未成年飲酒、混浴、性接待―元舞妓・桐貴清羽が告発した“伝統”の闇

京都の花街は、伝統的な建物が並び、舞妓さんが歩く姿が絵になるような日本文化の象徴として知られています。観光客にとっては非日常を味わえる特別な場所ですが、その裏側で働く女性たちにとっては、必ずしも夢のような世界ではないという現実があります。

元舞妓の桐貴清羽さんがSNSを通じて、自身の経験を告発しました。そこには、未成年での飲酒の強要、深夜におよぶ労働、さらには性的被害までもが語られており、想像以上に過酷な環境だったことが明らかになっています。表からは見えない「影」の部分に、私たちはもっと目を向ける必要があるのではないでしょうか。

元舞妓・桐貴清羽さんの告発内容

京都の元舞妓・桐貴清羽さん（25歳）は6月5日、京都の舞妓をめぐり未成年飲酒や性行為強要、賃金未払いなどが横行しているとして、実態改善や調査の実施を呼びかけました。https://t.co/ATvjy85aWi…

— 弁護士ドットコムニュース (@bengo4topics) June 5, 2025

• 未成年飲酒の強要と混浴・性接待：16歳で「浴びるほど」の酒を飲まされ、男性客と混浴させられるなど、未成年への違法かつ人権侵害的な扱いがあったと告発しました 。
• 長時間労働・深夜営業：朝4時から深夜12時過ぎまでの連続勤務、携帯電話を所持できず、嫌なことを相談できない環境だったと述べています。
• 断れない構造・辞めづらさ：いったん入ると「年季奉公」のような構造があり、辞めようにも生活や家族の事情が理由で抜けづらく、言い出せない空気があったとのことです 。

業界側の反応と現状

• 伝統芸能の継承団体や組織側は、「今の在籍者にそういった行為はない」「20歳未満の飲酒禁止を徹底している」と主張しています 。
• 一方で過去の実態を語る元舞妓たちや支援団体は、「内部からの告発をもっと受け入れ、制度的な受け皿が必要」と訴え、改善に向けたネットワークの設立や調査要請まで動いています 。

なぜ重要なのか？
桐貴清羽さんのような声が抑え込まれてきた背景には、伝統やお客様への配慮を盾にした「黙らせの構図」があります。

今ではメディアでも「幼少期から憧れて舞妓に」といった美化報道が目立ちますが、その裏側に「未成年への飲酒強要」「性接待」「断れない空気」が常態化していた実態があることを、改めて思い起こさせたのです。

この告発を踏まえ、メディアや関係機関は、

1. 過去と現在の実態調査
2. 未成年者保護と労働環境の法令順守
3. イーシングのある相談・通報窓口（第三者機関の設置）
   などに取り組む必要があります。

また、視聴者や読者としても「伝統文化を享受する権利」と「そこで働く人の尊厳や安全」が両立できるか、常に問う姿勢が求められると思います。

『京都花街はこの世の地獄～元舞妓が語る古都の闇～』 桐貴清羽さん原案による元舞妓のエッセイ漫画

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１．花街と舞妓文化の現在地

１．花街と舞妓文化の現在地

京都の花街とは？伝統文化としての舞妓の役割

京都の花街は、「祇園」や「先斗町（ぽんとちょう）」など、歴史ある地域に点在しています。

舞妓は、その中で芸事を通じてお客様をもてなす、まさに花街の象徴的存在です。三味線や日本舞踊、お茶の作法を日々磨き、伝統芸能の担い手として厳しい修行を積んでいます。

多くの人が抱く「可憐で優雅な存在」としての舞妓像は、こうした伝統的な修練の上に成り立っていますが、その背景には、年少から家元や置屋（おきや）に身を置き、厳しい規律と礼儀作法の世界に適応していく現実があります。

表向きには「夢の舞台」に見えるこの文化の中で、実際に働く女性たちの負担や犠牲は、これまで語られることが少なかったのです。

接待文化と女性の立場—「おもてなし」の構造

花街では、企業や政治家、海外からの賓客が舞妓・芸妓のもてなしを受けることがあります。いわゆる「お座敷遊び」は、料理・酒・芸事を通じて、非日常を演出するものとして高く評価されています。

しかし、この「おもてなし」の構造は、提供する側に大きな負担をかけることも少なくありません。

とくに舞妓は、10代前半から伝統の世界に入り、「言われたことには従うべき」という空気の中で育ちます。そのため、客からの無理な要求に対しても断りづらく、上下関係が固定されたまま「接待」が進むのです。

