートを吸引すると、中枢神経が強く抑制され、全身が力を失い、けいれんや言語の混乱、意識の低下が起こります。

映像で見られるような「ふらつきながら歩く」「意味不明な叫び声をあげる」などの異常行動は、この薬の影響によるものです。

特に危険なのは、極めて少量でも呼吸抑制や心停止などの命に関わる症状が出る可能性があること。

医療現場では酸素投与や心拍監視が前提ですが、違法使用ではそうした安全管理が一切ないため、救命が間に合わないケースも想定されます。

さらに、繰り返し使用すると耐性や依存が生じ、短期間で日常生活に支障をきたす恐れがあります。

2.日本での逮捕事例と拡散ルート

沖縄・三重での所持・使用事件

2025年7月9日、沖縄県浦添市で20代の男性2人がエトミデートを含むリキッドを所持していたとして逮捕されました。

警察によると、発見時には2人とも手足がけいれんし、まともに歩けない状態だったといいます。

翌10日には、那覇市で16歳の少年が同じ成分を所持していたとして逮捕され、警察官が駆けつけた際には手の震えと大声での叫びが続き、周囲が騒然となりました。

さらに8月4日には三重県四日市市で30歳の男性が使用および所持の疑いで逮捕され、「合法薬物だと思っていた」と容疑を否認。

いずれのケースも、体調は急激に悪化し、救急搬送が必要な危険な状態でした。

ネット経由で広がる若者への浸透

こうした危険ドラッグが若者に広まる背景には、インターネットとSNSの存在があります。

匿名でやり取りできる通販サイトやメッセージアプリを通じて、違法成分が含まれるリキッドが「リラックスできる」「海外では合法」といった宣伝文句で販売されています。

特に若者は価格の安さや「新しいものを試したい」という好奇心から手を出しやすく、販売者は暗号通貨やプリペイドカードでの決済を使って足跡を残さないようにしています。

これにより、摘発は困難になり、結果的に利用者の増加に拍車がかかっています。

香港・台湾から日本への流入可能性

専門家によれば、エトミデート入りの“ゾンビたばこ”は中国本土だけでなく、香港や台湾でも乱用が問題になっています。

地理的に近く、人的往来や物流の多いこれらの地域から日本への持ち込みは現実的なリスクです。

例えば、旅行者の荷物や個人輸入の荷物に紛れ込む形で入ってくるケース、またはSNS経由で現地の販売者と直接取引し、国際郵便で送られるケースも考えられます。

こうした流入ルートは税関の取り締まりをすり抜けやすく、国内での蔓延を防ぐ上で大きな課題となっています。

3.社会的影響と法規制の課題

電子タバコ機に液体または液体を挿入するアークユーザーのイラスト。(アーククラブMY-アンスプラッシュ)

