自民党総裁選をめぐり、公平性に疑問を投げかける出来事が注目を集めています。
2024年の総裁選で、高市早苗氏が党員宛てにリーフレットを事前郵送した件については「不適切」とされ、逢沢一郎・選管委員長から注意処分を受けました。
ところが今年、林芳正陣営の後藤茂之氏が「自らの選挙区外に林氏応援パンフレットを大量に郵送した」との疑惑がSNSで取り上げられています。
もし事実であれば「二重基準ではないか」との声が強まっていますが、現時点では公式な裏付けは確認されていません。
時系列でみる“郵送問題”

- 2024年9月3日
自民党は「お金をかけない総裁選」を掲げ、文書配布の抑制を含むルールを通達。 - 2024年9月上旬
高市早苗氏が党員に政策リーフレットを郵送。逢沢一郎・選管委員長が「不適切」と判断し、注意処分を発表。ただし発送はルール制定前で「違反」ではなく「注意」にとどまりました。 - 2025年9月10日
臨時総裁選に向けて党が新ルールを明文化。「大量パンフ送付禁止」など8項目の禁止事項を設定し、前年より厳格化。 - 2025年9月中旬
ジャーナリスト山口敬之氏がSNSで「林芳正陣営の後藤茂之氏が、選挙区外に林氏応援パンフを大量郵送」と暴露。
→ ただし、主要メディアや党の公式発表では裏付けが確認されていません。

問題点の分析
公平性の問題 ― 二重基準?
高市氏のケースでは「違反ではないのに注意」が下されました。一方、後藤氏の件については、もし本当に党規違反があったなら同等以上の処分が必要です。
処分基準が人物や派閥によって異なるなら、党内の公平性に疑念を抱かざるを得ません。
規則の適用範囲 ― 「抑制」と「禁止」の違い
2024年時点では「抑制」にとどまり、グレーゾーンが残されていました。高市氏への注意処分もその曖昧さが背景にあります。
しかし2025年は「大量送付禁止」と明確に定められており、もし後藤氏が郵送を行った時期がこの通達後であれば、明確にルール違反となり得ます。
証拠性と情報の信頼性
後藤氏の件はSNS発信のみで、公的な証拠や党の確認は未公開です。
郵送物の実物、発送記録、党選管の調査結果などが必要不可欠であり、現段階では「疑惑段階」にとどまります。

SNSの反応
批判の声
- 「高市さんは処分されたのに、林陣営はスルー? 二重基準すぎる」
- 「逢沢選管は林派だから見逃してるんじゃ?」
- 「結局、公平性なんて口だけか」
擁護・冷静な見方
- 「まず本当に郵送されたのか証拠を見てから判断すべき」
- 「公式調査が出るまでは断言できない」
皮肉や揶揄
- 「“お金をかけない総裁選”ってどこ行った?」
- 「また『注意』で終わりそう」
SNS上では二重基準を疑う声が強い一方で、冷静に「証拠待ち」を呼びかける意見もあり、世論は割れています。
コラム① 党規と処分ルールの仕組み
自民党の総裁選挙は、公職選挙法の対象外であるため、党内規則(党規)と選挙管理委員会の通達に基づいて運営されます。
- 党則第6章「党役員」および関連細則
総裁選に関する基本ルールは党則に明記され、選管が実務を担います。 - 禁止・制限の内容
- 大量の文書・パンフレットの送付
- 金品の授受
- 過度な広告・宣伝活動
- 派閥単位での締め付け行為
- 処分の種類
- 「注意」:軽度の不適切行為やルール不徹底の場合
- 「警告」:繰り返しの違反や悪質な行為
- 「処分」:総裁選そのものに影響を与えうる重大な違反
今回の高市氏の事例は「注意」にとどまりましたが、2025年の通達では「大量送付禁止」が明文化されており、違反があれば「警告」以上の処分もあり得ます。
コラム② 過去の総裁選での類似事例
自民党総裁選では、これまでも「党員への文書送付」や「派閥の組織的動員」をめぐって問題視されたケースが存在します。
- 2006年 安倍晋三氏の初出馬時
派閥ぐるみの推薦人集めが問題視され、党内で「総裁選のあり方」を議論するきっかけになりました。 - 2012年 総裁選(安倍・石破対決)
石破陣営による地方票取りまとめの過程で「事前運動まがい」との指摘があり、選管が注意喚起を行いました。 - 2021年 総裁選(岸田・河野・高市・野田)
ネット広告やSNSの活用をめぐって「費用対効果に差が出るのは不公平」との議論が噴出。
ここから「お金をかけない総裁選」の理念が強調されるようになりました。
つまり「公平性」「お金をかけない運動」という理念は繰り返し確認されてきたものの、実際には派閥や陣営ごとの実力差が影響してしまう構図が常にあります。
まとめ
- 高市氏は「ルール制定前の発送」ながら注意処分を受けました。
- 後藤氏の件はSNS発信による疑惑段階で、裏付けはまだ不明です。
- この非対称性が「二重基準」との批判を生んでおり、今後の党選管の対応が公平性を示す試金石となります。
今回の林芳正陣営の郵送疑惑と高市早苗氏への注意処分の比較は、単なる二重基準問題ではなく、自民党が長年抱えてきた「党内選挙の公平性」問題の延長線上にあります。
党則や通達をどう運用するのか、そして「派閥力学に左右されない透明性」をどう担保するのか――これこそが今後の総裁選の最大の課題だといえるでしょう。
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