そこには、「女性は黙って尽くすべき」という古い価値観が色濃く残っており、現代社会が求めるジェンダー平等とは大きな隔たりがあります。

テレビや雑誌などでよく見かける“舞妓さんの一日”といった特集では、三味線や踊りに励む姿や、かわいらしい着物に身を包んだ女の子たちの笑顔が映されます。

中には「小学生の頃から舞妓に憧れていた」という少女の入門ドキュメントもあります。確かに夢を持ってこの世界に入る若者がいるのも事実ですが、メディアが“お稽古と憧れ”だけをクローズアップし、酒席での接待という現実をまったく取り上げないのは、ある意味で“ミスリード”なのでは？とも感じてしまいます。

今では20歳未満の飲酒は当然禁止されていますし、花街の運営側も「コンプライアンスを徹底している」としています。ですが、「酒は飲まないが酌はする」「酔った客の話し相手をする」という場に10代の舞妓さんがいる現状に、違和感を持つのは私だけではないはずです。

「お酌して笑って、相手の話を聞く」。それが当たり前とされた空気の中で、「私はそれをしたくない」と本音を言える環境が本当にあるのか？

夢を持ってこの世界に入った少女たちが、夢を守りながら自分の尊厳も守れる社会であってほしい――そう願わずにはいられません。

一見さんお断りの世界とその排他性

花街では「一見さんお断り（初めての客は紹介なしでは入れない）」という慣習が今も残っています。これは信頼と礼儀を重視するための伝統とされていますが、同時に閉鎖的な構造でもあります。

紹介制ゆえに、外部からのチェックや新しい価値観が入りづらく、「昔からこうだった」という空気が問題を温存してしまうのです。

元舞妓の告発でも、「内部で起きている問題を誰にも言えなかった」という声が印象的でした。外からはうかがい知れない、密室的な関係性が、若い女性たちにとって重くのしかかっているのです。

２．元舞妓の告発から見えた実態

未成年飲酒・深夜労働—現場で起きていたこと

元舞妓の告発で最も衝撃的だったのは、未成年の段階での飲酒の強要と、連日の深夜労働です。舞妓は中学を卒業してすぐに置屋に入り、見習いの「仕込み」から始めますが、実際に舞妓としてお座敷に出る頃にはまだ未成年であることが多く、飲酒が法律で禁じられている年齢です。

にもかかわらず、客の前ではお酒を注いだり、一緒に乾杯したりする場面が珍しくなかったといいます。「少しだけでも飲んだ方が場が和む」「お客様に合わせなさい」といった名目で、断れない空気があったとの証言も。長時間の労働も常態化しており、夜遅くまで接待に付き合わされ、翌朝も早朝からの稽古があったという話は多くの元舞妓たちの間で共通しています。

このような状況は、未成年者の保護という観点からも明らかに問題であり、働く環境として適切であったとは言えません。

客との関係性と暗黙のルール

花街には「お客様との距離感は自分で守るもの」という見えないルールがあります。たとえば、食事中に肩に手を回されたり、過剰に近づかれたりしても、「それくらいは我慢しなさい」と周囲から言われてしまうことがあったそうです。

また、置屋やお茶屋の世界では「良いお客様をつかまえれば将来も安泰」という考えが根強く、若い舞妓が特定の客に気に入られるよう促されることも。これにより、個人の自由や尊厳が二の次にされ、結果的に“客に従うこと”が生存戦略となってしまう構図が生まれます。

誰が悪いという単純な話ではなく、こうした価値観が温存されてきた文化の構造自体が、個人を追い詰めていくのです。

性的被害の証言と「泣き寝入り」の構造

今回の告発で語られた性的被害は、社会に大きな衝撃を与えました。しかしそれと同時に、「そういうことはどの業界でもある」「口外すると二度と仕事が来なくなる」といった空気が、花街の中で被害を隠す力として働いていたことも明らかになりました。

ある元舞妓は、お座敷の後に二次会に呼ばれ、個室に連れ込まれそうになった経験をSNSで告白しました。しかし当時は恐ろしくて誰にも相談できず、結果的に黙ってその場をやり過ごすしかなかったといいます。