専門家が警鐘を鳴らす理由

武蔵野大学薬学部の阿部和穂教授は、「エトミデートは極微量でも使用方法を誤れば命に関わる」と強く警告しています。

医療現場では厳重な管理下で投与される成分が、一般人の手に渡ることで、予測不能な健康被害や突然死を招く恐れがあるためです。

また、“ゾンビたばこ”の影響は使用者本人だけでなく、周囲の人にも及びます。

路上で異常行動を起こせば交通事故や暴行事件につながる可能性もあり、社会全体の安全を脅かす存在になり得ます。

さらに、SNSで拡散される「面白半分の動画」が模倣を誘発し、被害を拡大させる危険性も指摘されています。

刑罰の厳罰化を求める声

事件報道のコメント欄やSNSでは、日本の薬物犯罪に対する刑罰が「軽すぎる」という意見が多く見られます。

例えば、海外の一部地域では違法薬物の所持だけで長期の懲役刑が科されるのに対し、日本では初犯の場合、執行猶予付き判決になるケースも少なくありません。

これに対し「罰則を重くしなければ抑止力にならない」という声が強まっています。

また、輸入や販売に関与した者への刑罰強化や、ネット上の取引を取り締まるための法整備を求める意見も多く、国民の間で危機感が広がっています。

合法化・課税を巡る賛否

一方で、一部の人々からは「比較的安全な薬物を合法化し、国が管理・課税すべき」という意見も出ています。

これにより闇市場の規模を縮小させ、税収を社会福祉や医療に回すことができるという考えです。

しかし、この案には「安全とされる薬物でも乱用や依存のリスクは残る」「若者の使用率が上がる可能性がある」といった反対意見も根強く存在します。

特に“ゾンビたばこ”のように即効性が高く危険性の大きい成分については、合法化の対象にすべきではないというのが専門家の一致した見解です。

こうした議論は、薬物政策をめぐる社会の分断を浮き彫りにしています。

ゾンビたばことフェンタニルの違い【比較表で解説】

近年ニュースやSNSで耳にすることが増えた「ゾンビたばこ」と「フェンタニル」。
名前や映像の印象が似ているため混同されがちですが、成分も作用もまったく別物です。
どちらも極めて危険な薬物で、少量でも命に関わる可能性があります。以下の比較表で、その違いをわかりやすく整理しました。

項目ゾンビたばこフェンタニル
主な成分エトミデート(麻酔導入薬の一種)フェンタニル(合成オピオイド)
本来の医療用途手術や検査時の麻酔導入、鎮静強い痛みの緩和(がん・手術後など)
乱用時の主な影響けいれん、ふらつき歩行、意識混濁、異常行動強い呼吸抑制、意識障害、昏睡、死
作用の仕組み中枢神経を抑制し、運動制御や意識レベルを低下させるオピオイド受容体に作用し、鎮痛と同時に呼吸抑制を引き起こす
見た目・呼称の由来吸引者がゾンビのようにふらつく姿から命名米国などで路上に倒れる様子が「ゾンビ」と形容されることがある
使用形態(違法)電子たばこリキッドに混ぜて吸引粉末、錠剤、液体、貼付薬などを経口・注射・吸入
致死量の危険性極微量でも命に関わる可能性あり数ミリグラムで致死量に達するほど強力
国内での法的扱い指定薬物(医療用途以外の所持・使用は禁止)麻薬(所持・使用は禁止、重い刑罰)

なぜ混同されるのか?

アメリカなどでは、フェンタニル乱用による路上での昏睡状態や、体を支えられずにふらつく姿が「ゾンビのよう」と報じられ、「ゾンビドラッグ」という呼び名が使われることがあります。
一方、日本でニュースになる「ゾンビたばこ」は、エトミデート入りの電子たばこを指すため、成分も作用も異なります。

危険性と注意点

どちらも医療現場では限られた条件でしか使われない非常に強力な薬物です。
街中やネット上での違法流通品は、濃度や成分が不明で、さらに危険度が高まります。
「合法っぽい」「少しなら大丈夫」という油断は命取りになりかねません。

まとめ

“ゾンビたばこ”は、中国や香港、台湾での乱用が問題化し、日本にもすでに流入している危険ドラッグです。

原因となるエトミデートは、本来は医療用の麻酔薬として開発された成分ですが、国内では未承認であり、医療用途以外での所持・使用は法律で禁止されています。

にもかかわらず、ネットやSNSを通じて若者に広がり、沖縄や三重などで逮捕事例が相次ぎました。

吸引すると手足のけいれんや異常行動を引き起こし、極微量でも命を落とす危険性があるため、専門家は強い警戒を呼びかけています。

一方で、刑罰の強化やネット取引の規制、さらには薬物政策全体を見直すべきだという意見も上がり、社会全体での議論が必要とされています。

今回の問題は、単なる一過性の流行ではなく、薬物乱用の新たな入り口としての脅威であり、個人だけでなく周囲や社会全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

スポンサーリンク
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次