このように、加害行為そのものも問題ですが、もっと深刻なのは、被害を訴える仕組みも守ってくれる人もないという「泣き寝入りの構造」です。密室での接待、強い上下関係、内部での沈黙圧力。これらが重なり合い、舞妓たちは長らく声を上げることができなかったのです。

３．「接待される側」の人権意識とは

問われる側のモラルと教育の欠如

舞妓や芸妓の世界では「お客様に失礼があってはならない」という教えが徹底されています。一方で、接待を受ける側の人々に対して、人権意識や敬意を求める教育がされているかというと、残念ながらそうではありません。

元舞妓の女性が語ったように、接待を受ける側が「自分は特別な存在で、何をしても許される」と勘違いしていたような場面も多々あったといいます。酔った勢いでの過剰なスキンシップや、断っても何度も連絡をしてくる「ストーカー的行動」など、舞妓の尊厳を傷つける行為は、本人が意識していなくても深い傷となります。

たとえば、「こんなに若いのに立派だね」と言いながら肩を抱いたり、舞妓に恋人のような言葉をかける客もいたそうです。表面上は冗談でも、年齢差・立場差がある中でのこうした行為は、明らかにモラルを欠いています。

接待の場における「客としてのふるまい」にも、相手の人権を尊重するという当たり前の視点が必要です。

経済と伝統を盾にした沈黙の圧力

「伝統だから仕方ない」「お金を出している方が偉い」といった価値観が、花街という空間では今も息づいています。その結果、客がどんなに無礼な振る舞いをしても、舞妓やお茶屋側は波風を立てないように我慢を強いられる構造が続いてきました。

ある元舞妓は、「○○財閥の方だから」「あの人は政治家だから」と、相手の肩書きによって対応を変える場面を目の当たりにし、違和感を覚えたと語っています。経済力や社会的地位が高い人ほど、“神様扱い”され、逆らえない雰囲気になるのです。

伝統を守るという名目で、若い女性たちの声を封じることは、果たして正当化されるべきなのでしょうか。伝統は生き続けるためにこそ、時代に合わせて変わっていくべきものではないかと、強く感じさせられます。

アップデートされるべき「おもてなし」の在り方

「おもてなし」は日本が誇る文化です。しかし、それが一方的な我慢や自己犠牲の上に成り立っていては、本当の意味での美しさや品格は失われてしまいます。

たとえば、高級旅館や料亭では、近年「従業員が安心して働ける環境づくり」にも力を入れる動きが出てきています。スタッフへのハラスメント対策講座を導入したり、「断る権利」を明文化するなど、伝統的な場であっても働く人の権利を守る取り組みが進み始めているのです。

花街でも、舞妓たちが自分の気持ちを安心して言える場を設けること、客にも人権に関するガイドラインを提示することなどが、今後の大きな課題です。「おもてなし」は、提供する側と受ける側の相互の尊重があってこそ、心に残るものになります。

元舞妓の告発は、過去を責めるためではなく、未来の花街文化をよりよいものにするための、勇気ある第一歩だったのかもしれません。

告発が問いかける「伝統」と「人権」のバランス

「花街文化は日本の誇り」と語る人は多くいます。しかし、その伝統の名のもとに、若い女性たちが人権をないがしろにされていいのでしょうか？今回の告発は、単なる「内部の不満」ではなく、社会全体が見て見ぬふりをしてきた構造的な問題に光を当てています。

たとえば「お客様は神様」という風潮が強い接待文化では、サービスを提供する側がどこまでも我慢を強いられることが珍しくありません。花街に限らず、飲食業や接客業でも、似たような構図があるかもしれません。そうした中で、伝統を守ることと、人としての尊厳を守ることを、どう両立していくべきなのか。

まとめ

京都の花街文化は、日本の美しさと誇りを象徴する一方で、そこに根づく「見えない負担」や「声を上げられない構造」が長らく放置されてきました。元舞妓による勇気ある告発は、単に過去の出来事を暴くものではなく、「これからの文化のあり方」を社会全体に問いかけるものでした。

伝統を守るということは、単に形を変えず残すことではなく、時代に応じてよりよく進化させていくことではないでしょうか。舞妓たちが安心して働ける環境、そして接待を受ける側にも「相手を尊重する意識」が根づいたとき、花街はようやく本当の意味で美しい文化として、次の世代に受け継がれていくはずです。

私たちがこの問題に目を向けること、それが花街文化を未来へつなげる第一歩になるのではないでしょうか。